帰還




 この瞬間が一番怖くて待ち遠しい。

 大きな怪我をしていないか、もしや意識を失って担ぎ込まれやしないか。
 無事務めは果たせたのか、目的のものは見つかったか、その結果で青い瞳は晴れやかだろうか沈んでいるだろうか。
 自慢の拳を存分に振るって満足いくまで闘い抜けただろうか、目指すものに繋がる力を手に入れて、また明日への糧とするべく期待に胸躍らせているだろうか。

 だから帰りを待ち侘びて、ファルコン号の甲板から今か今かと身を乗り出して待っている時、遠くの景色にぽつぽつと見える人影に心から安堵し嘆息する。
 仲間の中で一際大きな体が夕暮れを背負い、血と泥に汚れて黒ずんだ姿で拳を天に掲げて勝利を示す笑顔を見るだけで、胸に温かいものが広がって身体中を埋め尽くす。
 今すぐにでも甲板から飛び降りて駆け寄り、人目も弁えず抱き締めてしまいたくなるけれど、仲間たちの見ているこの場ではじっと我慢する。キスの雨も二人になるまでお預けだ。

 だから早くここまで上がっておいで。
 二人になるにはまだ時間がかかりすぎる。一分でも一秒でも早くその時を迎えるには、待っているこの時間がもどかしくて仕方ない。
 ああもう少し、あと少しが長くてたまらない。
 我慢しきれなくなって仲間からクレームが来たらお前のせいにするぞ。

 こつりと鳴る靴音に振り向き破顔した。

 おかえり、愛する俺の半身。