隣で穏やかな寝息をたてるカミューの寝顔を眺めながら、マイクロトフは柔らかな亜麻色を弄んだ。 情事の最中とは全く異なる顔を見せるカミューに、マイクロトフの胸の鼓動が少し速まる。 そして思い知る。自分のカミューへの想いの深さを。 決して短くない付き合いなのに、カミューは毎日違う顔をマイクロトフに見せる。 そして、マイクロトフは毎日恋に落ちる。 今は自分に向けられているカミューの愛情は、いつしか失われるだろう。 きっと彼は気付いてしまう。 自分が騙されていることを。彼が信じているマイクロトフに騙されているという事実に。 哀しいけれどそれが真実。 マイクロトフのカミューへの気持ちに嘘偽りはないけれど、カミューの自分への気持ちは偽物だから。 彼が愛しているのは純粋で優しいマイクロトフ。 真実のマイクロトフはそんな綺麗な人間ではないから。 カミューが自分にだけ向けてくるあの優しい微笑みは好きだけど、心が少し痛む。 カミューのその笑顔は欺いた結果得たものだから。 (・・・本当の俺を知ったらカミューは離れていってしまう・・・・) マイクロトフは別離の夢をよく見る。 優しげに微笑んでいた顔が一瞬にして無表情になり、そして軽蔑の眼差しをマイクロトフに向けてくる。 「お前は私の愛したマイクロトフではないよ」 そう言ってカミューはマイクロトフを置いて、眩い光の向こうへと消えて行く。 振り向くこともなく。 マイクロトフは消えて行くカミューの背中を見ながら、必死で叫ぶ。 置いていかないでくれ、と。 カミューはマイクロトフの叫びが聞こえないかのように、歩き続ける。速度を緩めることもなく。 それはきっとマイクロトフの中の罪悪感が見させる夢。 心が引き裂かれるような痛みが湧いてきて、マイクロトフは瞼をきつく閉じた。 そして自分に言い聞かせる。 ---まだここにいる ---俺はまだカミューを騙せている・・・・ 使い過ぎて擦り切れてしまった言葉たちはもうマイクロトフの心を宥めてはくれなかった。 知らず知らず零れていた涙がマイクロトフの頬を伝って、カミューの肌を濡らす。 安らかな睡眠に落ちていたカミューが僅かに身動ぎする。 「・・・マイクロトフ・・?・・」 寝起きのせいで掠れた声で呼ばれる。 マイクロトフは閉じていた瞼を開け、顔を少し上げてカミューを見た。 カミューはマイクロトフの眸から零れ落ちている涙を見て、緩慢な仕種で未だ流れる雫を拭ってくれる。 「・・・どうして泣いているの?」 カミューの問いにマイクロトフは頭を横に振る。 言える筈がない。 マイクロトフは答えない代わりに、カミューの背に腕を回してきつく抱き締めた。 マイクロトフの珍しい行動を不審に思った筈なのに、カミューは何も言わず強く抱き締め返してくれる。 この腕のぬくもりを失う日は近い。 何処よりも安心することの出来るカミューの腕の中で、マイクロトフは心の中で新たな誓いを立てる。 カミューが気付くその瞬間まで、自分は彼を欺き通してみせると・・・・ *** +++蒼玻さん、初カキコありがとうございましたvv リクは『青さんにすっかり騙される赤さん』だってんですが、見事にムシした内容となっています(←コラっ) なんか『すっかり赤さんを騙した気になってる青さん』って感じですネ。 蒼玻さん、すいませんでした・・・ 恩仇ですね、これじゃ。 しかも、短いし。いつか、いつかやり直させて下さい!! |
望月要様のサイト様で掲示板初カキコさせていただいたら、
こんなに素敵なSSをいただいてしまいましたーv
「青に騙される赤」でリクエストさせて頂きました。
望月様、有難うございました!
(2001.01.24UP)