体を重ねている間はあんなに熱を孕んでいた目が、朝日が昇る頃にはすっと冷めて影を背負う。 極端に感情を殺した無に近い表情で天井の一点を見つめる兄の横顔が辛くて、頬に手を添え無理にこちらを振り向かせた。 薄っすらと唇だけが笑みの形を作った。ただそれだけだった。到底笑顔と呼べるものではない微笑を浮かべ、兄は表情に似つかわしくない戯けた声で誘う。 「なあ。このまま二人で死んでしまおうか」 そうして持ち上がった口角とゾッとするような光のない目に顔を顰め、返事をすることもできずにただ兄を抱き締めた。 滑らかな肌がこんなにも冷たい。体を繋げる時だけ熱を取り戻すこの人をこんな風に堕としてしまったのは自分だ。 それでもこの手を離せなかった。一度知ってしまった温もりを忘れることはできなかった。 何度も何度も引き返そうとしたのに、気づけばこうして胸に兄を引き寄せてしまう。抱き締める度に壊れていく。 命を懸けて守ると誓ったこの人を、俺がこの手で壊してしまう。 |