「ってえ……」 先の戦闘で広範囲に擦りむいた腕を見ながら、マッシュが苦々しく顔を歪めていた。そのマッシュが施したチャクラの技で小さな傷が回復していたエドガーは、術者本人には効かない技の不便さを不憫に思いながら、あえて大きな背中を強く手のひらで叩いてやった。 「それくらいの擦り傷で、情けないぞ」 「……だって、痛いものは痛いよ」 唇を尖らせるマッシュが素直に痛いと発したことでエドガーは微笑む。本当に辛い時は決して弱音を吐かない男だと分かっているので、こんな風に甘えたことを言うのは傷が大したことのない証拠のようなものだった。 ならばと弟の気持ちを汲んで、触れるか触れないかの位置でそっと擦り傷を撫でながら、子供の頃のように優しくおまじないをかけてやる。 「痛いの、痛いの、飛んでいけー……」 そしてちらりと横目で弟を見れば、顔を真っ赤にしたマッシュが目を丸くして瞬きをした。 「……どうだ?」 悪戯っぽく尋ねれば、 「……飛んでった」 子供の頃と同じく素直に答える弟がいじらしくてエドガーもまたしたり顔で笑った。 |