-cinema diary-

2002年1月の映画日記(その3)


 

2002.1.24 夢にまで見た

「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」

監督・脚本:金子修介
特撮:神谷誠
主演:新山千春、宇崎竜童、小林正寛、他

鑑賞日:2002.1.17

公式サイト:http://www.godzilla.co.jp/g2002/


 昭和29年、東京湾から上陸した一匹の巨大生物「ゴジラ」は、戦争の痛手から立ち直りつつあった日本に再び戦禍をもたらした。ゴジラは設立されて間もない防衛隊によって退治され、以後防衛隊は対ゴジラ防衛のための軍隊組織として増強されていく事になる。
 それから50年後。TVレポーター・立花由里(新山千春)は、日本各地で発生する群発地震などの異常現象を追っていた。「護国聖獣傳記」という文献によれば、かつて日本を守っていた神獣たちが日本各地に眠っているとされており、異常現象が起きているのはいずれもその該当地だった。
 そんな折、グアム近海でアメリカの原子力潜水艦が沈没し、調査に出向いた防衛隊の調査艇がゴジラらしき生物を発見する。防衛隊がゴジラ対策に揺れる中、ついに50年ぶりに日本に上陸したゴジラ。
 やがてゴジラの侵攻を阻止すべく、日本各地で神獣たちが覚醒を果たす。怪獣たちが激突する中で、由里の父親である立花准将(宇崎竜童)は、打倒ゴジラのための決死の作戦を決行する……。


    *    *    *


※注意!ネタバレを含みます?※

 なんかもう、語り始めると長くなるだけなんですけどね……(笑)
 ゴジラと言えば、昭和29年の第一作こそモンスターパニック映画の古典中の古典とされる名作ですが、近年のシリーズは素人目にもかなりへたれた内容でありました(笑)
 その一方で、華麗なる復活を果たしたのが「ガメラ」シリーズ。ゴジラの苦戦をよそに内容的に非常に充実した作品になっていて、いっその事「ガメラ」のスタッフで「ゴジラ」を作ればいいのに、などとお気楽に考えていたところ、なんとそれがマジで実現してしまったのが本作「大怪獣総攻撃」なのでした(笑)
 そうだよ! オレたちが見たかったのはこういうゴジラなんだよぅーーーーー!



 ……っと、取り乱してすいませんでした(笑) そんなこんなで、今回はかなり恥も外聞もなく誉め倒します(笑)
 「ゴジラ」もこの作品で25作目と言いますから、かなりの長期シリーズになってしまいましたね。ここまで繰り返すとマンネリズムもいい所なのですが……。
 そもそも「ゴジラ」は「007」や「男はつらいよ」のように、同一の主人公で無数のエピソードが作れるような設定ではありません。1回こっきりのモンスターパニック映画だったのに、安易に続編を作り続ける中で、いつかゴジラは正義の味方になってしまいました。対戦相手の怪獣を宇宙から呼んでしまったために、話の流れから地球を守らざるを得なくなっちゃんたんですね(笑)
 で、平成になって復活した新シリーズでは第1作以外の作品はすべて「無かった事」にして、「ゴジラ=悪役」という図式を明確にアピールしていました。でも結局は、人間がメカ怪獣に乗り込んで「悪役」ゴジラと戦うという、よく分からない展開に……(苦笑)
 で、その平成ゴジラ完結後に東宝が打ち出した新路線が、「1作ごとにパラレルワールドにする」というものでした。基本的に第1作目の最初の東京上陸のみを作中の歴史事実として踏まえ、後のシリーズはやっぱり「なかった事」になってしまっているんですね。もちろん、平成シリーズも跡形もなく消えてます(笑)



 その「パラレルワールド」もので見られる特徴のひとつが、「1954年にゴジラに襲われた事によって、実際の歴史とは違う方向にいってしまった日本」という「IF」の世界が描かれてるという事でしょうか。前作「ゴジラ×メガギラス」では大阪が首都になってたそうですし(つまり見てないんですけど(笑))、本作「大怪獣総攻撃」では、第1作で活躍していた「防衛隊」という、自衛隊とは微妙に異なる組織が存在している日本が描写されています。要するに、昔の東宝怪獣映画にさんざん出てきた「地球防衛軍」とかいうような名称のアレですな(笑)
 その上で、本作ではゴジラの正体に関して、実に斬新なアプローチがなされています。
 本作のゴジラは、なんと「太平洋戦争で犠牲になった兵士たちの亡霊」である、とされているのです。その上で、「日本人に戦争の記憶を呼び起こすために」日本を襲うのだとか。
 元々1954年版「ゴジラ」自体、「戦争の恐怖」を具現化したモンスターである、というニュアンスもありましたので、今回はそれを具体的な設定として明確化したのだ、という事なのでしょう。ともあれ、これで何故日本ばっかり怪獣の標的になるんじゃい、という素朴かつ重大な疑問がはっきりと明らかにされたのでした。
 さらに怖いのは、ゴジラと核・放射能との関係。「放射能で巨大化」云々は設定としては忘れられているんですけど……ゴジラが白熱光線を吐くとどーんとキノコ雲が舞い上がるというありさまですから、はっきり言って怖すぎます(爆) ゴジラ、なんか地味ぃーに焼津港から上陸するんですけども、釣り人の前に出現してさてはハリウッド版ゴッズィーラへのあてつけか?と思ったら、第1作の元ネタとなった第5福竜丸の母港が、ここ焼津だったとかで……こだわってますなぁ。
 その上でそのゴジラと戦う怪獣たち……モスラやキングギドラという怪獣は平成シリーズでもおなじみですが、今回はそんな怪獣たちまで過去の設定をすべて「なかった」事にして、「護国聖獣」という、ヤマタノオロチやコマイヌのルーツとなった日本古来の神獣である、とされているのですねぇ……そんなバカな、って感じですけど(笑)
 一応書いておきますと、「婆羅護吽」「最珠羅」「魏怒羅」だそうです。暴走族とか言っちゃダメです(笑)
 ま、バラゴンは実際にコマイヌをモチーフにデザインされてたそうですし、キングギドラがヤマタノオロチだといわれれば、そうかと納得するしかないんですけど(笑) ……それにしてもあのキングギドラを日本古来の土着の怪獣(千年竜王魏怒羅=キングギドラだそうです)にしてしまうなんて、誰が考えますか、誰が(笑)
(それにモスラは一体何だってんでしょうか(笑) 実際のところ、最初に予定されていたのはアンギラスやバランという、もっと地味な怪獣だったそうですけど、やはり地味であるがゆえに変更になったそうです(笑))
 そんなこんなで、「怨念」ゆえに日本を襲うゴジラと、「護国聖獣」として「やまと」を護る怪獣たちとの、果てのない過酷なバトルが展開されるわけです。
 ……ううむ、なんとも燃える展開ではないですか! 過去のシリーズでは「怪獣対決」というシチュエーションを満たすために、「偶然出会った怪獣達が、持ち前の闘争本能ゆえになんとなく戦う」という主体性のまったく存在しない、かなり苦しい理由付けがなされたりしていたわけで(笑)、本作のように、強い必然性をもって怪獣達が戦う、というのはもしかしたら長いゴジラシリーズで初めての事かも知れません(笑)
 何せ、神獣達が守るのは「やまと」という「クニ」であって、日本という国家や日本人ではありません。つまりこの壮絶なバトルを前に、都市や人間が蹂躙されようとも、人間様には為すすべもないのですよ!
 まさに「大怪獣総攻撃」! 情け容赦のないバトルロイヤル状態であります。うーむ、これはすごいぞ! オレ達が見たかったゴジラは(以下省略)



 ま、人間になすすべはないとか言いながら、先述のように「防衛隊」という組織がありますので、決してホントに何もなすすべがない、というものでもないんですけど(笑)
 この防衛隊という組織、作中ではきっぱりと「軍隊」として描写されております。怪獣と戦うに足る組織として描写されているわけですが、決して対ゴジラのためにスーパーXやらメカゴジラやらモゲラを建造してしまった「Gフォース」とかいうSFちっくかつマンガくさい組織とは一線を画すると言う事でしょうね(笑)
 特にこの防衛隊の存在が、ゴジラ対策に尽力する人間達のドラマを生み出しているわけで、本作を決して怪獣が暴れ回っているだけの映画にはしていません。モンスターパニック映画というのはモンスターだけではなく、パニックしている人間達を描写して初めて成立するものなのだ、という……そういう映画としてみればごく当たり前のことが、この「ゴジラ」でもようやくマトモに実現するようになりました。いやあ、いい時代になりました(笑)



 さて、ここまでちぎっては投げちぎっては投げ、というくらいに誉めちぎってきた(どんなのやねん)ASDさんですが、実は文句がないわけではないのですよ(笑)
 最大の不満は、ゴジラが結局東京にたどり着かなかった、という事なのです。
 ゴジラが「亡霊」であり、怨念ゆえに東京を目指しているのであれば、その怨念が東京を蹂躙しなくてどうする、と思うんですよね(物騒な……)
 ま、それを実際にやってしまうと、「亡霊」云々という要素にもう少し具体的に踏み込んで、「戦争」と「日本人」の関係云々という難しくも微妙なテーマを追求しなければいけなくなりますので……そうなると「娯楽」の域をテーマ的に踏み越えてしまいますので、怨念の暴走を未然で防いだのはエンタテインメント映画としては正解だったのかも知れません。けども、やっぱりそういう「描かれざるカタルシス」を、ついつい期待してはしまいます。
 あとは、「ガメラ」シリーズでも感じた事ですが……人間側の対応がかなりリアルに描き込まれている割に、お話としての分かりやすさを優先しているのかディディールが結構省略されているような気がするんですよねー。まあ何と言いますか、お子様のお客様を意識して難しい話は避けた、という感じで。
 「護国三聖獣」に関して、もう少し突っ込んだ考察を見せて欲しかったですし、ゴジラの正体に関しても、作中でもうちょっと密度の高い論議が為されていても良いような気がします。
 ただ、その辺をやり過ぎるとただマニアックなだけの映画になりかねませんけどね……ううむ、それを呟くASDがマニアックなんだよ、というツッコミもあるかと思いますが(笑)
 あともう一つツッコミたい要素があるんですけど……ま、それはここでは触れないでおきます。この文章は、ゴジラを誉めちぎるのが目的なので(笑)



 あー、そうそう。特撮映画なのに特撮のデキに関して一言も触れてませんでしたね(笑)
 着ぐるみの怪獣がミニチュアの街並を蹂躙する、という昔ながらの手法で撮られている本作ですが……長年培われてきた東宝の技術と、「ガメラ」で新たに考え出されたアイデア、そして近年のCG技術がかなり高度に融合されている感じで、和製SFX映画としては文句のつけようのないレベルに達している、と言えるのではないでしょうか。
 まあ、ミニチュアだと分かってしまうのはしょうがないのですが、チャチすぎて興ざめ、という事はないと思います(劇場の大画面で見たから? いやいや、大画面にも耐えたという事か?)。モスラやギドラなど羽根のある怪獣が、ちゃんと飛んでみえるというのは何げに画期的な事でありますので(爆)



 ……で、こんだけ舞い上がって誉めちぎっているASDさんですが、どうもネット上の評価をぼんやりと見ている限りでは、「こんなのゴジラじゃないぞ!」という意見がどうも強いみたいです……うーむ、そ、そうなんですか?(弱気)
 ただ、過去のゴジラシリーズ……というのは平成の旧シリーズのことですけど、それが内容的に成功しているかというと疑問符がつくのも事実ですし、近作では興行そのものも芳しくない状態が続いてますし(それゆえに、「ハム太郎」と併映なんていう事になるんですけどね……ハム太郎がオマケのように見えて実質あちらが本命でしたし)、そういう「迷える」ゴジラシリーズの中では、近年まれに見る、超強力なカンフル剤になりうる作品だったんじゃないかなー、と思います。
 そもそも、オールガメラスタッフという時点で、「ゴジラ」じゃないのは目にみているような気もしますが(爆)



オススメ度:☆☆☆☆(細部のツメが甘いので−1)
ASDさんの個人的満足度:☆☆☆☆☆……☆?(爆)



 


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