診断メーカーより
『ぶかぶかのシャツ姿で「充電させて…」と抱きついている』エドガー


 二ヶ月ぶりの雨だった。
 サウスフィガロの視察から戻る途中で土砂降りの雨を受けた国王の一行が城に着いたとの知らせを受け、出迎えに行こうと部屋を出ようとしたマッシュがドアを開けると、目の前にずぶ濡れの兄が立っていた。
 ただいまとにっこり微笑む兄の髪からマントからぽたぽたと水滴が滴り、美しい笑顔にも次々と雫が零れ落ちて足元には水溜りができている。慌てたマッシュは急いで兄を室内に招き入れ、取り急ぎ自分の服を引っ張り出して手渡した。
 兄はマッシュの目を気にすることなくその場で身につけているものをぽいぽいと脱ぎ出し、思わずマッシュが顔を逸らして自分の部屋の隅で小さくなる。着替えたぞ、と言われて振り向けば、ぶかぶかの自分のシャツを羽織り素足を覗かせる兄の姿がそこにあり、目のやり場に困ってしまった。
 まだ水分をたっぷり含む髪を拭かなければとタオル片手に近づくと、兄は疲れた、と呟いて自分の胸に体を預けてくる。慌てて抱き留めると、充電させてくれ、と掠れた声で囁かれて、自分のにおいの服を着た兄が艶めかしく微笑む上目遣いに耐えられず、タオルを取り落とし濡れた髪に指を挿し入れ薄っすら開いた唇に口付けた。

(2017.09.17)