十年離れて、ようやく逢えて。 見違えるように逞しくなった弟にじわりと胸を焦がすようになって。 良き兄でいるためにこの十年で培った完璧な笑顔の仮面をつけているつもりなのに、何もかも見透かすような澄み切った青い眼が辛かった。 二人に充てがわれた寝室で、すやすやと子供の頃と変わらない寝顔で寝息を立てる弟を見下ろすと、愛しさがたまらなく溢れ出る。 つい、魔が差して体をそっと傾けた。息を殺して、薄く開いた唇に触れるだけの口づけを落とそうとした時、強く手首を掴まれて背筋が凍った。 閉じていたはずの瞼が開き、暗がりの中でも淡く光る青い瞳がじっとこちらを見ていた。 言葉を失って硬直していると、弟が苦しそうに眉を寄せ、押し殺すような声で呟いた。 「ダメだよ、それは……それは、狡い」 掴まれた手首を引かれ、倒れる体を支え切れずに弟の上に被さってしまう。顔を埋めた弟の首筋から雄の匂いがしてカッと頬が熱くなった直後、軽々とひっくり返されて背中にベッドのスプリングを感じた時には唇は塞がれていた。 ──ああ、お前も。 そのまま目を閉じ、理性とモラルを手放した。 |