-cinema diary-

10月の映画日記:その2。


 

2000.10.27 穴の向こう側

「マルコヴィッチの穴」

監督:スパイク・ジョーンズ
脚本:チャーリー・カウフマン
主演:ジョン・マルコヴィッチ、ジョン・キューザック、キャメロン・ディアス、他

鑑賞日:2000.10.26



 なんつうか、一筋縄では行かない作品であります。
 ニューヨークのとあるビルに、まったく何でもないかのように存在する7と1/2階。そこには何でもないかのようにオフィスがあって、何でもないかのように人々が出入りしている(ただし、エレベーターは7〜8階の途中で止めないと行けない)。そこに存在する未知の「穴」――そこに入れば、誰でも他人になる事が出来るのです。そう、「ジョン・マルコヴィッチ」に……。
 そう、寄りによってジョン・マルコヴィッチですよあなた。トム・クルーズでもブラピでもレオ様でもなく、ジュリア・ロバーツでもキャメロン・ディアスでもグウィネス・パルトロウでもなく……あくまでもジョン・マルコヴィッチなのです。誰もがあこがれる美男美女のたぐいではありません。そりゃ彼だって成功したセレブリティには違いありませんが、何を好き好んで頭のハゲた神経質そうなオヤジに変身する必要があるのでしょう。まさに、一筋縄では行きません。
 そう、問題はそこなのです。ただ有名人に変装できるだけなら、それは単なるギャグにしか過ぎません。わずか15分とは言え、他人になれる事……自分とは違うものに変身できる事。これに魅せられた人々は、この「穴」を利用することで思い思いの方法で、彼らそれぞれの欲求をかなえようと奔走します。それは喜劇的でもあり、悲劇的でもあり……「Being John Malkovich」の原題が示す通り、この映画は「マルコヴィッチになりたい」……なって何かを成し遂げたいと願う人々を描いた作品なのですね。
 そういう意味では、ジョン・マルコヴィッチはあくまでも脇役に過ぎない、とも言えるでしょう。とにかく、「どこかで見たような」感覚とはどこまでも無縁なストーリーです。この展開をすべて予測できたあなた、はっきり言って変人です。いますぐ何か書きなさい(笑)



 そういやこの映画、いろんな人がチョイ役で出てますが、キャメロン・ディアスが出ていることにエンドロールを見るまでまったく気付かなかったASDでありました……。ま、多分誰も気付きそうにないけど……。




おすすめ度:☆☆☆☆



2000.10.21 カーネル・ベンジャミン

「パトリオット」

監督:ローランド・エメリッヒ
主演:メル・ギブソン

鑑賞日:2000.10.20



 ローランド・エメリッヒです。そう、あのローランド・エメリッヒなのです!(笑) 「インデペンデンス・デイ」「ゴジラ」の、あの人です。ドイツ時代の「MOON44」に始まり、「ユニバーサルソルジャー」「スターゲイト」、先述2作、とSFばっかり撮ってきた彼が、おそらく初めて撮る非SF作品でしょう。とは言え、CGも結構使ってます(笑)
 映画の舞台はアメリカ独立戦争です。ああ、そういや南北戦争を扱った映画はいっぱいありますが、独立戦争ってのは珍しい気がしますねえ。開拓時代のインディアンとの戦争を描いた作品としては「ダンス・ウィズ・ウルブズ」がありますが……少なくとも僕の記憶では、独立戦争ものはこれだけです。
 ……しかしエメリッヒ、ストレートな所を狙ってきました。理由は分かりませんが、彼は本当に「独立戦争」が大好きなお人であります。かの「インデペンデンス・デイ」がもろにそれ。エイリアンに侵略された地球人ですが、別に侵略はされても征服されたわけでもないのに、大統領が「独立戦争だ!」と息巻いてますし、「スターゲイト」だって、遠い星の彼方で、強大な支配者に屈している民族の独立を、地球からやってきた軍隊が手助けするという話でした。「ゴジラ」は……そういうネタにはなってませんでしたね。デキがぐだぐだなのはそのせいかも知れません(爆)
 ま、理由をちょっと真剣に考えてみるならば、彼がアメリカ人ではない、という事が挙げられるかも知れません。外国人であるがゆえに、「戦って勝ち取った自由」というものに強い興味を持っているのかも知れません。これも何故かは知りませんが、彼の映画では実に頻繁にアメリカの星条旗が大映しになります。やっぱ、アメリカ人のルーツみたいなものに興味あるんでしょうなあ。……月並みな考察で申し分けない。
 ちなみにいつもは自分で、ないしは相棒のディーン・デブリンと共同で脚本を書く彼ですが、今回は別に脚本家がいます。「プライベート・ライアン」も手がけたロバート・ローダットが今回は脚本を手がけています。いつものエメリッヒ作品のように展開がトホホでないのは、おそらく彼の力が大きいと思います。考えてみれば「プライベート〜」も結構ヒサンな話(バイオレンスのみならず)でしたが、今回もとにかく人がいっぱい死にます。涙を誘うために殺しているんだったらラストで大激怒するところですが、この作品の場合それなりに意味があるように思えました。
 自由は、犠牲の上に成り立っている……暴力を振るわなければ、自由を求めることが適わない。犠牲の上にしか、成果は存在しない。「プライベート〜」でも追求されていた、戦場における苦悩というかなんというか。そういうやるせなさをきっちりと追求している、いいお話だったと思います。スピルバーグは人の可能性をポジティブに捉えて、スクリーンに描き出していましたが、エメリッヒはある意味馬鹿正直にこの苦悩をスクリーンに刻みつけておりました。見終わった後複雑な思いになる一作ですが、妙にポジティブになってしまった結末を冒頭のバイオレンスシーンで帳尻合わせしているスピルバーグよりは、素直な映画だったんじゃないかなと思います。ま、悪い映画ではないと思うんですけど、金沢では何故かミョーにはやく終わっちゃいました。やっぱ長い映画はダメか。




おすすめ度:☆☆☆☆(まあ、エメリッヒだからってバカにするのはやめておきましょう(笑))



 ただ、ぱっと見た目エメリッヒらしいバカ愛国映画に見えないこともないので、人様に面と向かって「面白かった」と言うには勇気がいるかも……(爆)



2000.10.21 盗難保険は忘れずに

「60セカンズ」

主演:ニコラス・ケイジ、アンジェリーナ・ジョリー、ロバート・デュバル、デルロイ・リンド、他

鑑賞日:2000.10.16



 一番の見所は、ニコラス・ケイジのヘンな顔です(ウソ)。


 スーパーカーがぞろぞろのカーアクション映画……と思ったら、実は大間違いです。
 ただひたすらに高級車を盗む、泥棒たちの活躍を描いた映画、というのが正しい見方でしょう。それも、「車を盗む」ことよりも、「一度に沢山盗む」方に力点が置かれています。まあ確かに、24時間で街中の高級車を50台盗もうってんですから、一台一台の盗みのテクよりも、フットワークのよさに爽快感を求める方が映画としては真っ当なのではないかな、という気はします。そういうわけなので、この映画を見ても盗みのテクの勉強にはなりませんので、あしからず。
 そう言えば、愛車に盗難防止装置をつけているやすぷれっちはこの映画を見て「シャレにならない」とか申しておりました。まあ、3年落ちのプレリュードなんて、転売目的で盗む人なんていなさそうですけど。ボクのKaならなおさらいないでしょう。そういう心配は、実際にベンツやフェラーリに乗ってる人がするものです。
 ちなみに、カースタントこそろくにありませんが、高そうな車がぞろぞろ出てくるのは確かなので、クルマが好きな人にはイイんじゃないでしょうか。フェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニと言ったスーパーカー勢(ポルシェはスーパーカーじゃないなんてツッコミは却下だ(笑)))、ベンツ、BMWと言った高級サルーン……結構いろんな車が出てきますので、車種当てなんぞやりながら見ると退屈しないのではないでしょうか。アメ車も色々出てきますが、そっちはあんまり興味ナシ(笑)
 ちなみに、さすがにクルマの映画なのでカーアクションが皆無というわけにはいきますまい。後半、シェルビーGT500が街中で大暴れしてくれます。ただ、同じニコラス・ケイジ主演作で言えば、「ザ・ロック」の初盤の見せ場、サンフランシスコ名物ケーブルカーを巻き込んでのカーアクションの方が迫力満点でオススメです。紙のようにくしゃくしゃになるフェラーリF355が何とも言えません




おすすめ度:☆☆(ニコラス・ケイジの変な顔にあと一点つけてもいいけど……(爆))



2000.10.21 味方も強大

「X−メン」

監督:ブライアン・シンガー
主演:パトリック・スチュアート、イアン・マッケラン、ヒュー・ジャクソン、アンナ・パキン、他

鑑賞日:2000.10.12



 あの「X−メン」が映画化!
 ……と言っても、ASD的には「ふーん」と言ったところです(失礼!)。ま、アメコミ関係は企画が現れては消えていくので、実現に漕ぎつけたのは実際はエライのかも知れませんが。
 それよりも問題なのは、監督があのブライアン・シンガーだという事でしょう。「ユージュアル・サスペクツ」「ゴールデン・ボーイ」とシブい映画を撮ってきた彼が、何故に唐突にこのようなビッグバジェットを? 一体どんなシロモノになるのかと、不安を覚えつつも興味津々だったASDであります。
 で、感想。めっちゃフツーの映画ぢゃないですか(笑)
 ま、細かい不満は色々あります。それと同時に、「おおっ」と思わせる描写もありました。けど、それはあくまでもフツーのSFX大作ものとしての感想に過ぎません。はっきり言えば、誰が監督でも同じような気がするんですよね。わざわざ彼を起用した意義が、いまひとつ薄いように感じられました。彼らしさを感じたのは冒頭のホロコーストのシーンだけで、あとは「バットマン」的な、「アメコミ映画化の方程式」を忠実になぞっただけのように見られました。
 それじゃ一体、どのへんがブライアン・シンガーなんでしょう。
 この作品の冒頭は、第二次大戦中のホロコーストの描写から始まります。敵のボスであるマグニートーは、かつて少年時代において、ユダヤ人であるというだけで言われなき迫害を受けた身です。それが時を経て、未来社会においてはミュータントとして、再び言われなき迫害を受けようとしています。社会を脅かす敵としてみなされるミュータント達。物語は、彼らを迫害する人間を敵視する勢力と、人間達との共存を模索する勢力――二つのミュータント勢力の衝突を描いています。
 ただし、ここでの「ミュータント」はあくまでも架空の存在に過ぎません。彼らが迫害されるという事実に大して、観客はたとえホロコーストの例を引合いに出されたとしても、簡単に切実な問題として捉えることは出来ないはずです。ここで映画はこの問題に関してそれ以上突っ込んだ事を言及はせずに、あくまでも一設定に押しとどめ、ミュータントVSミュータントの戦いに徹します。彼らはそれぞれ人間社会を守る/攻撃するという、どちらかのスタンスに立たされているわけですが、実際の彼らは人間社会に対してそれほど大きな介入を示すわけではありません。両者の戦いはあくまでも両者の戦いとして自己完結し、そこに人間が関わる部分はほとんどないのです。
 そう、映画はほとんど、彼らミュータントしかいないも同然の世界に没入してしまっているわけです。この状態で、人とミュータントの関り合いの中から何か問題提起をするのは不可能でしょう……。まあ、この作品はあくまでも純粋なエンターテインメントですので、そこまでの問題提起を期待するのはお門違いでしょうけど。
 ところで、彼らミュータントは確かに人間社会において迫害されているわけですが、実際のところ彼らは社会的に……法律で権利が制限されているとか、それこそホロコーストのように隔離・収容されているとか、そう言ったことはまったく無くて、あくまでもアメリカの一市民に過ぎません。作中で上がっている「ミュータント登録法案」も、あくまでも法案の段階でしかなく、とある上院議員が声高に叫んでいるだけに過ぎません。
 実はここに、ブライアン・シンガーらしさがあるような気がするのです。話題代わってここで彼のフィルモグラフィに目を向けて見ます。デビュー作「パブリック・アクセス」は、とあるテレビ番組のカリスマ的司会者によって、人々が洗脳される社会を描いてました。続く「ユージュアルサスペクツ」は、ある事件の証人の言葉から浮かび上がってくる謎の犯罪王の人物像を追うサスペンスでしたが、証言によるミスリードがサスペンスのキモになっていました。そして3作目「ゴールデンボーイ」では、ナチ戦犯の老人によって、悪の道に導かれる少年を描いています。
 つまり彼の作品は常に「他人の言葉によって誘導される」人間像を描いているのです。「ユージュアル・サスペクツ」は映画の大半がとある人物の「語り」……つまり主観映像で描かれており、ここで事実が歪められるままに、観客はまんまと騙されてしまいました。「ゴールデン・ボーイ」における原作からの改変……原作では殺戮者になる少年が、映画ではそうならずに、「言葉で人を欺く」タイプの悪人になるのは、やはり少年自身が「誘導する者」へと変容していく事に意味があったのではないでしょうか。
 それらを踏まえた上で「X−メン」のミュータント問題に目を向けてみましょう。問題は彼らミュータントが直接的に、恐れられ迫害される事ではありません。誰かの誘導・扇動によって、人々の意志が「ミュータントは危険だ」「隔離しなければ」と言う方向に操作されてしまうこと……ここに危険性がある、そう言っているのではないでしょうか。
 そう、例の上院議員は、「ミュータントは危険だから」法案が必要であると説き、人々を扇動しています。実際の危険性云々はともかくとして、民衆がそう信じて法案が可決されることで「ミュータントは危険」「排除せねば」というイメージが既成事実化されてしまう事……ホロコーストになぞらえてまで言わんとした事とは、そこではないでしょうか。そう、かつてのホロコーストも、結局は時の指導者の扇動によって、今から考えればまるっきり信じられないような事を当時の人々が馬鹿正直に盲信した結果の惨劇ではなかったでしょうか。恐ろしいのはそこに存在する事実そのものではなく、「これが事実なのだ」と何者かに信じ込まされた人間の盲信である……そう訴えているような気がします。
 そう考えると、ミュータント達の戦いの自己完結性にも、具体的な意味が生まれてきます。彼らが人間社会を守る/攻撃することは、そのまま彼らが善なのか悪なのか、彼らのパブリック・イメージを左右することになるわけです。つまりX−メンの戦いは、まさにこのパブリック・イメージを守る戦いと言えないでしょうか。彼ら自身が人間社会に及ぼす影響というのは、ここではさして大きな問題ではありません。彼らの勝敗によって決定される彼らのイメージ……そこから人々がどういう印象を受けるのか。何らかの印象を受けた人々が、彼らにどんな影響を及ぼすのか。大事なのはそこなのです。そのために、逆に彼らの戦いは彼らの中だけで自己完結している必要があるのだと言えるかもしれません。
 ところで、彼らミュータントと人間が没交渉的なのには、もうひとつ理由があります。映画はコミック同様にシリーズ化が予定されています。恐らくは「バットマン」のように、可能な限り何作でも続ける気でいることは間違いないと思います。そのためには、基本的な枠組として、「取り敢えず人間とミュータントはなんのかんの言いながら共存出来ている」事が絶対条件といえないでしょうか。毎度事件が起きては、この「共存」が脅かされ、最終的にはそれを未然に防ぐ。どんなエピソードを持ってきても、その枠組さえ守っていけば、市場が受け入れる限り続編は続けられます。この枠組が破れるとき、1話完結のシリーズものという体裁は崩れ去ってしまうでしょう。
 それはそれで違う展開が見えてくるのでしょうが、さすがに第1作からそれを堂々と破るわけには行きません。そういう意味ではブライアン・シンガーには結構厳しい制約が課せられたんじゃないかなという気もするのですが、そういう風に作品が条件をあれこれ要求する中で、「彼らしさ」を発揮することに、実はひそかに成功していたんじゃないかな、と僕は思います。
 そう考えれば、やはりこの映画、確かにブライアン・シンガーの手になる作品と言えるのでしょう。……が、観客の多くはそこまで把握出来るでしょうか。ちょっとだけ心配なASDでありました。




おすすめ度:☆☆☆



2000.10.18 教訓。天気予報はまめにチェック

「パーフェクト・ストーム」

監督:ウォルフガング・ペーターゼン
主演:ジョージ・クルーニー、マーク・ウォールバーグ、他

鑑賞日:2000.10.6



 本作は実話に基づいて作られた作品です。基づいて、と言うことで実話通りではありません。何故なら……ま、理由は作品を見ればお分かりになるかと思います。
 ともかく、この映画の主役は誰が何と言っても「嵐」でしょう。この映画は、嵐を切り抜けて帰還を試みる、男達の熱いドラマではありません。あくまでも、為すべき手段のない人間達の上に猛威を振るう、自然災害の恐ろしさを描いた映画なのです。……ま、元になった出来事の関係者に配慮すれば、極端に人間ドラマとしてクセのあるものに仕上げることは出来なかったんでしょうが……。
 そんなこんなで、CGはホントにスゴイです。監督のウォルフガング・ペーターゼンは本作の他にも、「特撮が主役」の映画を何本も撮っていますが、彼はCGや特殊効果が人間サマよりもエライということを本当によく熟知している監督だと思います(笑)。CGIなんていくらリアルに造り込んだところで結局はウソに過ぎないのですが、その「ウソに過ぎない」映像の持つ迫力を素直に訴求出来る腕前というのは、ひょっとしたら結構貴重かも知れません。
 ちなみにこの映画のラストですが……「ハリウッドらしからぬ」と、かわばたさんは絶賛?しておりましたが、ASD的には泣きを誘う演出はやっぱりハリウッドだなあ、と思ってしまいました。ラスト、引っ張りすぎ。……何の事か分からない人は、素直に映画を見ましょう(笑)




2000.10.18 へびのめ

「スネークアイズ」

監督:ブライアン・デ・パルマ
主演:ニコラス・ケイジ、ゲイリー・シニーズ、他

鑑賞日:2000.9.26



 WOWOWにて鑑賞。
 デ・パルマ監督渾身の一作です。冒頭13分の長回しはあまりにも有名ですが、その他にも同じシーンを違う主観で何度も語り直したりする手法など、「ああ、デ・パルマだなあ」と強く思わせられる一作でした。……って、そんなに沢山見てるわけじゃないんですけど(爆)
 それはそうとして、ラストのラストで思わせぶりに大映しになる赤いルビーって、一体どういう意味があるんでしょう? ASDのAはアホのAという事で(ウソです)、何度見てもこの謎はまたしても解けずじまいでありました。
 どなたかご存知の方、メールでこっそり教えてください(マジです)。




おすすめ度:☆☆☆☆(誰か謎を解いて下さい(笑))



2000.10.18 空飛ぶプジョー

「TAXi2」

監督:ジュラール・クラヴジック
製作・脚本:リュック・ベッソン
主演:サミー・ナセリ、フレデリック・ディーファンタル、他

鑑賞日:2000.9.22



 関係ない話ですが、ASDはフランス車ではプジョーよりもルノーの方が好みです。しかし、この映画はプジョーの全面協力の元に作られているので、ルノー車はほとんど出てきません。チト悲しい……。
 さて、「TAXi2」です。前作にも増してマンガちっくな一作でありました。何しろ、今度のプジョー406は空まで飛ぶのですから!
 クルマの映画とあって、今回もカーアクションは満載です。冒頭、ラリー仕様の306マキシを追い回すシーン……ラリー競技中の車両を一介のタクシーが抜き去る、というウソのようなシチュエーションに始まり、今度は無事撮影許可が下りたパリ市内での、黒いランエボとの追いかけっこ、パトカー数十台の大クラッシュ……まあとにかくハデです。
 とは言え、基本的にはやはりギャグ映画ですね。406のあまりにもウソくさいハイテク装備の数々(ナニを想定して羽根なんかつけているんでしょう)といい、謎の装甲VIPカーといい(単なる黒いプジョーです)、とにかく出てくるマシンがリアリティのかけらもないウソ丸出しなものばっかりです。そのおかげで、せっかくCGを使わない本物のカースタントを展開しているにもかかわらず、ちっともリアリティを感じません。クルマの挙動に、ハラハラドキドキさせられる事がないんですね。
 冒頭にも書きましたが、はっきり言ってプジョーの宣伝映画のようなシロモノです。ちなみにルノーは出てきませんが、関連企業であるシトロエンの車はちらほらと画面に映っています。それと、今回クレジットに名前はありませんが三菱がランエボを提供している関係か、パジェロなんかも頻繁に画面を飾ってますね。
 まあ、クルマ以外に目を向ければ、なんてこたあないコメディです。それもすごいベタなギャグ満載で、見ていてハズかしかったりもします。フランスで大ヒットとの事ですし、アメリカでもそれなりに受けそうな出来映えですね。日本では……どうなんでしょう。一応ベッソン映画ですけど、ベッソンファンにこういうアバウトなノリが受けるんでしょうか……前作は受けてたみたいですけど。
 それはそれとして、今回悪役は日本のヤクザという設定です。とは言え、肝心の「日本」の描写はここ数年の洋画の中でも特にヒドイものです。アメリカ映画でも今時こんなヒドイ描写はお目にかかれません(笑)。日本人というよりは、怪しげな(そして頼りない)香港マフィアと言った所でしょうか。パンフレットには「リュック・ベッソンは親日家」とありましたが、大いに首をひねってしまいました。
 そうそう、そのベッソンは本作ではシナリオを手掛けているのですが……ヨッパらいながら一晩で書き殴ったんじゃねえのかと思わず疑ってしまったASDであります……(爆)




 どうでもいいんですけど、空まで飛んだ406とカーチェイスを繰り広げるランエボは、ほぼノーマル状態なのに絵ヅラ的に全然負けてません。喜ぶべきか、悲しむべきか……(笑)




おすすめ度:☆☆☆(パリ市内でパトカークラッシュをやらかした侠気に1票(笑))



2000.10.18 恐い映画

「最終絶叫計画」

鑑賞日:2000.9.21



 この映画に関して、僕から言うべき事は何もありません……とは言え、語らないとこの日記の意味が無いんですよねえ(笑)。一口に言ってしまえば、「裸の銃〜」シリーズに代表されるいわゆるパロディ映画です。同時に、実にしょうもない、下らない映画でもあります(笑)。
 まず冒頭、とある映画を真似た「お願い」のテロップから大爆笑。「スクリーム」1をベースに、「ラストサマー」の展開もちょっぴり絡ませつつ、イロイロな映画のパロディをやらかしてくれます。「スクリーム2」「シックスセンス」「マトリックス」「ブレアウィッチ〜」……「フェリシティの青春」なんかも押さえてありましたね。
 しかしながら、それらパロディを差しおいて、とにかく下ネタが多すぎです(笑)。アメリカ人てのはなんでこうも下半身ネタが好きなのかと、唖然とする一作でありました。「裸の銃〜」シリーズでもすぐズボンを脱いだりコンドームネタがあったりと落ち付きがありませんでしたし、「オースティン・パワーズ」などは元ネタが分かりにくい分下ネタばっかりが目に付くという結構ヒドイ(笑)ありさまでした。それでもこれらはまだヒネリが効いている方で、この「最終絶叫計画」の場合取り立てて何のヒネリもありません。ストレートにイチモツがスクリーンを飾ったりとか……(爆) ヒネリなさ過ぎです。あんまり笑えません
 「マトリックス」のパロディシーンなど、特殊効果にもかなり力が入っていてそれなりに見所ではあるのですが……。これを劇場で見てしまったASDの感想としては、「そのまま忘れてしまうのが一番」といった所でしょうか(笑)。




おすすめ度:☆(下ネタにより減点必至(笑))



2000.10.18 人に才能あり

「リプリー」

監督:アンソニー・ミンゲラ
主演:マット・デイモン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウ

鑑賞日:2000.9.10



 パトリシア・ハイスミス原作ですが、これをサスペンス映画だと思って見るとイタイ目に会うこと必至です。原作が映画に向かないのか、それとも文芸映画調の演出のおかげか……とにかくサスペンスらしい緊張感はほぼ皆無です。
 何と言いましょうか……主人公トム・リプリーは劇中にていくつかの犯罪を犯すわけですが、それも含めて彼の行動には何の計画性もなく、単に行き当たりばったりに動いているに過ぎません。「リプリー氏の才能」という原題がついていますが、まさにこのタイトル通り、彼が作中で語った3つの才能――サインの偽造、ウソをつく事、モノマネをすること――それらを無計画にだらだらと繰り返しているだけなのですね。彼はこれらの才能を駆使して、中盤で殺されてしまうジュード・ロウになり代わるわけですが、案外あっさりと皆信じ込んでしまうので、なんだか拍子抜けです。しかも、徐々にボロが出始めるごとにまたまた無計画な犯罪でそれを糊塗しようとするわけですから……なんつうか、思いっきりしろうとの犯罪なんですよねえ……(爆)
 まあそのことに自覚的といいますか、映画自体もサスペンス的な持ち味を強調するのではなく、文芸映画風に上品な描写を心がけています。とは言え、先程も述べたようにトム・リプリーの犯罪はお粗末な素人仕事ですから、彼が犯罪を重ねてドツボにはまっていったところで、彼の深い嘆きは伝わっては来ないのでありました。合掌。




おすすめ度:☆☆(取り敢えず雰囲気はまずまず)

 


鑑賞順リストへトップページに戻る