診断メーカーより
『すべて許してるのに怒ってるふりをする』


「なあ、もう許してくれよ」
「……」
「なあ、マーッシュ」
 後ろから首に腕を絡め、すりすりとうなじに頭を擦り寄せながら鼻にかかった声を出すエドガーを、黙殺し続けてかれこれ二十分。
 発端はエドガーが武器の改造作業に熱中し過ぎて、マッシュとの約束をすっぽかしたことにあった。それもエドガー自らが時間を指定し、そこしか体が空かないのだから絶対に遅れるなと念押しした上での約束の反故だった。たっぷり一時間待たされたマッシュが作業場に行き、そこで工具片手に作業に耽るエドガーを発見して今に至る。
 いつもの威厳は何処へやら、むすっと口角を下げて胡座に腕組みをして動かないマッシュの背中に纏わりつくエドガーは、マッシュの顔を上目遣いで覗き込んだり人差し指で弾力のあるマッシュの肩を突いたり、ご機嫌とりに必死である。あまりにマッシュが動かないのでエドガーの表情にも焦りが見え始め、マッシュの首筋に唇を寄せ、今夜は少しくらい無茶してもいいから、と囁いた。
 ──本当はとっくに許しているが、あと一息お詫びがランクアップするまで粘ろうと耐え忍ぶマッシュだった。

(2017.09.24)