「まだ起きてんのか。サンタが来ないぞ」 手洗いから戻ったマッシュがシャンメリー片手に大人に混じって夜更かしするリルムに苦言を呈すると、リルムは口を尖らせて応戦した。 「どうせサンタなんていないし」 「そうかー? ま、そう言うならリルムのとこには来ないだろうな」 しれっと告げたマッシュにリルムが頬を膨らませる。何とかリルムを寝かせるべく意地の悪い言い方をするマッシュにエドガーは苦笑し、ちらりと談話室に集う仲間たちの様子を確認した。皆素知らぬふりをしているが、心の中でマッシュを応援している空気を醸し出している。 何処かバツの悪そうな顔になったリルムは、残ったシャンメリーをぐいっと飲み干し、空のコップをテーブルに置いて立ち上がった。 「眠くなったから、部屋戻る」 「サンタ来るといいな」 「サンタのために寝るんじゃないもん」 マッシュに舌を出すリルムに周りの大人たちは微笑み、今夜サンタクロースの代行任務を請け負う予定のカイエンがリルムにさり気なく付き添った。 「良い子にして寝ていたらサンタは来てくれるでござるよ。リルム殿の元にもきっと来るでござる」 「ふうん、大人は可哀想だね、プレゼントもらえなくて」 嫌味ったらしく目を据わらせてマッシュを振り返るリルムに、すでに温くなっているだろうワインの残りを口に含んだマッシュは平然と「いいや」と答えた。 「プレゼントはもらうよ」 「サンタ来ないのに?」 「欲しいのはオモチャじゃないからな」 そう言って顔は前を向いたまま瞳だけをじろりと動かしたマッシュが、絡みつくような視線を自分に寄越したのに気づいてエドガーは身を竦ませる。普段は澄んだ青い目がやけに挑発的で、舐めるように全身を見定められたエドガーは頬に熱を感じ、狼狽えてマッシュから目を逸らした。 リルムとカイエンを見送り、大人ばかりになった談話室で大きく伸びをしつつ腰を上げたマッシュは、今度はしっかりとエドガーに顔を向けた。 「そろそろ俺たちも部屋に戻ろう、兄貴」 「え、何だよ夜はこれからだろ──痛てっ」 セッツァーに足を踏まれたロックの引き留めを笑顔で流したマッシュに促されたエドガーは、小さく喉を鳴らして頷いて、この後の二人の時間を想像し期待に震える足で立ち上がった。 |