コルツ山の中腹で日暮れを迎え、十年ぶりに再会した兄貴やその仲間たちと野営をすることになった。兄貴達が持参していた食料とそこらの野草も使って簡単な食事を用意したら、兄貴は驚きに目を丸くして俺の顔とできた料理を交互に見た。 「お前が作ったのか」 「まあね」 「凄いじゃないか」 「修行中は自分のことは自分でやらないといけなかったからな」 俺が作ったスープを一口味見して更に目を大きくした兄貴が、ほうっと満足そうに息をつく。 「うまい」 「そりゃ良かった」 「この十年、お前も苦労してきたんだな」 「兄貴だってそうだろ」 兄貴は軽く眉を下げて笑い、首を横に振る。 「旅を始めて思い知らされたよ。王という立場が通用しない今、必要なのはお前のように自分で何でもできる力かもしれないな。俺も料理を覚えてみるか……今度教えてくれないか?」 「ああ、任せろ」 ──それが地獄の幕開けになるなんて、この時の俺は予想もしていなかったんだ。 |