-cinema diary-

2002年6月の映画日記(その1)


 

2002.6.30 ちからわざ

「ベン・ハー」

監督:ウィリアム・ワイラー
原作:ルー・ウォーレス
主演:チャールトン・ヘストン、スティーヴン・ボイド、ジャック・ホーキンス、ハイヤ・ハラリート

鑑賞日:2002.4.21

紹介ページ:http://www.cinemabox.com/ben_hur/



 ローマ帝国時代。エルサレムの名家に生まれ育った青年ベン・ハー(チャールトン・ヘストン)は、ローマ人の幼なじみであるメッサラ(スティーヴン・ボイド)と再会を果たす。ローマ軍の指揮官としてエルサレムにやってきたメッサラは、反乱分子狩りの手助けをベン・ハーに求めるが、同族を裏切れないベン・ハーはこれを断る。ふとした事故をきっかけに、メッサラはベン・ハーとその家族を反逆罪で逮捕、ベン・ハーは奴隷としてガレー船に送られてしまう。
 その後様々な経緯を経てエルサレムへの帰還を果たしたベン・ハーはメッサラへの復讐に燃えていたが、一人の青年との出会いが彼の心を変えていく。その青年の名を、イエスと言った……。

    *    *    *


 DVDにて鑑賞。
 先日「猿の惑星」を見ましたので、チャールトン・ヘストン繋がりで鑑賞しました。しかし、とにかく長い映画でした……(笑)
 まあ、これより上映時間そのものの長い映画もあるんでしょうが……調子にのってチャールトン・ヘストンによる解説音声、1時間のメイキングをぶっつづけで鑑賞してしまったんですよ。いやー、疲れたのなんのって(笑)
 かなり古い映画ですが、画像は丁寧にレストアされていて、かなり美麗でありました。5.1chサラウンドも無理のない感じで……って、これでは映画の感想ではなくてDVDの感想ではないですかっ(笑)
 ま、「ベン・ハー」と言えば誰に言わせても同じような感想しか出てこないんじゃないかと思いますが、とにかくその物量作戦には圧倒される事必至でした(ホントありがちなコメント……(笑))
 大規模な群集シーンなど、このスケール感は今どきの映画では絶対に出せないでしょう! 古き良きハリウッド万歳! ……と書いておけば間違い無いんでしょうが、まあ古い映画だけに画づくりはやっぱ古めかしい感じです(当たり前といえば当たり前)。
 CGもバリバリの「グラディエーター」なんか、必ずと言っていいほどこの「ベン・ハー」と比較されがちなんですが、実際見てみるとこの映画でも完全に物量で押し切っているのではなしに、意外と妥協している点は多かったりするんですよ(笑)
 例えばガレー船による海戦シーンなんかは、割り切ってミニチュアで撮影されています。地平線の彼方まで続く大群集も、実は半分から向こうはマットペイント(つまり手描きの絵)だったりします(笑) その辺りは、大群集をCGで描いているグラディエーターだって、決して馬鹿にしたものじゃないんですよ(笑)
 むしろ、CGでちょいちょいと描けない分、ものすごく苦労しているなぁ、というようなシーンがいくつもありました。そういう意味では、有名な戦車レースのシーンなど、確かにその迫力には圧倒されるばかりです。何せ、馬も戦車も観客もレース場も、全部実際に揃えて、実際にレースさせるという……冷静に考えたらなんつうムチャな事を、というようなめちゃくちゃな事をやっているのでありました(笑)



 ところで、半分DVDの感想になっちゃったのでメイキングにも触れておきます。
 この「ベン・ハー」という作品、そもそもこの映画がオリジナルではありません。かつては舞台劇として人気を集め、サイレント映画の頃にも一度映画化されています。つまり今回のこの映画は、リメイク版なのですね。
 この作品も結構ムチャでしたが、サイレント映画版のベン・ハーは実はもっともっとムチャだと言うことが、このメイキングを見て発覚しました(爆)
 例えば戦車レース。実際に戦車を走らせたのはこのカラー版と一緒ですが、このシーンでは実際にクラッシュ事故が起きてまして……これが本編にそのまんま収録されていたりします(爆)
 さらに圧巻なのがガレー船。カラー版ではミニチュアでしたが、サイレント版ではなんと本物を建造して海に浮かべたんだそうです(爆)
 これが合戦のシーンで実際に火事を起こして、そのガレー船はマジに沈没……。エキストラの役者には、仕事欲しさに泳げないのに泳げると言い張ってたヤツが何人もいて、犠牲者続出のとんでもない事態に発展したそうです(まさか死人は出てないと思いますが……)
 しかもこの沈没シーンまでもが、本編にしっかりと収められているというから、恐ろしいではありませんか……(爆)
 ううむ、何だか俄然サイレント版にも興味が出てきましたよ! ……でもどっかにビデオとかあるんでしょうか? 探すの面倒そうだなー(爆)



オススメ度:☆☆☆(ドキュメンタリーも面白いですよ)




2002.6.30 はた迷惑?

「ファイナル・デスティネーション」

監督:ジェームズ・ウォン
出演:デヴォン・サワ、アリ・ラーター、カー・スミス、クリステン・クローク、ダニエル・ローバック、他

鑑賞日:2002.4.21

公式サイト:http://www.gaga.ne.jp/final/


 パリへと修学旅行へ行く予定だった高校生アレックス(デヴォン・サワ)は、離陸直前に飛行機が墜落する予知夢を見てしまう。そして実際に飛行機は墜落し、助かったのはアレックス他数名だけだった。
 事故のショックから立ち直ろうとする中、一緒に難を逃れたはずの友人トッドが不審死を遂げ、それを皮切りに助かった仲間が一人ずつ死んでいく。いったんは逃れたはずの「死の運命」が、彼らを追いかけてきたのだ……。


    *    *    *


 WOWOWにて鑑賞。
 なんかこう、あらすじを見て誰もが思うんでしょうけど……そもそも「予知夢」ってなんやねん! という部分からしてツッコミが回避不能ですよね(笑) その辺り、微妙にうさんくさいお話でありました(笑)
 まああらすじを読むとどんな映画やねん、と思ってしまうのですが、現実的には「スクリーム」なんかの学園ホラーの系統だと解釈すれば、分かりやすいのではないかと思います。高校生達にひたひたと死の手が迫る……という筋書きがまんま「スクリーム」っぽい感じでした(笑)
 ただ、肝心の殺人鬼が、「死の運命」とかいう姿なき最強の悪役なだけに、一人ずつやられていくシーンの怖さはハンパじゃなかったです(笑) 実際、単なる偶然とか事故とかいう以上に「何か」が彼らを狙っているさまが確かに描かれています。まあ確かに胡散くさいのは否めないのですが(笑)、ネタのいかがわしさを逆手にとった絶体絶命っぷりが、なかなか侮れない一作でありました。



 以下、細かいツッコミ。
 この作品、要するに本来死ぬべきだった人間が死ななかった事から、後になって不可解な事故で彼らが死んでいく……という、「運命」という不可避なシロモノと人間との対決っつうのがポイントになっているわけですが。
 しかしよくよく考えてみたらですよ? 例えば彼らはトラックに轢かれたり、落下してきた看板の下敷きになったりしているわけで……。本来飛行機事故で死ぬはずだった彼らが死ぬ分にはまあどんな死に方をしようが勝手なんでしょうけど、トラック運転手には交通事故の責任が付きまとうわけですし、看板が落ちてきたとなれば、やっぱり誰かがその事故の責任を取らなくてはいけないわけで……。
 予知夢でズルをした連中を地の果てまで追いかけていく「死の運命」さんの努力は感服ものでありますが、運命云々という話をするならば、あんまり周囲の人間の運命まで変えるような、余計な迷惑は避けて欲しいなぁ、と思ってみたり……(笑)



オススメ度:☆☆☆




2002.6.30 そこが何処なのか私は知っている

「猿の惑星」

監督:フランクリン・J・シャフナー
主演:チャールトン・ヘストン、キム・ハンター、ロディ・マクドウォール

鑑賞日:2002.4.16


※一応ネタバレありということで※

 地球を飛び立ち外宇宙へと向かう探査船は、トラブルに見舞われて未知の惑星に不時着する。宇宙飛行士のテイラー(チャールトン・ヘストン)がそこで見たのは、人類によく似た原始的な種族と、彼らをけもの同然に扱う、文明を持った猿達だった。
 そんな猿たちに囚われの身となったテイラー。「知能を持った人間」である彼の存在は、猿たちの間に波紋を呼ぶ。やがて猿たちの元を逃げ出したテイラーが目の当たりにした、驚愕の真相とは……。


    *    *    *


 DVDにて鑑賞。
 驚愕の真相とはっ! とか言って、そんなもん誰でも知ってますよねぇ(笑) もちろん、今の今まで未見のままだったASDも知ってました(笑)
 1968年製作ですから、まさに古典であります。昨年にはティム・バートンによるリメイク版も公開され、非難轟々でありましたが(笑)、そのオリジナル版っつうのがどんな代物なのかと言いますと……。
 ちなみにリメイク版の感想は、こちらを参照。
 これを見てまず引っかかったのは、「猿たちが英語を話している」つう事でしょうかね。しかも読み書きまで英語そのまんま。普通そこで何か気付くでしょ、やっぱり(笑)
 リメイク版でも猿たちは英語を話してましたけど、さすがに読み書きまではそうではありませんでしたので、まだマシだったのですが……ティム・バートンなのでSFではなくファンタジーと解釈すれば、まだ納得いかない事もありませんでしたし。
 そもそもバートン版は、猿たちの街も森の中?にあったりして、あくまでも「進化した猿」という側面を強調していたのですが、このオリジナル版の猿は、顔や姿が猿っぽいだけで、文明の姿などはほとんど猿らしさは無かったりします。
 その反面、人間たちの方が、言葉も喋れないけもの扱いなんですよね。バートン版は人間たちも喋れましたし、あくまでも「進化した猿、後退した人間」というノリをリアルに描いていたのでした。
 つまり、このオリジナル版「猿の惑星」って、SFとしては全然リアルではないのですよ(笑) この映画が作られた頃はこれで充分リアルだったのかも知れませんが、あの「2001年宇宙の旅」が同年代に公開されている事を考えれば、リアルでないのはわざとなんだと思います。猿と人間の立場の逆転というのを意図的に強調する事で、そこから浮かび上がってくるテーマ性や批評性といった部分に力をいれた作品だったのではないでしょうか。
 例えば中盤における「猿はヒトから進化した」という科学的な考えが否定する宗教裁判の下りなど、何を言おうとしているのか……という事ですよねぇ。
 他にも、猿たちの元から脱出すべく奮闘する主人公テイラーも、実はあんまり主人公らしくなかったりします。彼は「猿の惑星」という異世界に一人放り込まれたヒーローであると同時に、その言動の端々に人間のエゴのようなものが見え隠れしているのでありました。前半で未開の人間たちを発見した時に「この文明レベルなら俺たちで征服出来る」みたいなセリフを吐いていますし、後半ヒーロー的な立ち回りで猿たちの陰謀を暴いてみせたと思ったら、その後の脱出劇では、荒事も厭わない冷酷な側面も見せるわけで……。
 人間をけもの同然に粗末に扱う猿たちを悪役然と見せる一方で、その人間であるテイラーもヒーローとは言い難く……そんな風にもやもやしているところに、あの衝撃のラストがばばーんとつきつけられるわけですからねぇ(笑)
 何も知らずに見てたら、さぞびっくりしてたことでしょうなぁ……。



オススメ度:☆☆☆(オチが分かっててもそれなりに楽しめます)



 


鑑賞順リストへトップページに戻る