「いーち、にーい、さーん、しーい……」 飛空艇の何処にもいなかった弟の声が外から聞こえてくることに気づいたエドガーが甲板の上から地上を覗き込むと、艇を停めた野原に続く雑木林の入り口付近でマッシュが太めの木の幹に向かい、顔を覆って数を数えている。 その周りでちょろちょろと動く影二つ、ピンクのベレー帽が草陰に、ツンツンと跳ねた緑の頭髪が少し離れた木の上にするすると上っていく様を見て、エドガーはははあと顎に指を当て微笑んだ。 「はーち、きゅーう、じゅー! ……もういいかあ〜?」 振り返ったマッシュの視界に動く影は見当たらず、返事も聞こえない。風に揺れる枝先の小さな葉がサラサラと心地良い音を立てるのみで、マッシュは静まり返った景色ににやりと口角を上げた。 そして腕組みをしながらゆっくりと歩き出し、草むらの一角で立ち止まって目だけを動かす。ふと頭上に伸びる木の枝を見上げたマッシュは、動かしていた目玉をある一点で止めてぎらりと輝かせた。 「ガウ、見っけ!」 手近な太めの枝を掴み、右足を幹で支えて軽く飛び上がったマッシュは、高く伸ばした右手で葉の中に隠れていたガウの足首を握り締めた。そのまま引きずり下ろすようにマッシュが手を引くと、ぴょんぴょんと全身をバネのように動かしたガウが姿を現す。そこでマッシュはぱっと手を離し、空中でくるりと一回転したガウは四つん這いに着地してから立ち上がって地団駄を踏んだ。 「くそ! ガウ、みつかった、くやしい!」 「はっはっは、足が見えてたぜ。さーて、後はリルムか……」 両手を腰に当てて辺りにぐるりと首を回したマッシュは、ほんの僅かに揺れた膝丈の草むらを見逃さなかった。大股で近寄り、掻き分けた草の中にピンク色の帽子を発見して、覗き込んだ上から「リルム見っけ」と得意げに宣言する。 「もぉ〜、早いよお〜」 頬を膨らませてひょっこり頭を出したリルムは、帽子に葉っぱをたくさんつけたまま目を吊り上げる。マッシュは高らかに笑った。 「お前たち、隠れ方が下手だな。何度やってもすぐ見つけるさ」 「言ったなー!」 「いったなー!」 「やあ、楽しそうだな」 わいわいと騒ぐ三人の傍へ、涼やかに近づいたエドガーが笑いながら声をかけた。 「兄貴」 振り向いたマッシュが眉を持ち上げて笑い返す。 「賑やかな声が飛空艇まで届いていたよ。みんなで隠れんぼかい」 「ああ、こいつら遊べ遊べってうるさいんだ。修行中だったのにさ。……何か用かい?」 「大したことじゃあないんだが、明日の装備について少しな。まあ今日中で構わんが」 子供達よりも高い目線で大柄の男二人が話し始めたことに、ガウが不満を感じたらしい。面白くなさそうに口をへの字に曲げて、ガウはぴょんとエドガーの背中に飛びついた。 「うわっ……と」 「エドガーも、かくれんぼするぞ!」 マントを掴んでぶら下がるガウの重みにバランスを崩しつつ、足を踏ん張ったエドガーは苦笑混じりに顔だけで振り向いた。 「いや、私は……」 「いいじゃん! 色男も一緒にやろ! ガウが先に見つかったから今度はガウが鬼ね!」 「ガウ、おにー!」 「ちょ、ちょっと待ちなさい、私はまだやるとは」 エドガーの言葉を無視したリルムはすでにきょろきょろ首を動かし隠れ場所を探しているようで、エドガーの背中から飛び降りたガウも先ほどマッシュが数を数えていた木の幹へと駆けて行った。 慌ててマッシュに目を向けると、にやにやと口元を緩めたマッシュが軽いウィンクを見せて雑木林の中へと走って行く。リルムも素早く違う方向へと駆け出して、背中を向けて数を数え始めたガウと二人取り残されたエドガーは焦って辺りを見渡した。 「いーち、にー、」 見た所すぐに身を隠せそうな場所は近くにはない。ガウやリルムのような小柄な身体ならともかく、簡易装備とは言えマントまでつけている長身のこの姿で何処に隠れたら良いのか。 「さーん、よーん、」 「が、ガウ、せめて二十……いや三十まで数えてくれ!」 「さんじゅ? ……わかった」 猶予をもらったエドガーは、マッシュに倣って雑木林へと足を向けた。子供相手に真剣になり過ぎるのもどうかと思うが、かと言っていい加減な態度も良くはない。彼らは子供ではあるが意思を持った尊重すべき人間であり仲間である。 「ごーお、ろーく、はーち、じゅー!」 数字が飛び飛びのガウのカウントに眉を寄せたエドガーは思った以上に時間がないことを察し、小走りで隠れ場所を探しながら焦りを募らせた。 隠れんぼだなんて何十年ぶりだろう。城で鬼役のマッシュに見つからないよう、入っては行けない部屋に潜り込んでばあやに叱られたのは遠い昔。 「じゅーいち、……じゅーご……? ……にじゅー!」 三十まで延ばしてもらった意味があまりなくなってきた。もうここらの木の陰に身を潜めることにするか──明らかに自分の胴回りよりも細い木を見上げてエドガーが顔を顰めた時、 「兄貴」 背後から囁き声が聞こえてきた。 振り返ったエドガーの目に、腰の高さほどの草薮からひょっこり顔を出したマッシュが手招きをしている姿が映る。 「にじゅうごー、えーと……さんじゅー!!」 遠くから響いてきたカウント終了の声を受け、エドガーは迷う暇もなくマッシュのいる草薮目掛けて走り出した。 「ガウ、かぞえた! もーいーかーい!」 幹から顔を離したガウが両手を広げて高らかに叫ぶ。 静まり返った周囲から返事が聞こえてこないことを確認したガウは、目を輝かせて飛び跳ねながら三人の探索を開始した。 「……もう少し、こっちに」 背中からすっぽり抱え込まれた身体を更に引き寄せられ、かなりの密着状態で弟と共に草薮に隠れているエドガーは、葉の先が目を傷つけないように小さく払いながらやれやれと息を吐く。 広範囲に続く茂みのこの場所にぽっかり空いた空洞は何かの巣だったのかもしれない。大きな身体を丸めて潜り込んでいたマッシュの後に、エドガーもまた無理やりとは言え入り込むことができたのだから小動物ではないのだろう。 しかし、当たり前だが成人男性が二人、それも人並みより大きめの身体のマッシュとエドガーが収まるには充分な広さではない。そのためエドガーはマッシュに後ろから抱き締められるような格好で、青臭い葉に囲まれながら息を殺さねばならなかった。 朝晩はそれなりに風が冷えてきた時期とは言え、晴れた日の真昼間に狭いところで男二人が密着していると流石に空気が暑苦しい。何故こんな思いをしてまで隠れんぼに参加しなければならないのかと、エドガーはしっかり拒否できなかった自分を呪った。 「とんだ災難だ」 ボソリと呟いたエドガーの耳に、微かに笑うマッシュの息がかかる。 「お前が何も言わないから」 ムッとして文句を言うと、またマッシュが笑った。声を忍ばせるせいで耳や首に触れる息が擽ったくて、エドガーは小さく肩を寄せる。 それにしても暑い。背中はぴったりとマッシュの胸に重なり、マント越しに薄着のマッシュの熱が伝わってくる。藪の中に入り込んでそれほど時間は経っていないのに全身が汗ばんできて、エドガーは胸元に指を入れて肌へ空気を通した。 ふと、腰のやや下、つまり臀部にそれまではなかったはずの硬いものが当たり始めた。位置的に地面にあるものではないと判断し、それが何か察したエドガーは、呆れたように目を据わらせて軽く後ろに顎先を向ける。 「……おい、当たってるぞ」 完全に振り向いてはいないためマッシュの表情は見えないが、苦笑いを零したと思しき空気の震えは伝わってきた。 「ごめん」 「真昼間から何を考えてる」 「ここんとこご無沙汰だったしさ……抱き締めてたら、つい」 ごめんと言いつつ悪びれないマッシュの態度に顔を顰めたエドガーは、しかしご無沙汰と言われて確かにそうだと目玉をぐるりと上向きに動かしながら考えた。 ここ最近は移動が多く、まともな宿を見つけることもできずに飛空艇の狭い部屋で寝泊まりすることが多かった。簡易的な部屋の壁はどの方向も薄いもので、静まり返った夜に抱き合えば様々な物音が仲間たちを叩き起こすだろう。そのため飛空艇の部屋では軽いキスに留めて夜の楽しみは互いに我慢していたのだ。 二人だけで買い出しに出かけたついでにモーテルに数時間転がり込んだのはいつだったか。すぐには思い出せないほど時間が経っていることに気づいてしまうと、確かにマッシュの言い分も分からなくはない──エドガーは僅かに腰をもぞもぞと動かし、尻の中央に当たっているものの存在感を少しでも消そうと移動を試みた。 しかし狭い空間でぴったりと上半身がくっついているせいで下肢もほとんど身動きが取れない。それどころか、些細な動作と言えどもこんな風に腰を動かしては── 「……ッ」 耳のすぐ傍でマッシュが小さな呻き声を上げた。声と共にエドガーを抱き竦める腕に力がこもり、息を短く吐いたマッシュはクレームを囁く。 「兄貴、刺激しないでくれよっ……」 「そんなつもりでは……」 「もう、動くなよ、収まらなくなる」 理不尽に怒られて唇を尖らせるエドガーだったが、尻に触れているものの質量が先程よりも大きくなったことを実感すると言葉が詰まる。 双丘の間に押し付けられているせいでこちらも変な気分になってくるではないか──その奥の秘所を無意識にキュッと締めてしまい、自分の身体が物欲しげに疼き始めたことに嫌でも気付かされて頬が熱くなる。 こんな陽の高い時間から、その上子供達の遊びに付き合っている最中に何を考えているのかと自省したり、いやそもそも遊びに付き合わされたのが原因ではないかと憤慨したりで忙しく表情を変えていたエドガーに対し、マッシュは抱き締めている腕の力を更に強めてエドガーの肩に顔を埋め、はーっと重苦しく深い息を吐き出した。 その切なげな吐息にぎゅうっと胸を掴まれたエドガーもまた、思わず官能的に漏らしてしまいそうになった溜息を口の中で噛み殺す。ほんの少し振り返ればすぐ横にマッシュの顔があるのだが、お互い顔を向ければスイッチが入ってしまうかもしれない。 草薮の中で妙な気を起こすなと自分を叱咤するも、マッシュの腕の中で存在感のあるものを尻に当てられ、おまけに随分とご無沙汰な状態でその気になるなと言われても── 「みんな、どこだー……?」 離れた場所から聞こえて来たガウの声にエドガーがビクリと身を竦ませる。身体に触れている葉がカサッと音を立てたことに焦るが、ガウの声の大きさからしてまだ近くには来ていない。見つかってはいないだろう。 リルムの声も聞こえて来ないのでうまく隠れていると推測するが、ガウは人より鼻が利く。リルムも、……自分たちもすぐ見つかってしまうかもしれない。 だから早く冷静になるべく努めなければいけないのに、マッシュの右手が鎧の隙間から潜り込んで布越しに胸に触れてくる。そしてエドガーはその手を拒むことができなかった。 「こっち、ちがう……? あっちかな?」 ガウの声は未だ遠くに留まっている。足音も聞こえてくる位置にはいない。今の所近づいてくる気配はなく、マッシュの手の動きも止まらない。 薄地の布の上からマッシュの指が探り当てた突起は一瞬で硬く尖り、エドガーは声を殺すために下唇を噛む。 自然と上がった顎のせいで届きやすくなったのか、マッシュが耳朶を唇で食んだ。ぶるりと駆け抜けた全身の震慄が伝わったのだろう、調子付いて耳穴に舌を這わせてきたマッシュの行動に、エドガーも流石に荒くなる呼吸を隠せなかった。 尻に当たりっぱなしのものは収まるどころか存在を主張し続けている。萎える気配のないそれを添えられた臀部が焦れったく奥の蕾を窄ませる。いけない、と思う度に腹の下で正直な本能が煽られて爆発しそうになっていた。 右手は胸に触れたまま、マッシュの左手がエドガーの腰に伸びて来た。マントを避けて腰布を捲りあげ、下衣の中に忍び込む指先が直に肌を擽る。その指が思ったより冷えていて、腰から双丘に鳥肌が立つと同時に緊張で指を冷たく湿らせたマッシュをいじらしくも思ってしまう。エドガーの口からやめろの一言が出ることはなかった。 尻の割れ目の始点から少しずつ下へと下ろしつつ、マッシュの指が下衣をもずり下ろして行く。耳にかかるマッシュの息は荒々しく、だんだん指の動きからも迷いが消えて来た。 エドガーはと言えば、草薮の外で子供達がどうしているのか気にはなりつつも、衣服を下ろすのを手助けするようにはしたなく腰を浮かせずにはいられなかった。一度離れたマッシュの指が恐らくは唾液で濡れて戻って来た時、その場所に触れて欲しくて後孔がキュウキュウと収縮するのが自分でもよく分かってしまい、大きく天を仰いで背後のマッシュの肩に後頭部を乗せ、羞恥を堪えるために目を閉じた。 入り口を指の腹でぐるりとなぞって唾液を馴染ませ、そしてゆっくりと中央に押し進めていくマッシュの動きに合わせてエドガーは深く細く息を吐く。久し振りの肉を割られる感触にその呼吸も乱れ、眉間に浮かぶ渓谷は険しくなり、鈍い痛みと共に痺れるような快感が奥へ奥へと心と身体を誘い込んでいく。 無骨な指は見た目に反していつも丁寧過ぎるほどに細やかに秘所を拡げ、今もまた優しくも確実に広く深く指を掻き回して前進していた。関節を折り曲げた指の腹が弱い一点を擦った瞬間、エドガーの下肢がビクリと震えて口から小さな声が漏れる。咄嗟に口を押さえたエドガーは、耳を澄まして辺りの音を伺った。──まだ近くにガウたちの気配はない。 自然と反っていた背を引き戻されるように強く抱き竦められ、マッシュの指はグイグイと敏感な場所を刺激し続ける。口を覆った手の隙間から鼻にかかった声と熱い呼気がはみ出して、堪え切れなくなったエドガーは左手を背後に伸ばして手探りでマッシュの股の間を弄った。 意図が伝わるように布越しに硬く盛り上がった箇所を擦ると、マッシュは奥に潜らせていた指をぬるりと抜いてどうやら前を寛げているようだった。腰紐を解き、ずらした服からすでに勃ち上がったものが現れる様を想像して、エドガーが期待に喉を鳴らす。 後ろ手に辿々しくそれを掴むと、すでに先端はぬるついた液が滲んでいた。粘り気のある液体を指に絡めながら首の部分を緩く扱いてやれば、耳のすぐ傍でマッシュが小さく何度も息を吐く。 急かすように上下に動かす所作はやや乱雑だったかもしれない、もどかしさがそのまま手から伝わったのか、やんわりと甲に重ねられた手がエドガーの動きを止めさせた時、その大きな手のひらはすでに熱いくらいに温まっていた。 片側の尻臀を外へ広げられ、奥の秘部に聳り立つものの先端が当てられたことが感触で伝わった。ここまでまともに言葉も交わさずに、最初こそ躊躇っていたのが今はもう早く受け入れたくて腰が微かに揺れてしまい、エドガーはその時を待ち侘びて期待を込めて目を閉じた。 ぐぐ、と中に頭を潜らせてくるものをより深く受け入れようとゆっくり息を吐く。エドガーが腰を反らして奥に迎え入れる準備を整えた時、やや離れた場所と思しき位置から不意に声が飛んで来た。 「リルム、みっけ!!」 「あーん! うまく隠れたと思ったのにー!」 高らかな子供達の声に意識が現実へと引き戻される。怖気付いたように軽く跳ねたエドガーの肩を、しかしマッシュは押さえつけるように片手で囲い込んで抱き締めた。 「色男とキンニク男は?」 「まだー! どっちかな……、におい……、こっち……?」 二人の会話が聞き取れる程には近くにいる。そしてガウの言葉の後に聞こえてくるサクサクと小枝や枯葉を踏む足音が、こちらに向かって来ていることを示唆するように大きくなっている。 未だ後孔は猛ったものの先端を咥え込んでいて、それは更に先へ進もうとしていた。空気が籠る草薮の中で身を寄せて、荒い息を零し続けるような行為をしているのだから、二人ともすっかり全身汗ばんでいる。普段よりも体臭が濃いとあればガウに見つかる可能性は高い。 しかしそれでもエドガーはマッシュの動きを制止できなかった。もうよせ、とたった一言囁くことができないのは、身体がこれ以上を欲しているからだ。マッシュもエドガーを放す気配がない。このまま見つかってしまえばとんでもないところを目撃されてしまうと言うのに。 「ねー、二人どこー?」 「こっち、こっち! におい、こっち!」 さっきよりも声が近い──心臓が縮んだ瞬間、半分近く身体に埋め込まれていたものがぐいっと肉を裂くように奥を突いた。 漏れかけた声を咄嗟に手で押さえつける。マッシュが腰を揺らすと二人を囲む藪がカサカサと葉擦れの音を立てた。 見つかる、という危機感は確かにあるのに、繋がっている箇所の熱がそんなもの大したことではないと嘯いて、冷静な思考をどろどろに溶かしていく。こんなにも身体が渇いていたとは、予想よりずっとマッシュを求めていたことに気付かされたエドガーは欲望に諍えず、指の隙間から漏れる声を必死で噛み殺そうとした。 「このへん、いる!」 ガウの声はもうすぐ傍まで来ている。動揺で思わず口を押さえつけていた自らの手を振り解くように、背後のマッシュを振り返ったエドガーの目に悩ましげに寄せられた眉と血走った青い目が映った。 その目を見た途端、無意識に伸びたエドガーの腕がマッシュの頭を捉え、乱暴に引き寄せて歯が当たるほど荒っぽく唇が重なった。 「……ガウ……、リルム……──」 遠くから呼びかける柔らかな高い声が響いてくる。聞き慣れた優しい声は口付けたままの二人にも届いた。 「あっ、ティナだ」 「ティナー」 リルムとガウの足音が一度止まり、エドガーとマッシュが潜む草薮から遠ざかっていく。少し離れた位置で声の主のティナと合流できたのか、三人の会話が風に混じって流れてきた。 「二人で遊んでいたの? パンケーキ焼いたの、おやつにしない?」 「パンケーキ!?」 「おやつ! ガウ、ぱんけーきたべるぞ!」 「ふふ、たくさん焼いたわよ」 わっと嬉しそうに歓声を上げた二人は、隠れんぼの捜索などすっかり頭から抜けてしまったのか、わいわい騒ぎながら恐らくは飛空艇に向かって雑木林から離れて行った。 静けさが戻った緑の中、一度唇を離したエドガーとマッシュは、荒い息を吐きながら至近距離でややしばらく無言のまま見つめ合って──再び唇を合わせ、声と吐息を互いに飲み込み合いながら強く深く身体を繋げて束の間の情事に耽った。 素知らぬふりで飛空艇に戻り食堂に顔を出した二人を見て、パンケーキを食べていたリルムが「あんたたち、頭に葉っぱついてるよ」と不思議そうに教えてくれた。 |