刺撃




 お互いまあ分かりやすい態度は取ってきたし、時々ふざけたように密着したり髪を弄りあったり首筋にキスをしたりして来たから、少しタガが外れればアウトだろうなというのは分かっていた。
 案の定軽く酒の入った状態でつい目が合った時に唇を合わせてしまったものだから止まらなくなり、とうとうそのまま致してしまった。
 発情期の獣みたいにがっついてくるマッシュを海のように広い心で受け止めてやろうとしたが、ちょっと洒落にならないサイズのものをぶち込まれて丸二日まともに歩けなくなった。
 双子であるはずなのにどこからこんなに差がついたのか問い詰めたいが、もう正直あれを咥えるのは厳しい。上の口でも限界だったのに下の口は自殺行為過ぎた。
 そんな訳であれ以来やんわりとお誘いがあってものらりくらりと躱してきたのだが、日に日にしょげていくガタイの良い背中を見ていると可哀想に思ってしまう甘い自分も確かにいた。それでもなかなか踏ん切れずにいると、セッツァーから今日の戦闘でマッシュがオーラキャノンを撃てなくなっていたと聞かされていよいよ腹を括るかと天を仰ぐ。帰艇したマッシュの精気の乏しい表情を見るとやはり原因はアレだろうと、一度は肌を許してしまった自分にも責任はあるのだから覚悟を決めて丸まった背中を叩いて呼びかけた。

 部屋に入るなり飛びついてくるマッシュを待て待てと宥め、ちゃんと手順を踏もうと口付けをすると大きな体が大人しくなった。とろんとした目は愛しいし素直にいうことを聞く従順さも微笑ましいし逞しい腕の意外な程の優しさもいじらしいのだけれど、その下半身についているもののサイズだけが可愛くない。
 ひとまず悶々と溜め込んだだろう粘度の濃いものを放出してやらねばとベッドに座らせたマッシュの下半身を寛げてやると、そこはすでに臨戦態勢になっていてちょっと後退りたくなる気持ちを奮い立たせる。
 軽く咥えてみるがやっぱり口の中にも入り切らないし食んだことで余計に膨張して、最初から気合を入れねばこの戦いには勝てないと思い知る。
 角度を変えたり顔ごと動かしたりして何とか刺激を与えるものの、根元まではとても飲み込めない。仕方なく一度口を離して横から咥えてやるとそれが良かったらしくもじもじと腰を揺すり始めた。
 軽くシーツを握り締める大きな拳が可愛く目に映るが、こっちは息も絶え絶えで相当必死だ。顎が疲れて息継ぎのタイミングが難しい。休憩するつもりで思わず根元に掴まったが、そうか手も使えば良いのかと気づいて一気にラストスパートをかける。
 頭の上からもうダメ、挿れたいと泣きそうな声が降ってくるがこんな状態のものをぶち込まれてはたまらない。訴えを無視して最後の力を振り絞り口と手を動かし続けた数秒後、喉の奥に熱いものが飛び込んできて咽せる。
 受け止めきれなかった分が口の端から零れて荒い呼吸の合間に指で掬うと、どこか夢を見ているようなマッシュのぼんやりした目がじっと自分を見ているのに気づき、仕方なく舌で舐め取った。
 それが良くなかったようで、再び興奮のスイッチが入ったマッシュのものがぐんと勃ち上がってつい顔を強張らせてしまう。
 もう一度口で、と上目遣いに誘ってみたがこっちがいい、と太腿を握られる。もう二週間と二日もしてないと涙目で懇願されて大きく溜息をついた。変なところが細かいマッシュの頭を抱き寄せ、分かった、と囁くと我慢できないといった様子で深い深い口づけに息を奪われる。
 そのまま体を倒されてもどかしげに服を脱がそうとするマッシュを手伝ってやりながら、裸で抱き合うとその暖かさは素直に気持ちが良い。このまま抱き合ってるだけでも充分なのにと金色の髪に鼻を擦り寄せるが、充分ではなかったらしいマッシュが余裕なく下肢に手を伸ばしてくる。
 この時のために用意せざるを得なかった目合い用のローションを枕の傍に指し示すと、不思議そうな顔をして手に取ったマッシュは中身を指に垂らしてまじまじと薄桃色の液体を眺めた。
 その指を足の付け根に押し込まれ、久しぶりに感じる異物感に眉が歪むが声を殺して耐える。こんなものじゃない、この後更なる凶器がやってくるのだからこれしきのことと歯を食い縛る。指の数が一本から二本に、そして三本になった辺りで自分の声が上ずっているのに気づいたが、散々中を掻き回した指がするりと抜かれるといよいよ次を察してしまって体に力が入るのが分かった。
 いいかなと恐々尋ねる躊躇いがちな声は自分を心配している証拠で、その垂れた眉を見ると胸が甘く疼いてしまってつい自分から脚を開いて受け入れる体勢を取ってしまう。言葉の代わりに頷いてみせればマッシュが待ち侘びたようにその存在感のあり過ぎるものを一番奥に当てがった。
 滑り良く準備されていたお陰で先端は呆気なく潜り込むが、頭が完全に通過するのがとにかく難関だった。はーはーと低く深く息を吐くことに集中し、まるで出産を思わせる息遣いだが出すのではなく突っ込まれている自分を客観的に見ないよう頭を無にして苦難の時が過ぎるのを待つ。
 ふいにずるりと奥まで潜り込んできた衝撃に息が止まり、一番太い部分が通過したことを知ると共に体を撃ち抜く巨大なものの刺激に情けなく悲鳴じみた声を上げてしまう。
 一瞬マッシュが動きを止めて不安そうな目で見下ろしてきた。体は辛いがそんな顔を見てしまうと無性にいじらしくなり、大丈夫だと無理して微笑んでみせた。本当は大丈夫じゃなかった。下からくる圧迫感で口から内臓が出るかと思った。
 それでもこの心の優しい弟が心底自分を大事にしたいと思ってくれていることはよく理解しているし、自分だって誰よりマッシュを愛しく思っている。兄としての懐の深さを見せようじゃないかと腕を伸ばしてマッシュを抱き寄せると、あにき、と切羽詰まった声で名前を呟いたマッシュが強く体を貫いてきた。
 頭の先まで痺れるような衝撃だった。音にならない声が漏れ、背中から顎まで仰け反って力を抜くどころではない。杭を打ち込まれるというのはこういう気分かと、啜り泣きのようなみっともない声の合間に求める呼吸が足りなくてクラクラする頭で考える。
 あにき、あにきと耳元で聴こえるうわ言のような声だけが自分を現実に繋いでくれていた。ともすれば意識を手放してしまいそうになる中、揺さぶられる体の奥に痛みや苦痛以外の仄かな熱を感じ始め、辛さに耐えかねて迷わずその熱に縋るようにマッシュの背中にしがみつく。
 するとマッシュが自分の体を掬い上げるように抱き起こし、太腿に跨る形で下から突き上げられた瞬間自分でも聞いたことのない声を上げてマッシュの肩に額を擦り付けた。
 体の重みも伴ってそれまで届いたことのないところまで打ち付けられたその熱いものが、頭の芯をびりびりと痺れさせて理性も何もあったものではない。狂ったように掠れた嬌声を上げてマッシュの背中を掻き毟り、いよいよ目の前が暗くなった瞬間自分の中に満たされる迸りを感じて腕から力が抜けてしまった。
 崩れそうになる体を抱き寄せられて頭を垂れると、白いもので汚れた腹を見て知らないうちに自分も達していたことに気づき思わず頬が赤くなった。あにき、とまた心配そうに囁かれてうまく返事ができずに肩に頬を擦り寄せると、太い腕がさも愛おしそうに体を包んでくれる。
 呼吸が落ち着くまでそのまま体を預けながら、恐ろしいほどの刺激が癖になりそうな自分を少し不安に思う夜になった。