フィガロ大使としての三ヶ月の任を終え、城で出迎えてくれた兄エドガーの久しぶりの微笑みに顔も綻び、周りに臣下さえ居なければこの場で滅茶苦茶に抱き締めたい衝動をぐっと堪える。 女官に風呂を勧められ、本当は今すぐにでもエドガーと二人になりたい気持ちを抑えて、確かに長旅で薄汚れた身体を清めるべく浴室に向かった。髪も砂だらけでこれではエドガーに触れられない、何しろ三ヶ月ぶりでいろいろ自制がきかなくなっている。あの美しい身体を汚す訳にはといつもより念入りに全身を洗おうと頭から湯を被った時、後ろから物音が聞こえた気がした。 ぼたぼた髪から湯を垂らしながら振り向くより早く、背中にひたりと暖かな感触が触れてビクッと肩が跳ね上がる。その正体は背中から響く小さな忍び笑いですぐに分かった。 「……、兄貴?」 返事の代わりにエドガーが背中に頬を寄せたのを感じてぞくぞくと下肢に熱がこもる。 「……我慢、できなくなっちまうよ……」 絞り出した声で牽制すると、 「だから来たんだよ」 受けて立つとばかりの声が躊躇いを消してくれた。もうベッドまで行く余裕はない。 |