診断メーカーより
『嘘を見破られる』エドガー


 予定より大幅に帰城が遅れ、門番との会話は辺りを憚る小声になり、寝静まった城内を歩く足音にもつい気遣う。本来ならば夕食前には帰れるはずだったのだが、砂嵐が酷く立往生してしまった。あの砂の中でチョコボを走らせる訳にはいかないので仕方がなかったが、さすがの兄もとっくに眠っているだろうと部屋に寄るのを諦めかけ、しかし念のために立ち止まったドアの前で小さな小さなノックをした。途端、中からガタンと時刻に不似合いな大きな音が響き、ドタバタした足音がドアの前で一瞬止まって数秒、ゆっくり開いた扉の向こうに涼しい顔の兄が立っていた。
「おかえり、マッシュ。遅くまで大変だったな」
「うん、砂嵐で足止め食らって……、兄貴、今まで起きて待ってたのか?」
「いや、少々仕事が立て込んでいてな。別にお前を待ってた訳じゃない」
 しれっとそんなことを言いながらくるりと踵を返して部屋の奥に向かう兄に続くと、テーブルの上に書類などなく灯りも随分控えめで、兄の格好も眠る準備万端の薄手の寝衣。こちらに背中を向けたままの照れ屋で見栄っ張りの兄を後ろから抱き締めて「淋しかった?」と囁くと、ようやく小さく頷いた兄の耳が真っ赤に染まっていた。

(2017.11.26)