こんな壊れた世界だからこそ、新年を迎える瞬間くらい華々しく賑やかに祝いたい。

 ファルコンの談話室はささやかに飾られ、テーブルには女性陣とマッシュが朝からキッチンで奮闘した豪華メニューが並び、男性陣はそれぞれ酒を持ち寄って、この日ばかりはガウやリルムも夜更かしのお咎めなしで大騒ぎに興じていた。
 いろいろあったねとティナが出逢いを呟けば、セリスが頷いて思い出話に花が咲く。高い酒から開けようとするロックにセッツァーが目を光らせて、酔ったストラゴスは何故かシャドウに絡み続けていた。
 カイエンの熱唱にゴゴが全く同じ声で合唱し、歌声に合わせてモグが踊りウーマロが吠えガウが跳ねる。その様子をリルムが笑いながら何枚もスケッチした。
 カウントダウンの数秒前、エドガーに手を引かれて騒ぐ仲間たちからこっそり離れたマッシュは、部屋の外で兄と向かい合い微笑みを交わす。
「もうすぐ新年だな」
「ああ、来年はもっと良い年にしてみせるさ」
 10、9、8、7……部屋の中から声を揃えてカウントダウンを始める声を聞きながら、年明け三秒前にどちらともなく腕を相手に絡めて唇を合わせた。
「Happy new year !!」
 クラッカーが小気味好く弾ける音が鳴り響き、騒々しくも暖かな新年の瞬間を仲間たちは皆笑顔で祝い合った。
「あら、エドガーとマッシュは?」
 セリスの質問に、セッツァーは放っとけと肩を竦めた。

(2018.01.01)