突然アキヒカです。突然始まり突然終わります。

今回は共同生活を始めてみたけれどいまいち意思疎通の下手な二人のお話です。






 最初は苛立ちを飛び越えて疑問しか湧かなかったのだ。何故分からないのだろうと。
 こちらが「今は不機嫌である」というオーラを全身から発しているというのに、あの気遣いのなさ。配慮に欠けた発言に余計な行動。
 ついに我慢し切れなくなって怒鳴りつけるまで、彼は自分の過ちに気づかない。酷い時は言っても分からない。負けじと怒鳴り返して来る太々しさだ――突然怒り出す意味が分からない、と。分からないほうがどうかしている。
 おまけに意思表示も下手だ。やけに静かだと思って腹でも壊したかと尋ねれば怒り出す。顔色が良くないから病院を勧めてもそうじゃないんだと背を向ける。
 こちらの気遣いはまるで無視だ。腹立たしい。こんな状態では共同生活も長くは続かないのでは、なんて思っていた。
 でも、最近はあまり腹を立てていないことにふと気がついた。ちぐはぐな暮らしが何とか半年近くなった頃だろうか?
 注意して見てみると、どうやら彼の態度が変化したらしい。こちらの雰囲気に合わせて、苛々している時は割と物静かに、神経を逆撫でしそうな耳障りな物音を立てないよう気を配り、そして落ち込んでいる時、何も言わずに近くにいるようになった。
 無言の優しさが何となく心地よくて、つい警戒網を解いて声をかけると穏やかな笑顔を向けてくれる。
 察知能力が増したと言うべきか。以前はさっぱり気づく様子がなかったこちらの気分の上下を察し、ベストの判断をしてくれる彼の存在が、今では随分と心の支えになっているようだった。

 そういえば、最近彼の機嫌の悪いシグナルが良く分かるようになった……






(2009.04.14)


閉じますよ