-cinema diary-

2002年7月の映画日記(その3)


 

2002.7.18 ミスキャスト

「コラテラル・ダメージ」

監督:アンドリュー・デイビス
主演:アーノルド・シュワルツェネッガー、フランチェスカ・ネリー、ジョン・レグイザモ、ジョン・タトゥーロ、他

鑑賞日:2002.5.24

鑑賞日:http://www.warnerbros.co.jp/collateraldamage/


 コロンビア・ゲリラによる無差別爆弾テロ事件が発生し、消防士のブルーワー(アーノルド・シュワルツェネッガー)は愛する妻子を失ってしまう。
 だがコロンビア問題をこじれさせたくないアメリカ政府は、犯人の追求どころかゲリラ側との和平交渉を検討しはじめる。復讐に燃えるブルーワーは政府があてにならない事を知ると、単身コロンビアに潜伏を試みるのだったが……。


    *    *    *


 例の同時多発テロの影響で公開延期になっていた、シュワルツェネッガー主演の最新作でございます。まあ、ネタがネタだけに確かに微妙な内容だったように思いますが……。
 というか、この映画って別にシュワが極悪テロリストに正義の鉄槌を下す!みたいなお馬鹿アクションではないんですよね。テロリストの側にも言い分はあるんだぞ、みたいなニュアンスもありますし……そもそもシュワは超絶スーパーヒーローではなくて普通の人間ですから、胸がすかっとするようなド派手なアクションを展開しているというわけではありません。少なくとも、「エンド・オブ・デイズ」→「シックスデイ」→「コラテラル・ダメージ」と、作を重ねるごとにアクションの過激さという意味ではスケールダウンしているような気が。
 まあ、本作の場合どちらかというとアクションと言うよりは、サスペンスアクション、それもサスペンスの方に比重が多く傾いている感じです。監督も「逃亡者」のアンドリュー・デイビスですし。
 ……で、取り敢えず鑑賞して真っ先に思ったのが、

 別に、シュワでなくても……

 という事だったりします。見たあとじゃなくて、見ている最中にすでにそう感じてたんですけど(笑)
 まず、先にも書きましたが本作のシュワはスーパーヒーローではなくて、普通の人だったりします。冒頭で消防士としての活躍もちょろっと描かれてたんですけど……まあ消防服が似合わないとかいう話はさておき、やはり見た感じでは、ヒーローであるという事よりも普通の人としての側面が強調されていたように思います。
 ま、消防士も過酷な仕事ですし、物語の中では爆発物の知識がある事への理由付けにもなってましたが……筋骨隆々たる見た目からして普通には見えない(笑)シュワが演じるには、ちょっと不自然な設定だったかも知れません。
 そういうシュワの使い勝手の難しさについては以前「シックス・デイ」の感想にも書きましたが……本作はその「シュワ=普通の人」という設定で、いろんな意味で損をしているな、と思いました。
 ひとつには、やはりシュワの主演作としては圧倒的に物足りないです。外見からして普通ではないシュワが、普通の人っぽくモタモタと立ち回っているさまはあんまり見ていて痛快とも言い難いですしね。
 第一、いくらシュワとは言え、普通の男が復讐を決意して危険なゲリラ地帯に単身乗り込んでいく、という設定からしてムチャな感じがするじゃないですか(笑) どう考えてもまともな人間のやる事ではありません。ホントにこんな事を考えて実行する人がいたら、そうとうアブナイ人なのではないかな、と思うのですよ(笑)
 そう考えていくとこの作品、やっぱりシュワではないもっと普通っぽい役者さんが主演だった方が良かったんじゃないかなーと思うのですよ。シュワならば簡単に切り抜けられそうな状況でも普通の人ならば絶体絶命でしょうし……アブナイ人云々に関しても、普通っぽい人が妻子の死をきっかけに狂気にとりつかれていって……みたいな描き方の方がよっぽど説得力があったのではないでしょうか。
 そういう諸々に関してシュワの場合、シュワ=ヒーローだからこれでオッケーなんだ、という割と根拠レスな理由付けが、それとなく成り立ってしまうのですねぇ……ううむ。本来はムチャクチャな設定なだけに、その「根拠レスな理由付け」のおかげで逆にものすごく杜撰な印象が……(爆)
 さらには、お話の上では普通の人のはずのシュワなのに、ゲリラに取り囲まれて結局は腕力で切り抜けたりとかいう、ヒーローっぽい部分も見せてくれたりと、実に曖昧でなんですな、これが。
 かと言って、シュワが結局大活躍、大暴れするかと言えば、そうでもないですし……。



 ま、そのあたりがイマイチだからとってこの映画が壮絶なハズレ映画だ、というわけでもないんですけどね(笑)
 アンドリュー・デイビス監督自身、「逃亡者」以降はイマイチな作品が多く、この作品も途中まではうーんどうよこれは?という感じだったのですが、ラストのドンデン返しにはきっちりと驚いてしまったASDでありました(笑)
 結論から言えば、主演がシュワで無ければサスペンスアクションものとして結構イイ感じに仕上がっていたのではないかと思われます。そう、シュワで無ければ……(笑)



オススメ度:☆☆☆(繰り返しますが、シュワだと思わなければそこそこイケるかと)




2002.7.18 姿なき敵

「カプリコン1」

監督・脚本:ピーター・ハイアムズ
主演:エリオット・グールド、ジェームズ・ブローリン、他

鑑賞日:2002.5.21


 有人火星探査船「カプリコン1」の打ち上げ直前、宇宙飛行士達は急に下船を命じられ、ロケットは無人のままに打ち上げられてしまう。
 打ち上げ直前に生命維持装置に欠陥がある事が判明、打ち上げを中止すれば、このところ必要性が疑問視されている宇宙計画にとって、大きなつまづきとなる……そこでNASAは、火星着陸の様子をトリック撮影することで国民を騙そうとしたのだ。脅迫されやむなくこれに従う宇宙飛行士達だったが、実際の宇宙船が地球に帰還せずに大気圏で燃え尽きてしまった事から、彼らもまた抹殺される事になって……。


    *    *    * 


 DVDにて鑑賞。1978年作、ピーター・ハイアムズ監督の出世作です。
 ASD的にはこの監督、結構好きなんですよ。近作ではトボけた出来映えの作品もいくつかないわけではないですけど(爆) そんなASDさんもこの作品は今回が初見だったのですが、もしかしたらこの監督の作品の中では一番面白いんじゃないか、と思ってしまいました(笑)
 まぁ製作年代なりに、全体のテンポとか細々としたリアリティとか、のんびりとしていない事もないのですが(笑)、それを差し引いても結構見ごたえのあるサスペンス映画でした。
 そう、サスペンス映画なんですよ(笑) あらすじを見ればお分かりになる通り、実際には誰も宇宙には行ってませんからね(笑)
 まぁさすがに宇宙飛行士が選抜され訓練されたエリートに見えんとか、トリック撮影がまたまたショボくて見破られるだろあれじゃ!とか思ってみたりとかしない事もないのですが(笑)、まぁそれも年代が年代ですので……(笑)



 お話は一応、宇宙飛行士達の運命やいかに!という部分と、そのNASAの陰謀を追う記者の活躍という二通りから迫っていくのですが……。
 まぁ、今みるとASD的に知ってる役者さんが一人も出てきませんでしたので(O・J・シンプソンは知ってますけど、「知ってる」の意味がちょっと違いますので(爆))、あまり登場人物に感情移入したりという事はなかったです。……とは言え、実際に演出やシナリオの上でも、キャラクタの個性とかドラマ的要素とかはそんなに詳細には追い込まれていないんですよね。
 ですので、余計にこの映画は怖いのですよ。彼らがヒーローっぽく見えない分、抵抗している彼らのヒーロー性よりも、個性なき彼らを簡単に排除しようとする、「権力」つうものの恐ろしさの方がクローズアップされているのですなぁ。
 実際、「敵」に相当する人間達はほとんど顔が見えない人々ばっかりだったりします。後半で実際に執拗に追いかけてくるヘリも黒塗りで操縦している人間の姿はついぞ見えませんし、下りてきた乗員もヘルメットで顔を隠していますし。……それだけに限らず、人ひとり何の前触れもなくいきなり失踪してしまったり、知らない間にクルマに細工されてたり……「誰が」そういう事をしたのか、という事を意図的に見せないようにしているのですなぁ。
 そもそも、この陰謀を実際に仕組んだのは多分NASAだと思うんですけど、その謎を守るべく暗躍する人々の正体もまたさっぱり描かれていなかったりします。誰それが黒幕だったのかとか、そういう事も一切説明されておりません。誰をワルモノ扱い出来るわけでもなく、「権力」つうのはある日突然やってくる、何者でもない、得体の知れない代物なのですよ。
 ううむ……そういう「怖さ」が、この映画の見所だったのかも知れません。



 あと余談ではありますが……この映画で描かれている「宇宙開発はウソだった!」というような話というのは、実はアポロ計画における月着陸のさいにも批判として言われていた事らしいんです。ピーター・ハイアムズはNASAが悪役であるっつう事を隠して、NASAの協力をとりつけてこの映画を撮影していたのですが、シナリオの主旨がバレるや否や即刻拒否されたそうです。まあ当たり前なんですけどね(笑)



おすすめ度:☆☆☆




2002.7.18 ネタバレ警報発令中(笑)

「アザーズ」

監督・脚本:アレハンドロ・アメナバール
製作:トム・クルーズ
主演:ニコール・キッドマン、フィオヌラ・フラナガン、クリストファー・エクルストン、他

鑑賞日:2002.5.14

公式サイト:http://www.others-jp.com/


 1945年。イギリスのとある孤島の村にて、グレース(ニコール・キッドマン)は二人の子供と一緒に暮らしていた。夫は出征したまま未だ帰還せず、子供達は強い日光を浴びてはいけない病弱な身体で、屋敷はいつも分厚いカーテンに覆われていた。
 そんな屋敷に、あらたに三人の使用人がやってくる。それ以後、屋敷の中では奇妙な声や物音が聞こえるようになっていく。異変を訴える子供達を初めは信じなかったグレースだが、やがて彼女自身も、奇妙なものを見かけるようになっていって……。


    *    *    *


 えーっと、この作品オチが命、ネタが命でございますので、あまり余計な事をあれこれ書いていると、ついつい筆が滑ってしまいそうでかなり困ってしまうんですけども(笑)、特にラストのオチ、ASDも以前見た事のある某映画に、ちょっと似ているなぁと思うのですが、そのタイトルをここで書いてしまうとその作品を見たことのある人には大きくネタばれになりますし、「アザーズ」は見てそちらの方は未見、という方にもやはりそちらの映画の方のネタバレになってしまいますので(実は一緒に見に行った友達がそれに該当してました(爆) スマン……)、やっぱりこの作品のストーリーに関しては、あまり多くを語ってはいけないのだなぁ、と思う次第であります。
 ……とまぁ、言いたい事を一文にまとめてみたわけですが(笑)



 「バニラ・スカイ」のリメイク元の作品である「オープン・ユア・アイズ」の監督・脚本を手掛けた、アレハンドロ・バルメナールの最新作でございます。トム・クルーズプロデュースにてハリウッド進出!かと思いきや、実際には単に英語で撮影されたスペイン映画、というノリでありました。画づくりもお話のテンポももろヨーロッパ映画そのまんま。ハリウッド製大作娯楽映画ばかり見ている方にはかなりノリが退屈に見えていたかも知れません。ASD的にはこういうのも決して嫌いではないのですけど、一緒に見に行った友人にはビンボくさく見えてイマイチだったそうです(笑)
 ネタバレのことを考えると言うことはほとんどないんですけど、ゴシックホラーということでそのテの雰囲気に関してはもうバリバリでありました。特に音響関係の演出が非常に巧みですので、出来ればサラウンド環境での鑑賞を強くオススメします。テレビの洋画劇場とかでみると、大変に損をしそうな一作だったかも知れません(笑)
 まぁしかし、上にも書きましたがやっぱり某映画に結末が似ているのが気になりましたかねぇ。かなり驚愕のオチではあるのですが、ちょっと飛躍しすぎというか、強引というか……その辺り「バニラスカイ」とも共通してないこともなかったかも。
 ……しかし、冷静になって考えてみりゃ一番物騒なのは主役であるニコール・キッドマンその人なのではないかという気が……(爆)
(あっこれもネタバレか!)



おすすめ度:☆☆☆(ラストで、あの映画が脳裏をかすめなければあと2点はイケてたかも知れないッス……)




2002.7.18 隣人にご注意

「隣のヒットマン」

監督:ジョナサン・リン
主演:ブルース・ウィリス、マシュー・ペリー、マイケル・クラーク・ダンカン、他

鑑賞日:2002.5.14

公式サイト:http://www.foxjapan.com/movies/nineyards/


 歯科医師オズ(マシュー・ペリー)は、妻ソフィ(ロザンナ・アークエット)の父親が作った莫大な借金を背負い、苦しい生活を送っていた。
 そんな折、彼の隣の家に引っ越してきたのは、マフィアの殺し屋ジミー(ブルース・ウィリス)。組織を裏切って追われる身の彼を密告すれば、マフィアから報奨金が出る……ソフィのそんな企みに渋々ながらに、シカゴのマフィア・ヤンニ(ケヴィン・ポラック)に会いに行くオズ。彼はそこでジミーの妻シンシア(ナターシャ・ヘンストリッジ)に出会い、ひとめぼれしてしまうが、ジミーは相棒のフランキー(マイケル・クラーク・ダンカン)と共に、ヤンニを返り討ちにしようと画策していた。彼らの争いに巻き込まれてしまったオズの運命やいかに……。


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 ぶははは。日頃コメディ映画は見ない(と言いつつ結構見ているような気もしますけど(笑))ASDですが、この映画は面白かったです。
 ブルース・ウィリスがコメディに挑戦!ってのが話題だったみたいですけど……まぁ彼は「アルマゲドン」がある意味ギャグでしたし(爆)、タランティーノ作品なんかではコメディちっくな役回りでもありましたので、そんなに違和感はなかったです。だって別にいつものアクション映画とかと、特に演技は変わんないですし(笑)
 ASD的に注目だったのはむしろマシュー・ペリーの方でしょうか。日本では去年あたりからようやく知名度が挙がってきた海外ドラマ「フレンズ」という作品のレギュラーとして、そこそこ有名なはずです(笑) 実際のところこの映画の彼も、その「フレンズ」とちっとも変わらない演技を見せてくれておりました(笑)
 ただそれだけに、吹き替えで見ないとしっくり来ないんですよねぇ……(爆) 「ER」のジョージ・クルーニー=小山裕也なんかは声のイメージにさほど大きな差はないのですが、「フレンズ」でマシュー・ペリーの吹き替えを担当しているのは水島裕なんですよ。ASD的には、「燃えよデブゴン」のサモハン、「スターウォーズ」のルーク・スカイウォーカーと並ぶ水島裕のハマリ役と見ているんですが、マシュー・ペリー本人の声とはかなりイメージが違ってます。それゆえに、オリジナル言語で見た時に違和感が……ううむ、映画マニアとしてはそれなりに悔しい現象なんですけどね。ブルース・ウィリス=樋浦勉もそんなに悪くはないのですが、全体的にその他の皆さんはやはり吹き替えの方が違和感バリバリですし……ううむ、難儀な映画でした(笑)
 ちなみに映画の内容そのものは……まぁ特記事項はこれと言ってありませんので、とにかく楽しんで下さいまし(笑)



おすすめ度:☆☆☆



 


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