診断メーカーより「たくさん名前を呼びたいマッシュ」


 身体の触れている部分がグズグズに溶け合ってしまうのではないかと、汗に濡れた肌が擦れる度にこのまま本当にひとつになって互いが何者でもなくなってしまう気がして、逞しく盛り上がった肩に歯を立てて「これは自分とは違うものだ」と感じない痛みによって正気を保つ。
 噛まれていることなど気にも留めず、マッシュは刺激に震える身体を強く抱き込み耳元に顔を捩じ込んで、あにき、と低く囁いた。艶のある低音は肌を粟立たせるが意識を奪うほどではない。応えようと口を開きかけたエドガーの耳穴に暖かく湿った舌が差し込まれ、吐息の熱と共に「ロニ」と秘密の名前を注がれた途端に心臓が締め付けられた。
 ロニ、ロニと譫言のように繰り返されるその名前は、今や睦言として聞かされることの方が多い。人前では決して口にしないその名を何度も何度も囁かれて、辛うじて引っかかっていた理性がコロリと落ちて潰れて消える。
 その名を呼ばれることは魂を握られるに等しい。やはりこのまま溶けて混じり合ってしまいたいと、気を保つことを捨てたエドガーはより深く受け入れるために開いた脚をマッシュの腰に絡め、ロニ、と恍惚の表情で口に乗せる男と共に落ちるべく「レネ」と対の名前を呟いた。

(2018.01.11)