診断メーカーより
「マッシュとエドガーの幸せごはんは
前の日から浸しておいたしみしみフレンチトースト」


「よーし、いい感じだな」
 冷蔵室から回収したバットを大事そうに抱えて続き部屋の厨房に移り、マッシュはフライパンを手にして朝食のメインに取り掛かる。
 前日から卵液に浸しておいたバゲットはすっかりふやけ、乱暴に扱うと崩れてしまいそうだった。バターを熱したフライパンに優しくバゲットを掬い入れ、ほんのり焦げる良い匂いにマッシュは鼻歌など歌いつつ、慣れた手つきでひっくり返す。見事な焼き加減に自画自賛で目を細め、仕上げにメープルシロップとシナモンをたっぷりかけてミントの葉を飾った。
 大きな会議があるからと昨夜も遅くまで書類漬けだった兄に、せめて朝食は気分良く食べさせてあげるべく夜中から仕込んだフレンチトースト。兄の好物に添えるのはハムとサラダ、フルーツは二種類、目覚めの紅茶はブレックファスト。
 軽いノックに返事は期待せず、勝手に開けたドアを潜って部屋の奥のベッドまで進み、サイドテーブルに二人分の朝食のトレイを置く。枕を抱きかかえるように片頬を潰して眠っている兄の垂れた前髪を、マッシュは優しく掻き上げた。
「おはよう」
 声をかけると艶っぽく身動ぎした兄の瞼が薄っすら開き、碧の瞳がぼんやりマッシュを認めて柔らかく弧を描く。
「……いい匂いだ」
 食いしん坊の兄の言葉に微笑んで、まずはシェフに労いをと前菜代わりに口付けた。

(2018.02.01)