クレイジーな魔導師相手に旅を続ける俺たちに新年もクソもないが、それでも新しい年になってまだ数日くらいは清々しい気分でいたいものだと思っていたのに、どいつもこいつも人の神経を逆撫でするようなことばかりしやがる。 「リルム! てめえ談話室の壁に何落描きしやがった!」 「落描きぃ!? 傷男ってほんっと芸術分かんないんだね!!」 「ガウ! また爪立ててカーテン上ったな!? こっち来い、爪切ってやる!」 「が、ガウ〜〜〜ッ!!」 頭を悩ませるのは餓鬼共ばかりじゃねえ。今も目の前でデカイ図体と同じ顔をした男が二人、バツの悪そうな顔で陳謝にやって来ている。 「……ベッドが壊れました」 「ほう」 青筋を立てて睨み付けると、よりデカイ方が背中を丸めて申し訳なさそうな顔になる。ややデカイ方は大人しくはしているが態度が一番デカイ。苛立ちを隠さずにカツカツと靴の爪先を鳴らして「で?」と尋ねると、二人が揃って口を開いた。 「「新しいベッドを」」 「てめえらで買え」 間髪入れずに突き放すと男共は揃って不満げに眉を寄せる。 「元はと言えばセッツァーが安物を置くから」 「あのな、俺が用意してやったベッドはいくらてめえの弟が馬鹿でかい身体してても壊れるモンじゃねえんだよ、普通に一人で寝りゃな! てめえらみたいな規格外の男二人で寝る用には、ましてやその上で運動するようにはできてねぇ!!」 まくし立てると二人は顔を見合わせて鏡のように気まずそうな表情になり、はあ、と溜息を同じタイミングで落として肩を竦めた。 「まあ、そう言うと思ったよ」 「じゃあフィガロ寄ってくれよ、城からベッド運ぶから」 「言っとくが天蓋付きのベッドは入らんからな」 ブーイングしてくる二人に悪びれる様子がなくて心底頭にくる。またタイミング悪く通りかかるロックにも嫌な予感しかしない。 「おっお前ら何怒られてんの」 「ああ、少々ベッドを壊してしまって」 「何だよマッシュ、寝惚けてオーラキャノンでもかましたか〜?」 「うん、ちょっと新年だからって張り切っちゃ」 「全員黙って消えろ!!」 間違いなく今年もこいつらに悩まされる年になる──溜息混じりの新年がスタートした。 |