一人で見張りは退屈だろうと少々の酒と共に他愛のない話に付き合っていたが、マッシュの口数が減っていると気づいて間も無く船を漕ぎ始めたのを見て苦笑した。
 アルコールで身体が温まったからだろうか、外では常に一定の緊張感を持って行動する弟にしては珍しい──背中を揺すって起こしかけて、触れ合っている肩から伝わる熱が思いの外暖かいからかもしれないと思い当たる。
 そう言えば昔は並んで良く眠っていた。一人では眠れないとベソをかいたマッシュは、隣同士で身体が触れているとその暖かさのためかすぐ寝付いた。今でも変わらないのかと大きな背中をそっと撫でると、マッシュの身体が自分のいない方にぐらりと傾きかかって慌てて抱き寄せた。
 ずしりと重量が胸にかかる。随分と大きくなったものだ。別れた時は自分よりも小さかった身体が、今はこうして両腕で抱いても足りないくらいに大きい。その癖無造作に結ばれた髪から漂う陽の光のような香りは昔のままで、起きている時の笑顔を思い出し変わらない部分も多いものだと微笑した。
 一度強めにマッシュを抱き締め髪に小さくキスをして、引き寄せた頭に腿を枕として差し出すことにした。あと一時間だけサービスしてやろう。

(2017.12.17)