太陽




 お前はおひさまみたいだな、と貴方は笑って言うのだけれど、兄貴の方がおひさまみたいだと答えると貴方はまた笑って首を横に振る。
 この人は自分の魅力を分かってない。気の置けない仲間に見せる揶揄うような冗談ぽい笑顔、道無き道を進む時に頼もしげに見せる鼓舞の笑顔、目下の者に対する慈しみに溢れた優しい笑顔、たまにちょっとしたミスをして取り繕う時の照れ臭そうな笑顔。

 その全ての愛すべき笑顔の他に、俺にだけ見せてくれるとっておきの笑顔がある。

 例えば二人で酒を飲みながら他愛のない話をして、ふと目が合ったその瞬間。
 例えば旅の途中の休憩地点で、ぶらぶらと気分転換の散歩を楽しんでいる時にふいにこちらを振り向いた瞬間。
 例えば闘いに疲れた夜、俺の肩に預けていた頭を擡げて見上げてくる目を愛おしげに細めた瞬間。

 青い瞳に満たされた泉のような表面が静かに波打ち、ほんの少し下がった目尻が長い睫毛を際立たせて、僅かに桜色になった頬に弧を描く薄紅の形の良い唇、そして揺れる金の髪の房。
 貴方を形作る全てのものが眩しくて、その微笑みで胸は踊り息が詰まってまともに見つめていられない。
 空に昇る太陽なんかよりもずっとずっと強い光で、俺の心に君臨する貴方。
 その笑顔を守りたいから、俺はいつだって全力以上の力を出して貴方の盾となり矛にもなる。

 前を進む貴方が振り向いた時、その表情が苦しみで曇ることがないように。
 道を塞ぐ悪意に対峙した時、その手を引いて暗闇に打ち勝つ力になれるように。
 愛する俺の太陽王。
 俺は貴方を守り続ける。