-cinema diary-

映画日記。つれづれなるままに。


 

2000.4.3 SF映画?

「ノイズ」

監督:ランド・ラビッチ
主演:ジョニー・デップ、シャーリーズ・セロン

鑑賞日:2000.3.24



 のっけから違う映画の話で恐縮ですが……。
 「アポロ13」を観たときのことです。あの映画は、かつて事故にあったアポロ13号が、奇跡の生還を果たすまでの「実話」を映画化したものです。
 何が素晴らしかったのかというと、実に「SF」しているんですね……。
 人類がアポロ計画において月に着陸するまでの間に、月着陸を題材にしたSFには様々なものがありました。ウェルズのようにファンタジイめいたもの、ハインラインのような良質ジュブナイル、そしてクラークのような宇宙計画シュミレーションもの……。
 無論、映画でもそういったものはあるでしょう。しかし、それらと「アポロ13」の大きな違い……それは、「アポロ13」には一切空想――人間のイマジネーションの余地はなく、ただ事実に事実を重ねてある、ということです。それでもその正確さ――映像だけの話をしても、例えば打ち上げシーンのリアルな迫力だったり、「宇宙もの」としては極めて珍しい「無重力」の描写だったり……勿論、「アポロ13」は「実話」であるからこそそこまで正確に描かれているのですが、その緻密さが妙に「SF」しているのです。
 SFの世界では、今度は「火星着陸」がブームとなり、その余波がそろそろハリウッドにも現れ始める頃です。「宇宙計画シュミレーション」、それは我々が男の子である以上、永遠にかきたてられて止まないテーマなのでしょう……(賛同者求ム)。


 ……で、話を「ノイズ」に戻します。かなり脱線してしまいましたが(笑)
 「ノイズ」、はっきりと言ってしまえば、この映画はSF映画です。ジョニー・デップ演じる宇宙飛行士が、宇宙空間で遭遇した「ナニか」をめぐるお話ですから、確かにSF映画には違いないのです。ところが、この映画「SF」ではありません。
 この映画、確かにSFネタを真正面から扱っていながら、実は「サスペンス」に過ぎないのです。映画はこの宇宙飛行士の奥さんを主人公とし、彼女が自分のダンナの異変に気付いて、疑いを募らせて正気を失っていく、まさにその過程を描くことに全神経を集中させています。奥さん――シャリーズ・セロンの疑い、それは事実なのかそれとも妄想なのか? 観客にもそれはラストまで明らかにはなりません。まさに傑作中の傑作「サスペンス」映画なのです。SFではなしに。


 これが10年前なら、この映画はSFとして「キワモノ」扱いされていたでしょう。こういうネタが一般に受け入れられた現在……そして宇宙計画が現実のものとなっている現在、SFでしか有り得ないネタで見事なサスペンス映画が撮れて、そしてSFマインド爆発のように見える映画も実は単なる実話ものに過ぎない……。
 それも何だか、奇妙な話ではありますね。


おすすめ度:☆☆☆


 
2000.4.3 和製ホラーの世界

「リング0・バースデイ」「ISOLA・13番目の人格」

鑑賞日:2000.3.10



 最近ホラーづいている日本映画ですが、その立役者たる「リング」シリーズ最新作+もう一本です。ちまたでは原作の三部作の最終作「ループ」が映画化されるとか、映画独自の道を歩む「リング2」の続編「リング3」が作られているとか、噂は色々ありますが……。
 ちなみに、二本とも角川ホラー文庫が原作ですが、僕は読んでいません。小説創作ページの管理人とはとても思えないことですが(爆)
 と言う訳で、個別に感想です。




「リング0・バースデイ」


 ご存知「リング」の、貞子の在りし日の話です。貞子のオソロシさはすでに「リング」1・2で描けているので、今回はそれを踏まえた上で思い切って哀しい恋物語に仕上げるという、ある意味暴挙ともいえる作品になってました。
 貞子を徹底的に「悲劇のヒロイン」に仕立て上げた前半部、非常に切ない、いい話でした(笑) その上で、クライマックスでは「呪い」パワー爆裂という、「リング」らしさ全開で、前作までを見ている人には大変楽しめる作品になったのではないでしょうか。
 監督が今回違う人に代わりましたが、脚本は毎度お馴染みの高橋洋。山村静子や伊熊博士など、前作まででお馴染み?の人々も出ています。むしろ悲恋ものという、前作までとは違ったニュアンスが出ていて非常によかったと思います。
 ちょっと惜しいのは……完全に「リング」の前日談となっていますので、2はともかく1はみておかないとちょっと分かりづらかったんじゃないかなあ、と思います。話のスジもさることながら、映画版「リング」の雰囲気を知っていないと、「はあ?」と言うことになりかねないかも分かりません。
 あと、この「リング」の映画版って、原作ファンにはかなりの不評なんですよね……映画しかみていないASDから言わせてもらえば、このシリーズはどれも近年の日本映画では水準以上のデキなんですけど。映画館で毎度無茶苦茶コワイ思いをしているASDにしてみれば、済ました顔で「原作の方が面白い」と言われるのはなんかクヤシイです……


おすすめ度:☆☆☆☆




「ISOLA・13番目の人格」


 さて……先ほども書きましたが、最近の日本映画はちょっとしたホラー&サイコスリラーのブームです。とは言え、コワけりゃ何でも面白いのかと問われれば、この映画に関しては「うーん……」でした(笑)
 まあ、内容はこれで原作の通りなんでしょうけど、何かよく分からないことだらけ。何で阪神大震災を舞台にしているのか、とか、ヒロイン?の千尋に13の人格がある意味は? とか(「二つで充分ですよ」と言わせてもらいましょう……)。ちょっとネタバレで言わせてもらえれば、このお話で一番のコワイ所と言うのはやはり「ISOLA」=「磯良」、つまり雨月物語と符号する怨恨の所在のはずなのだと思います。しかし、それと震災や多重人格という、絵的・話的に目立っている要素が、その核心の部分に今ひとつ噛み合っていないという所に非常にもどかしさを感じてしまうのです。勿論、これらの問題は原作ではクリア出来ていることかもしれませんが……。
 余談ですが、この映画を観て面白いと思わなかった人々が、ならば原作をあらためて読む気になるのかと言うと……そういう意味では、こういう映画化ってちょっと不幸だな……という気がしました。同じ貴志裕介の「黒い家」は、充分面白い映画になってたんですけど……他にもこういう不幸な映画化の例を上げればきりがないんでしょうけどね。


 あともうひとつ、この映画を観ていて感じたのは、ホラーはホラーでもSF的領域に入ってくると途端に駄目になるんだなあ……と言うこと。「パラサイト・イブ」がまさに好例なんですけども、原作は医学的・生物学的知識に裏づけされた重厚な仕上がりなのに、映画になるとそれらの「裏づけ」がばっさりと切られて(恐らく映像では表現しずらい、という考えの上での省略なんでしょうけど)急激にキワモノ度が上昇するのですねえ……。同じ事は「ISOLA」にも言えていて、大学での実験のエピソードなど、多分原作ではきっちり書き込まれているんだろうなあ、と想像しながらも、結局は単なるキワモノSF映画――過去のネガティブなイメージで言う所の「SF」になっちゃってるんですよ、これが。
 ならばこれにリアリティを持たせるのは何なのか? それはやはり、観客が本物であると信じざるをえないような、或いは嘘だろうがホントだろうがそんなみみっちいことがどうでもよくなるようなド迫力の映像――SFX、なのでしょうけど。結局日本の低予算ぶりでは、技術があってもそれを実現に導くのはちょっと難しいでしょう。「ガメラ」のようにスタッフの熱意でカバー出来るのなら別ですが。
 映画の題材を小説や他のメディアに求める……それはそれでいいとして、その意義と言うものを考えさせられる映画ではありました。

おすすめ度:☆

 
2000.3.11 今そこにある危機


「シュリ」
(1999年 韓国)

監督・脚本:カン・ジェンギュ
主演:ハン・ソッキュ キム・ユンジン チェ・ミンシク


(鑑賞日:2000.3.1)




 今回かなりケナしてます。この映画のファンの方はご注意を(笑)



 この映画を語る上でよく引き合いにだされるのが、「ハリウッド映画にも肩を並べる」云々……という文句です。同時に、「日本映画を超えた」云々という話もちらほらと見かけます。このように、「シュリ」を語る上ではどうしても比較の問題から離れる事が出来ません。
 いや、日本でも撮れないわけじゃないんですよ。いや、負け惜しみではなく、これと肩を並べるくらいならアクションだって何本かはあります。注目されていないだけで。注目もされていない、評価も(対して)されていない……。思えば、日本映画であることそのものが、何だか不利な条件のような気すらしてきますが……。
 一方の「シュリ」はと言いますと、馴染みの薄い韓国映画にも関わらず、本国で「タイタニック」を抜く大ヒットを記録したお陰で、その作品の内容まで「タイタニックを越える大作」「タイタニックを超える感動作」扱いですから大変なものです。
 とは言え、内容は単純なアクションもの。北朝鮮からやってきたスパイと韓国の諜報員との対決を軸に、恋あり友情あり、サスペンスありバイオレンスありの、非常に賑やかな映画です。サービス精神旺盛とも言います。そういう意味ではある意味ノンジャンル的でもあるのですが、作家性の追及というよりはただ欲張りなだけ、という気も……(爆)
 ここで一つ注目なのが、「南北分断の悲劇」真正面からをテーマとして盛り込んでいる点です。内容的に避けては通れない道でもありますし、そこで敢えて避けなかったのもエライとは思いますが……。ならばこれが深刻な、重い映画かというと答えは「ノー」です。
 正直に言って「シュリ」はかなり「ウソくさい」話です。仮に日本映画で、お金をかけておんなじストーリーで映画を作っても、リアリティの欠片もない駄作にしかならないでしょう。ハリウッド映画うんぬんというより、日本ではアニメとかコミックで使い古されたような話です。
 そんな話にリアリティを持たせているのは何か。それこそ、現実に存在する「南北の緊張」に他なりません。近くて遠いアノ国は一体何をしでかすか分からない、国境を接した二つの国の間がどうなるのか、本当に予測がつきません。その現実が、計らずも「映画のリアリティ」に貢献しているのです。
 考えてみれば、ハリウッド映画では何かにつけて「テロリスト」が悪役となります。日本で同じことをやっても、ウソくさくなるだけですが、アメリカの場合は現実にテロの驚異に晒されているという現実があるからこそ、テロリスト達は映画の花形悪役でありうるのでしょう。
 これと同じことが、「シュリ」にも言えます。ひょっとしたら、この映画のような荒唐無稽な事柄も、冗談では済まされないかも知れない……「シュリ」において観客にウソではない手応えを与えているのは、緻密なシナリオでも圧倒的な演出力でもなく、現実に存在するこの事実関係なのでしょう。そういう意味では、この映画は「南北分断の悲劇」を真剣に考える映画ではなく、ともすれば分断をアクション映画のツマミに利用している、非常に不謹慎な映画と言えなくもありません。深刻な歴史的問題を、こういうクールな視点でみることが出来るようになったのが最近の韓国、ということでもあるのでしょうか……?
 もし朝鮮半島の実情をまったく知らない人間がこの映画を見たとして、「確かな傑作」と太鼓判を押すでしょうか……それなりに興味深い問題ではあります。



 振りかえってみると、日本ではこういう、「ある種の都合のいい社会状況」がこれといって存在しません。例えばテロなんぞは無縁といえば無縁ですし、銃器も最近問題になって来ているとは言え、日常的に、絵的にウソくさいものには違いありません。ついでに言えば、自衛隊にもヤクザにも、「マフィア」とか「アメリカ軍」のような「存在感」というか「重み」がありません。そこまで考えると、日本という国はなんと荒唐無稽なアクションが撮りにくい国なんでしょう……(爆)



 ちなみに、この作品に関してよく言われている「ハリウッドレベルのクオリティ」云々に関して。確かに映画としての出来は水準並です。しかし、それ以上でもそれ以下でもありません。「ハリウッド」に追いつけ追い越せ、の中で、追いついてはいるけれどもそれ以上追い越せない、そんな状態。
 例えば、アクション映画で世界に出ていった非ハリウッド出身の映画人……フランスのリュック・ベッソン、香港のジョン・ウー……彼らは実際、どこの国の人間にも通用するだけの普遍的な作品において、その圧倒的な演出力が買われて、現在ハリウッドで活躍しています。それを考えると、「シュリ」はもう一歩かな……という気がします。
 ま、韓国映画の現状を知るにはいい作品だとは思いますが。



 ちなみに、一つショックだったのは、パンフレットにおいて日本映画独自の才能を持ったクリエイターがこぞって「シュリ」を誉めていたこと。「サムライ・フィクション」の中野裕之、「ガメラ」の樋口真嗣、「踊る大捜査線」の本広克行……日本発の中で、「ハリウッド」を意識する事なく、ある意味ハリウッドには出来ない作品を作っている彼らが、この作品をベタ誉めするのはどうにも納得いきません(笑)




おすすめ度:☆☆☆
 
2000.3.2 世界では不十分だ

「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ」
監督:マイケル・アプテッド
主演:ピアース・ブロスナン、ソフィー・マルソー、ロバート・カーライル、デニーズ・リチャーズ、他

鑑賞日:(2000.2.13


 007です。ジェームズ・ボンドです。ピアース・ブロスナン3作目です。
 正直、彼のボンドは何だかタチの悪いパロディのようにわざとらしいのですが、今の時代のスパイ映画はそのくらいの方がいいのかも知れません。
 アクション映画として素性のよかった前々作「ゴールデン・アイ」に対して、前作「トゥモロー・ネバー・ダイ」は、スパイものとしての「わざとらしさ」にこだわり過ぎていて失敗のような気がしました。香港風のアクロバティックなスタントは確かに素晴らしかったのですが、ヒロインのミシェール・ヨーが自身スタントもこなす中、ブロスナンはアクションはスタントマンに任せてただにやけているだけ、の感が拭えずに、アクション映画としてぎこちないものでした。また、最初から敵の陰謀が明らかになっていたため、サスペンスの魅力に乏しかったのも難点でしょう。
 というわけで、「ワールド〜」です。今回宣伝ポスターの、白いスーツのブロスナンを見て、前述の「わざとらしさ」に更に磨きがかかるのかな……? と思っていたのですが、フタを開けてみればアクション映画として非常に真っ当な出来映えだったと思います。
 最大の成功点は、身体を酷使する香港スタイルから、ものをばんばん壊すハリウッド・スタイルへの回帰でしょう。意味もなく謎をひっぱるサスペンスフルな展開もイマ風です。アクションにおいてもサスペンスに追いても素直にカタルシスを満たすデキでした。最近、こういう素直なアクションが妙に減ってきているので、僕としては非常にうれしかったりします。

 余談ですが、ボンドカーについて。あんまりハイテク兵器を盛り込むと「そんな武器あるわけねえだろ」とツッコミを食らうのは充分承知の上で言わせてもらうと……せっかくのZ8なんだからさあ、もうちょっとうまく使いましょうよ〜(笑) ボンドがカッコイイオープンカーで颯爽と現われる、という以外に見せ場のなかった、可哀相なBMW・Z8でした(笑)


おすすめ度:☆☆☆☆

 
2000.3.2 おしまいの日

「エンド・オブ・デイズ」

監督:ピーター・ハイアムズ
主演:アーノルド・シュワルツェネッガー、ガブリエル・バーン、他

鑑賞日:2000.1.1

 シュワルツェネッガー、割と久々のアクション超大作です。お正月映画では一番デカイ顔をしていた大作でした。
 とは言え、一枚看板のシュワを外してみれば以外に映画そのものは小品的佳作だったかもしれません(笑)
 監督のピーター・ハイアムズ、彼の撮る映画は言い意味でも悪い意味でもB級テイストが非常に濃厚なんですよね(笑) かと言って別に演出がマズイとかそういうわけでもなく、彼の作品には常に「職人の技」のような手堅い魅力があります。彼はよく、自分の監督作において撮影監督まで努めています。「ああ、それじゃカメラマン出身なんだ」とつい思ってしまいますが、実はさにあらず(笑) 作品に職人的なこだわりを見せるあまり、後からカメラのことを勉強したんだそうであります。なんともまあすごい人だ!(笑)
 んで、肝心の本作ですが……とにかくお金がふんだんにかけられているので、ぱっと見た目かなりA級テイストですが……それでも何故か、そこはかとなくB級っぽいのがやっぱりハイアムズでした(笑)
 本作のシュワ、心臓手術後の第1作とあってか……意外にもあんまり動きません(爆) 自慢の筋肉もあんまり披露してませんし……ただ、過去のある落ちぶれた刑事、というややヨゴレっぽい役回りは、新鮮と言えば新鮮かも知れません。
 ちょっと面白かったのが「悪魔」を演じていたガブリエル・バーン。大物なんだかセコイんだかよく分からない悪役ぶりがなかなかユニークでした(笑)
 ストーリーはと言えば……ちょっと漫画っぽいお話でした。荒唐無稽、というより、「宗教的に世界を守る裏組織」なんていう、伝奇もののコミックみたいなネタがねえ……(笑)
 ラストで本当の姿を表す「悪魔」の、色んな意味であんまりなビジュアルといい、ちょっと微笑ましい一作でした(爆)



おすすめ度:☆☆☆
 
2000.3.2 ディズニー、新機軸か?
「ターザン」
鑑賞日:2000.1.1


 「美女と野獣」「アラジン」の頃の絶頂期の勢いはどこへやら、最近まったく勢いのないディズニーですが……。
 「ヘラクレス」でギリシャ神話、「ムーラン」で中国ものと、手を変え品を変え新鮮味を出そうと躍起でしたが、ここへ来てついに思い切った改革に乗り出してきた感があります。
 思えば、最近のディズニー長編には色々と葛藤が見られます。映画としての面白さを追求することと、「ディズニーらしさ」を追求することの矛盾がありありと見て取れるわけですが、今回の「ターザン」は「ディズニーらしさ」から一歩離れる事で、映画作品としての面白さに一歩近づいたのではないかな、という気がします。直接の血の描写こそありませんが、アクションシーンを自覚を持って描いている点、ミュージカルのスタイルを思い切って捨てた事など、目新しさは色々あります。考えてみれば、かつての「リトル・マーメイド」「美女と野獣」などのヒット作は、そういう伝統に敢えて逆らうことから生まれてきた作品ではなかったでしょうか……。
 この勢いを次回作にも生かせれば、またディズニーも盛り上がってくると思うのですけど……。

おすすめ度:☆☆☆☆

 
2000.3.2 ベッソンご乱心?
「ジャンヌ・ダルク」

鑑賞日:2000.2.1

 リュック・ベッソン最新作です。
 まず冒頭からいきなり、ベッソン映画らしくありません。まあベッソンの場合作品によって作風は微妙に異なるのですが、この作品のようなコスチューム・プレイによる史劇ものでは他と似てしまうのはいたしかたないことなのでしょう。それにしても、陽光の下の兵士の軍勢なんて、おおよそこれまでのベッソン映画ではまず見られない画ですからね(笑) そもそも冒頭ナレーションから始まるというのが全然らしくありません。
 ところが打って変わって後半、ジャンヌの宗教裁判の下りになってくると、途端にベッソンらしくなって来ます(笑) ジャンヌが牢の中で自己の内面と向き合う、室内の暗いトーンはまさしくベッソン(笑) やはり画面の中に人間が少ない方が彼らしいと思います(笑)
 とは言え、これまでの作品で散々「強い女性」を描いてきた彼ですが、今回は自己の内面と向かい合うジャンヌを描く事で、人間の弱さにスポットが当てられていたと思います。これまでのパターンでは「強い女」に振り回される男の存在がこの「弱さ」を現していたのですが、今回はジャンヌが全部それを背負う事で、これまでにない重いテーマを扱った作品になっていたと思います。
 ま、ベッソンにとっての「もののけ姫」にならなかったのはよしとしましょう(笑)

おすすめ度:☆☆☆☆
 
2000.3.2 第六感
「シックスセンス」

鑑賞日:2000.2.12

 去年の11月の公開作品、超ロングランになってしまいました。
 この映画の「秘密」に関しては、敢えてここでは申しません。映画を見るのが一番だし、どこかの雑誌で徹底研究なんてものをやってたみたいですし……。
 一つ言えることは、「もう一度観たい」と思わせる訴求力の弱さでしょう。確かに脚本は緻密に練られていますが、その脚本の力で観客を圧倒するだけのパワーがこの作品には欠けていると思います。極端な話、映画が観客を置き去りにするかのような強引さに欠けているため、一度見ただけでもう充分、という思いになってしまうのです。脚本の出来の割に演出が力不足……と思うのですが、この話の性格上、逆に強引に持っていきようがないんですね……口あたりの柔らかさは狙いなのかな、という気もするのですが、その口あたりのよさが大ヒットの要因だと思われます。
 その分、まにあな僕には食い足りないんだよねえ……(爆)

おすすめ度:☆☆☆☆



追記:  本作に関しては、「アンブレイカブル」のネタバレ感想の方で、同時に詳しくやっていますので、そちらもよろしければどうぞ。

 


鑑賞順リストへトップページに戻る