明日の午後は休みが取れそうだから、久しぶりにサウスフィガロの街でも見てくるかなと呟くと、じゃあ俺も行くよとマッシュが言った。
 昼飯食ったら出かけようなと笑い、おやすみのキスをして自分の部屋に戻っていったマッシュがいなくなった寝室で一人になると、思いがけず明日二人で出かけられる喜びに胸が騒ぎ始めた。
 二人だけで外出なんていつ以来だろう。ひょっとしてデートと言っても良いのではないか。軽い変装をして街をぶらりと回るつもりだったが、折角マッシュと出かけるのにそれでは味気ないかもしれない。
 何を着て行こうかとクローゼットの扉を開けて悩み、あれもダメ、これもダメと部屋中に服を広げ、結局砂漠越えには必須のマントですっぽり隠れてしまうことを思い出して無駄に散らかしたことを後悔する。せめて普段はあまりつけない赤い石のピアスを選んでベッドに潜り、なかなか寝付けない夜を過ごした。
 翌日の午後に城を出る前、マッシュにフードを被された。綺麗だから他の人に見せたくないと、赤も似合うよと照れ臭そうに言われて、隠されたことと気づいてくれたことでフードの中で緩んでしまう頬がしばらく戻らなかった。

(2017.09.03)