〜私と307〜

■307についての考察

我が307との生活は、はやいもので6ヶ月が過ぎようとしている。
そして走行距離も10,000キロ突破が目前に迫っている。
今回は、そう言った意味で客観的にこのクルマを評価したいと思って書かせて頂く。
多少、厳しいことも書くかもしれないが、これも私なりの一つの愛情表現として皆様にはご理解願いたい。
尚、本稿は全て文字のみとなっているが、これはなるべく中身を濃いものにしたいと考え、敢えてそうさせて頂いた。
合わせてご了承願いたい。

それでは早速行ってみよう!

■スタイリング
307が日本で販売が始まって1年経過した。
しかし、このスタイリングは相変わらず新鮮であるように思われる。
全長、全幅、全高の全てにおいて「306」を一回り大きくした「307」であるが、1台あるだけではその大きさは分からないくらいだ。
確かに、”ボテッ”とした印象を時として感じることもある(笑)。
けれども、曲線と直線を巧くミックスしたそのラインは306とはまた違った美しさを放っているのだ。
カタログを見た時点においては今ひとつその美しさを感じるまでには至らなかった多くの人々も、今ではその殆どが実車を体験し、イメージが掴めたことだろう。
ユーザーの意見としてAピラー付近の視界の悪さ(ワイパーの拭き残しと相俟って)を挙げる方が多いが、確かにそのような傾向があるとは思う。
しかしながら、右折時に慎重に運転することを励行すれば特に問題にはならないだろう。
又、私の307はXSだが、ホイールは16インチだ。
走行性能はなかなかいいのだが、ルックス的にやはり15インチがいいのではないかと言う意見は変わらない。
現在のホイールデザインで15インチが選べればベストだと思う(個人的には195/55あたりか)。

尚、大型化したボディに関しては確かに慣れが必要だと思う。
最初からこのクルマを快適に運転出来る方は相当の猛者だろう。
私も3ヶ月目くらいからようやく車幅感覚が掴めるようになった。
しかし、未だに前方感覚は???である(苦笑)。
夜道を走ることが多い方やいまいち自信の無い方はオプションのコーナーポールをお付けになった方が良いだろう。
まぁ、今にして思えば、慣れれば相当な快適さを感じることが出来る。
特に運転席の上下方向の開放感は何もにも代え難いものだと断言出来よう!

■エンジン
このエンジンは結構優秀だ。
私の307はMTである。
以前の「405Mi16」の加速感は一種、爽快だった。
勿論、これは体感速度上でのお話で、スピードはたいしたことはなかった。
だが、そのような加速を”バナナボート”的だ、と評した評論家もいたのも事実。
今回の307ではそのような獰猛さが影を潜めている。
一言で言えば”洗練されている”のだ。
が、それは同時に爽快さが多少スポイルされていることを意味する。
確かに普通の運転で2,000回転以下では軽自動車の後塵を拝することもある。
しかし、それがどのような意味を持つのだろうか?
その気になれば大変迅速、かつ軽快な運転が可能である。
しかも、燃費が良い。
このサイトの「
記録」のコーナーをご覧頂ければお分かりになると思うが、エアコンをガンガンに稼動させた真夏でも10km/Lを割ったことがないのだ!
これは素晴らしいことだと私は思う。
勿論、私の住む街のロケーションを考慮する必要はあろう。
けれども、私が今まで乗り継いだ欧州車(特にゴルフ2/CLI)と比較すれば、その経済性は明らかであり、スポーツ性と経済性を両立させている数少ないエンジンだと断言出来る。
4,000回転を越えると、結構いい感じのエンジン音が聞こえて来る。
しかし、キャビン内は相当の静かさなのだ!

人間の表現は陳腐なものだ。
ましてや、クルマの性能を語る上ではその尺度は相対的な域を出ない。
雑誌等ではこのエンジンの欠点を指摘する声もあるが、私はなかなかどうして素晴らしいモノだと賞賛したい。
ただ、絶対的なトルクはあるほうではない。
また、胸がすくような圧倒的な加速感や暴力的な敏捷性とも無縁であることは認めなければならない。
しかしながら、その分、運転する私たちドライバーが介在する必要性があるとも言える訳であり、この部分がまさにプジョー車の真髄であろうと思う。

■トランスミッション
私の307は5速のMTである。
ストロークは割と長い。
しかし、最初から結構軽かった。
1速から2速が若干重かったが、後はスポスポ入る。
けれども、ミスしてギアがガリガリ言うことも全く無いと言うスグレモノ。
また、このMTの美点はその適応幅の大きさで、5速800回転くらいで走ってもスナッチが殆ど発生しないのである。
スポーツ系のクルマではなかなかこのようには行かないのが普通であろう。
確かに1速から2速はちょっとスポーツドライビングの楽しみを削ぐ印象があり、「クイックシフトリンク」を導入されている方もいると聞く。
ここあたりはプジョー車の伝統なので好き嫌いの分かれる所だろう。
ただ、シフトノブ自体の剛性感はもっと上げて欲しい部分だ。
全体がプラスチック製に近く、握るとナヨナヨしているのだ。
おまけにトップの銀色のメタル調のカバーが外れてしまったことも(笑)。
307はプジョー車のミドルレンジを受け持つ重要なクルマだから、もう少し詰めをしっかりとやって頂きたい所だ。

ATのお話も少々。
307搭載のATは「AL4」だと言うのは皆様ご承知の通り。
そう、プジョーとルノーが共同開発した4速ATだ。
このATは306の最後期から搭載され、307では「ティプトロ機能」も加わった更にリファインされたモノとなっている。
しかしながら、このATはまだまだ改良の余地がある。
確かに2002年後期に登場した307SW等では多少このAT特有の”ギクシャク感”は改良されてはいた。
しかし、まだ満足出来るレベルではないと思う。
ただ、307においては全てをコンピュータ制御しているの関係上、ソフトの書き換えで相当程度改善される可能性があることは付記しておきたい(例えて言えば、「プレステ2」のバグをCDロムのバージョンアップで解消するSONYのやり方と似ている)。
ATでの燃費はMTには勿論かなわない。
私のような田舎町で9〜10キロだろうし、都市部に行けばよくて8キロくらいだろうし、東京の渋滞にはまれば6キロ前後になると思われる。
プジョー車の本当の価値を知りたければ高速道路に出るべきであろう。
その走行性能の素晴らしさとともに低燃費にもきっと貴方は感銘を受けるに違いない。

■ハンドリングとサスペンション
仏車の生命線はハンドリングとサスペンションにある・・・と言うのは昔から言われていることだろう。
307の場合、ステアリングは若干重いように感じられるが、舵角はまさに中庸で節度あるものだ。
ハンドル径はやや大きめだが、それなりに安心感がある。
パワステも自然で本当にこれは賞賛に値する。
一方、足回りはドイツ車の重厚なそれとは違い、イタ車のようなトリッキーな感じとも違う。
私はそのような”えも言われぬ”感覚をかつて「405」で味わった。
言い古された”猫足”も「まさにその通り!」と合点したものだ。
では、そのような仏車の古き良き伝統がこの307にもしっかり継承されているのだろうか?
答えは「ある程度」である。
確かにその足回りはドイツ車ではない。
けれども、限りなく”ドイツ的”なものに変化して来ているように感じられる。
どっしりした安定性は無い。
また、ラインを思い通りにトレース出来るクイックさもそれほど無い。
しかしながら、「これぞ、プジョー」としか言いようがない味付けが確かに感じられるのだ。
その”味付け”の正体は何なのか?
それは皆様の批判覚悟で申し上げるならば「不完全なドイツ化」であるかも知れない。

私は思う。
かつて405を運転した(特にSRI)時に感じた”猫足”はこれではなかった、と。
そう、当時からすればプジョー車は変わったと言わざるを得ない。
特に307ではリヤサスペンションのトレーリングアームを捨ててしまった。
これは剛性の強化に他ならない。
つまり、プジョーはグローバル化を推進しているのだ。
私は307は大好きである。
しかし、唯一納得出来ないのがリヤサスペンションの動きなのだ。
簡単に言えば”バタバタ”する感じが否めない。
これは本当に惜しい。
我侭が許されるものならば、リヤを以前のモノに交換したいとずっと考えている私なのである。
そう言う観点から見れば、プジョーも無国籍化した、と言えるかも知れない。
これはプジョー車を古くから知る者にとってはある意味残念なことであるが、会社を経営する側から考えれば”個体の完成度が上がった”こととなり大いに歓迎されることなのだ。
その証拠がまさに昨今の日本市場だろう。
過去のプジョー車の乗り味はどうであれ、この国の人々の厳しい選択眼に相当数が選ばれている訳だから。

■インテリア
インテリアの質感と信頼性は大幅に向上した。
これは万人が認めるところだろう。
特にダッシュボードのたてつけは306の時代より飛躍的によくなっていると思う。
プジョー車の無国籍化はここでも強く感じられる。
しかし、まだまだドイツ車には及ばないのも事実。
プジョー本社としては今後、この部分に対してまだまだクオリティを上げて来ることだろう。
まぁ、私個人としてはこれくらいでも本当に十分であるのだけれども。
要するにプジョーはもっともっと多くの顧客が欲しいのである。
したがって、その目的達成の為に邁進することが当面の目標なのだろう(普通のフランス車乗りにとっては今のレベルも相当満足出来るものである)。
また、エンジン音やロードノイズもこれまでのフランス車のイメージからは考えられないほど静かである。
本当にこの部分は特筆モノだ。

ただ、一つだけ申し上げたい。
307XSのシートは大きいし(基本的に607と同じ)、クッションが少々固めでなかなか気に入っている。
欲を言えばもう5センチ座面の長さが長ければ言うことないのだが・・・・。
まぁ、これは我慢しよう。
けれども、もう少しシート内の”あんこ”が欲しいのだ。
つまり、シート内部材をもう少し詰め込んで頂きたいのである。
試しに貴方が307にお乗りになった時に、シートの横をグッと押さえてみて頂きたい。
必ず、力なく皺が寄るはずだ。
”あんこ”がぎっちり入っていればこのようなことは起こらないのではないだろうか。
私はどうもココ辺りに307のコストダウンの影が見え隠れしているように思えてならないのである。

■エアコンと電装関係
プジョーは相当307については注力したらしい。
その証拠に新機軸が沢山搭載されている。
どこかの誰かが仰ったが”故障率が高いご自慢の最新装備”なのだ。
オートワイパー、オートライト、オートエアコン・・・・枚挙に暇がない。
私は前者2つは全く使用していないが、オートエアコンだけは重宝している。
確かに僅かなぎこちなさはあるにしても、基本的な性能はまずまずであると言って良い。
私はこの6年間、夏場のVITAのエアコンの効きの悪さに辟易していたが、今シーズンから見事に解放されたのだ!
電装関係においてもバッテリー上がりは言うまでもなく、ライトやヒューズの交換は一度もない。
オ−ディオもノートラブルだ。

■安全装置
307は安全装置はてんこ盛りである。
両席エアバッグ、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグ(前後席)とエアバッグだけで8個もあるのだ!
加えてABS、安全ボディ(本国ではESP・横滑り防止装置もある)、イモビライザー(盗難防止装置)と、無いのは環境対策エンジンくらいだろう。
不幸にも我が307では”
エアバッグ誤動作”事件があったが、初期生産車両としてはある意味止むを得ないことだっただろうし、何よりその後のBLとPJの対応の素晴らしさに逆に感動したくらいだ。
確かにエアバッグが誤動作を起こし、不意に破裂してしまったら女性の方やお年寄りであれば大きな危険となってしまうかも知れない。
けれども、もう一つの考え方もあって、そう言う事態にクルマの全ての動作が停止してしまえば、それ以上の大きな事故が起こることも防げるかも知れないのだ。
ここ辺りのことは皆様様々な異論もあろうかとは思う。
しかし、私なりに納得しているのが正直なところだ。

■総評
私はプジョー車が大好きである。
しかし、今回は辛口に書かせて頂いた。
では、このような私が307に対して何点を付けるのだろうか?
答えは85点と言うところだろう。
基本的に(試験でもそうだが)ある程度の能力は70点以上であればOKだと思う。
したがって、80点を越えると言うことはたかだか240万円くらいのクルマにおいては結構なハイポイントであると言えよう。
プジョー車がこのような高得点を私に付けさせる理由・・・それは次の3つによるものだろう。
(1)自動車と対話出来るクルマ作りがなされている、いやそう感じさせること。
(2)基本性能のバランスがとれていること。
(3)エクステリア、インテリアが素晴らしいこと。シートも大変良いこと。
あと、付け加えるならば最近の信頼性の高さも挙げなければならない。
勿論、様々な皆様のトラブルをあちらこちらで散見する。
しかし、昔と比較するにその質量ともに激減しているのは間違いないと思う。

最近は307シリーズも充実して来た。
これまでの2,000ccの「XS」「XSI」「XT」に加えて、1,600ccの「スタイル」をはじめ、7席可能のSW、5席(ハッチバックと同じ)の「ブレーク」、そして来夏くらい発売されるであろう「cc」と選択肢が大きく広がって来ている。
ざっくばらんに言って、どれを選ばれても後悔はされないと思う。
ただ、購入される前に必ずご自分で納得されることが大切かと考える。
その為には、BLにおいて試乗されることが不可欠だろう。
また、307シリーズは勿論、206シリーズも出来れば比較試乗されればベストだ。
クルマは個人個人の感覚が微妙に異なる乗り物なので、購入前の試乗検討は、やってやり過ぎることは絶対にないのだ!

皆様のいろいろなご意見、ご感想はいつでも
掲示板メールにて受け付けている。
何かあったらお気軽に書き込みして頂ければ望外の幸せである。

(2002/10/18)

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