第1章 財政とは何か

政府の経済活動を財政と呼ぶ
     歳入  租税・公債
  歳出    公共財・サービスの提供

第1節.財政の3大機能
 (1) 資源配分機能
   
    →民間では提供できないか、供給不足を生じるような財・サービスを
    公共部門が提供
    (参考 第2章 市場の失敗を生じる6つの原因)
    例:一般道路: 公的部門が提供
      レストランの食事:民間部門が提供
      
 公共財の2つの性質
  消費の非競合性(等量消費) ある人の消費が他のひとの消費を妨げない
  非排除性  対価を支払わない人(フリーライダー)を排除できない
 →2つの性質を両方とも満たすのが純粋公共財
   無償供給し、その費用を租税の形で強制的に徴収する
        
 高速道路  排除可能
 一般道路      排除不可能

  なお、一般道路は消費の非競合性を満たすものの、渋滞という混雑費用が発生する

  高速道路は、消費の非競合性は満たすが、料金徴収可能なので準公共財

    価値財:教育・医療  排除可能、外部性あり

(2)所得再分配機能
 市場機構にまかせておけば、能力の差、初期の資産保有の差などにより所得分配に格差が生じる。 
      政府が介入して分配を是正:累進所得税、相続税、奨学金、生活保護費

再分配の度合いは公平性に関する価値判断に依存
  功利主義:最大多数の最大幸福
  ロールズ基準:社会で最も恵まれない人の厚生を最大化
                  ↓
          完全な平等主義は効率性を阻害、貧困の平等を招く。

(3)経済安定機能
     不況期 失業
   好況期 インフレ
  自動安定化機能(ビルトイン・スタビライザー)
   累進的所得税、法人税 景気に感応する
   好況期には税収を増加、個人や法人の消費需要を抑制
   不況期には税収が減少、需要増加
 裁量的な安定政策(フィスカル・ポリシー)
      好況期 増税
  不況期 減税、公債発行
      最近では効果に疑問も
 金融政策
  中央銀行による貨幣供給の調整、公定歩合の引き上げ等

2.わが国の財政
(1)政府の範囲と分類
  SNA(A System ofNationalAccounts)国民経済計算 国全体の経済状態を把握する指標

 SNAにおける政府の範囲


一般政府(政府及び政府の代行的性格の強いもの)
       中央政府(国)
          一般会計  租税・公債の歳入  社会保障、教育、国防、公共事業など国の基本的経費をまかなう
          特別会計(非企業会計)      財政法第13条の規定にもとづき
                    (1)国が特定の事業を行う場合                 
                    (2)特定の資金を保有してその運用を行う場合
                    (3)その他特定の歳入をもって特定の歳出にあてる
                     一般の会計と区分して経理をおこなう必要があるとき
                  →造幣局国有林野(2012年度廃止)、国立学校、国債整理基金、交付税及び譲与税配布など
                                         
       造幣局、国立大学特別会計は平成15年末廃止、独立行政法人化により            
       
       独立行政法人     
「国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として、この法律及び個別法の定めるところにより設立される法人」                             



        事業団    畜産振興、蚕糸砂糖、国鉄精算、住宅建設関係を除く(特殊法人改革により改組)
                →政府の委任を受け、行政の役割を補完、独立採算が期待されていないので中央政府に分類
                                ↓
                           小泉政権の特殊法人改革
           平成13年12月18日 行政改革推進事務局 特殊法人等整理合理化計画(独立行政法人化など)

ほとんどの事業団が統廃合された。  例 宇宙開発事業団→宇宙科学研究所、 航空宇宙技術研究所と統合し、独立行政法人宇宙航空研究開発機構に移管
                                      国際協力事業団→独立行政法人国際協力機構に移管

           現存する事業団の例 日本私立学校振興・共済事業団

                                
               
       地方政府(都道府県、市町村)
      普通会計 一般的な行政収支
      事業会計(非企業会計)  病院、下水道など一部の事業会計、独立採算が求められないので地方政府に分類
     
       社会保障基金(年金、医療などの社会保険)


      「普通会計」:地方財政統計上、統一的に用いられる会計、一般会計が網羅する範囲が地方団体ごとに違うため




公的企業(独立の運営主体となっているもの)
     中央
       一般会計(公務員賃貸住宅)
       特別会計(一般政府以外の特別会計) 郵政(平成15年度末廃止)、国有林野など   
       公団、営団(政府出資だったが平成16年営団地下鉄が東京メトロに改組・民営化)
       事業団(畜産振興、蚕糸砂糖、国鉄精算、住宅建設関係)  →特殊法人改革により改組  例:国鉄清算事業団 →日本鉄道建設公団国鉄清算事業本部に移管
       その他 日本育英会(現 独立行政法人 日本学生支援機構)、海外経済協力基金(現 国際協力銀行)など
     地方
       普通会計(公務員賃貸住宅)
       事業会計(水道、交通)
       公社(地方住宅供給、地方道路、地方駐車場)

(2)財政規模の国際比較

p8 図1-1 対GDP比でみた政府支出の国際比較

対GDP比 政府支出  日本、アメリカは小さな政府  ドイツ、スウェーデンは大きな政府
       2020年に コロナ対策で急速に拡大
       コロナ後の2021年時点 スウェーデンは、コロナ前の水準に戻る



(3)国民負担率の国際比較

国民負担率=租税負担率+社会保障負担率
潜在的な国民負担率=国民負担率+財政赤字対国民所得比


p.9
図1-2 国民負担率の内訳の国際比較

 最も低いのはアメリカ 32.3% イギリス 46.0% 日本は47.9%
 高いのは フランス69.9%  スウェーデン54.5%


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