診断メーカーより
『もっと言いたいことがあるのに頷くことしかできない』マッシュ


 いつも自信に満ちた貴方がらしくなく口籠もりながら、頬をほんのり赤く染めてうろうろと視線を迷わせて、俺にその言葉をくれた時。俺は頷くばかりでまともな返事もできず、ただかくかくと首を振る様はさぞや滑稽だったろう。
 十年ぶりに貴方に出逢って共に旅して、傍にいる間に膨れる想いが溢れそうで、もしこの気持ちを伝えることがあるのなら一晩中でも語り倒す自信があった。なのに今、俺の口から出るのは情けない荒い息ばかりで何も音になりはしなかった。
 俺と同じ色の青い目が時折チラリとこちらを向きつつ、照れ臭そうにあっちを向いたりこっちを向いたり、いつだって正面から相手を見据えて話をする貴方のそんないじらしい姿はもう二度と見られないかもしれない。
 俺だって想いの強さは負けてないんだ。言いたい事なら腐る程あるはずなんだ。何で言葉が出てこない! せめてたった一言、さっき貴方が伝えてくれたものと同じ言葉を口にするだけでいいはずなのに、いつまでも頷いてないで何とか言え!
 気持ちを奮い立たせてもやっぱり頭は真っ白で、諦めた俺は何も言わずに貴方を抱き締めた。一瞬強張った身体からすぐに力が抜け、背中に回された腕の感触は言葉がなくても雄弁だった。

(2017.11.26)