アンケートより
第2位『目隠し』


 口付けをされる、と身体が身構えた。
 肩を優しく掴まれ、近づいてくるマッシュの顔の角度に合わせて軽く首を傾ける。澄んだ湖のような瞳が開いたまま自分の目を捉えて、いつもならその真っ直ぐな視線に射抜かれる気恥ずかしさに耐え切れず先に目を閉じてしまうのだが、毎度自分から闇を迎えるのが癪でギリギリまで瞼を下ろさずにいようとしっかり開いてみせた。
 マッシュは構わずに青い眼を淡く光らせたまま顔を寄せてくる。思わず喉が鳴る。近すぎる。鼻先が触れ合う距離でも閉じられなかった瞳から伝わる強い意思に気圧され、思わず手でマッシュの目を覆った。
 微かにマッシュの唇の端が上がり、ふっと小さく笑い声のような息が漏れた。情けなくも僅かに震えた指の隙間から、あの澄んだ青が自分を見ている──全身を視線で縛り付けられたような錯覚に怯え、観念して目を閉じた。
 マッシュの目を覆った手首を捕らえられ、柔らかく唇を塞がれながら、瞼の裏に焼きつく凶器のようなマッシュの瞳に背中が粟立った。ああ、また今夜も溺れさせられる。

(2017.10.24)