第5章 わが国の消費課税
1.消費課税の現状
消費課税(国税)の概要
税 目 等 | 課 税 対 象 | 平成13年度 予 算 額 |
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構成比 | ||||||
国税収入計 | --- | 億円 527,675 |
% 100.0 |
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消費課税計 | --- | 183,665 | 34.8 | |||
消費税 | 資産の譲渡等 | 101,290 | 19.2 | |||
個別間接税計 | --- | 82,375 | 15.6 | |||
酒 税 | 酒 類 | 18,230 | 3.5 | |||
たばこ税等 | 製造たばこ | 11,469 | 2.2 | |||
揮発油税等 | 自動車燃料等(揮発油等) | 31,680 | 6.0 | |||
自動車重量税 | 検査自動車等 | 11,253 | 2.1 | |||
航空機燃料税 | 航空機燃料 | 1,064 | 0.2 | |||
電源開発促進税 | 一般電気事業者の販売電気 | 3,799 | 0.7 | |||
石 油 税 | 原 油 等 | 4,880 | 0.9 |
(備考)1 |
.上記の予算額には、一般会計分(507,270億円)の他、特別会計分を含む。 |
2 | .上記以外に「消費課税」に含まれるものとして、関税、とん税等があり、これら(税収8,870億円)を加えた場合の国税収入に占める消費課税の割合は36.5%となる。 |
出所:財務省ホームページhttp://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/100.htm
(参考)国内総生産に占める消費課税・付加価値税(消費税)の割合(%) |
日 本 | イギリス | ド イ ツ | フランス | アメリカ | |
消 費 課 税 | 5.2 | 12.3 | 10.3 | 12.1 | 4.6 |
付加価値税等 | 2.4 | 6.7 | 6.6 | 7.9 | 2.2 |
(備考 | 日本は平成13年度予算ベース。日本以外はOECD「REVENUE STATISTICS 1965-1999」により作成。 |
出所:財務省ホームページhttp://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/101.htm
2.消費税の仕組み
(1)課税ベースの広い間接税の諸類型
・多段階課税
付加価値税 前段階税額控除方式(インボイス方式、伝票方式)
仕入控除方式(アカウント方式,帳簿方式)
取引高税
・単段階課税
小売売上税
卸売売上税
製造業者売上税
(2)税額の計算方法
取引高税の仕組み
消費税の仕組み(橋本恭之『税制改革シミュレーション入門』税務経理協会p56、図3−3参照)
納税額=税込み売上額×5/105−税込み仕入額×5/105
免税による益税の発生(橋本恭之『税制改革シミュレーション入門』税務経理協会p58、図3−3参照)
(3)非課税措置
国 名 | フ ラ ン ス | ド イ ツ | イ ギ リ ス | EC第6次指令 | |
施 行 | 1968年 | 1968年 | 1973年 | 1977年 | |
非 課 税 (注) |
土地の譲渡(建築用地を除く。ただし、個人が取得する住宅建築用地は非課税。)・賃貸、中古建物の譲渡(不動産業者の譲渡を除く。)、住宅の賃貸、金融・保険、医療、教育、郵便等 |
土地の譲渡・賃貸、建物の譲渡・賃貸、金融・保険、医療、教育、郵便等 |
土地の譲渡・賃貸、建物の譲渡・賃貸、金融・保険、医療、教育、郵便等 |
土地の譲渡(建築用地を除く。)・賃貸、中古建物の譲渡、建物の賃貸、金融・保険、医療、教育、郵便等 |
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税 率 |
標準税率 |
19.6% | 16% | 17.5% | 15%以上 |
軽減税率 |
食料品、水、雑誌、書籍、国内旅客輸送、肥料等・・・・・・・・・・・・・・・5.5% |
食料品、水、新聞、雑誌、書籍、国内近距離旅客輸送等・・・・・・・・・・7% | 家庭用燃料及び電力等・・・・・・・・5% | 食料品、水、新聞、雑誌、書籍、医薬品、旅客輸送等・・・・・・・・5%以上 (2本以下) |
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割増税率 | なし | なし | なし | なし | |
ゼロ税率 | なし | なし | 食料品、水、新聞、雑誌、書籍、国内旅客輸送、医薬品、居住用建物の建築等 |
ゼロ税率及び5%未満の超軽減税率は、否定する考え方を採っている。 |
(注)1 | .各国とも建物の譲渡に請負工事は含まない。 |
2 | .EC第6次指令及びフランスでは、建物の譲渡、建築用地の譲渡(フランスにおいては個人が取得する住宅用を除く)とも課税。 |
3 | .ドイツ及びイギリスで建物の譲渡が非課税となっているのは、土地・建物を一体のものとして取引する慣行があるので、土地の非課税の影響を受けているもの。 |
出所:財務省ホームページhttp://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/108.htm
(4)中小業者に対する特例措置
中小業者に対する特例措置の推移
出所:財務省ホームページhttp://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/111.htm
付加価値税における中小事業者に対する特例措置の国際比較
(備考)1 | .フランス及びドイツの免税点制度は、前暦年及び当暦年の年間売上高の要件をいずれも満たしている場合に適用。 ただし、フランスでは物品販売・宿泊施設業の場合、年間売上高が前暦年 800万円かつ、当暦年 880万円以下の場合に適用。 |
2 | .イギリスの免税点制度は、当月の直前1年間と当月以後1年間の課税売上高の要件のいずれかを満たしていれば適用。 ただし、当該課税年度中のいずれか30日間の課税売上高が934万円を超えた場合は、その30日間の初日から課税事業者となる。 |
3 | .邦貨換算には、次の換算率を用いた。1フラン=16円、1マルク=55円、1ポンド=173円 |
逆進性の緩和措置
大平内閣の「一般消費税」、中曽根内閣時の「売上税」:食料品が非課税
平成9年当時社民党:複数税率化
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(2)複数税率化と納税方式
表 1 特定財源の沿革
年 |
概要 |
昭和24年 |
揮発油税創設→一般的な財政需要に応じる必要から、揮発油の消費に負担を求めるため |
昭和25年 |
入湯税を市町村の普通税として創設。 →鉱泉浴場所在の市町村特有の財政需要に対処するため、昭和32年度の税制改正により目的税に変更。 |
昭和28年 |
「道路整備費の財源等に関する臨時措置法」制定 →道路整備五箇年計画(第1次:昭和29年度〜33年度)策定とともに、その財源として揮発油税収相当額を国の道路整備に充当。(昭和33年に制定された「道路整備緊急措置法」に引き継がれ、現在に至る。 |
昭和29年 |
「昭和29年度の揮発油譲与税に関する法律」制定 →昭和29年度に限り、揮発油税収の3分の1に相当する額を地方に譲与。 |
昭和30年 |
地方道路税(国税)創設。 →課税対象は揮発油。税収のすべてが地方の道路特定財源として地方に譲与。 |
昭和31年 |
軽油引取税創設 →地方道路整備の緊急性及び揮発油を燃料とするガソリン車と軽油を燃料とするディーゼル車との負担の均衡などを考慮し、都道府県及び指定市の道路に関する費用に充てるための都道府県の目的税として創設。その後、平成元年に、軽油の流通実態等に鑑み消費地課税などの制度の抜本的な改正実施。 |
昭和38年 |
入猟税創設 →狩猟法の改正に関連して狩猟者税廃止の代替として、狩猟者免許税と併せて都道府県の目的税として創設。税収は、鳥獣の保護及び狩猟に関する行政の実施に要する費用に充当。 |
昭和41年 |
石油ガス税創設 →石油ガスを燃料とするLPG車と揮発油を燃料とするガソリン車との負担の権衡を図る観点から創設。揮発油税などとともに、「道路整備緊急措置法」などに基づき、国・地方の道路特定財源とされている。 |
昭和43年 |
自動車取得税創設 →地方道路財源の充実強化を図り、都道府県及び市町村の道路に関する費用に充てるため、都道府県の目的税として創設。 |
昭和46年 |
自動車重量税創設 →自動車の走行が多くの社会的費用をもたらしていること、道路その他の社会資本の充実の要請が強いことを考慮して、広く自動車の使用者に負担を求めるため創設。 |
昭和47年 |
航空機燃料税創設 →空港整備などのための財源を確保する等の観点から創設。税収は、国の空港整備費や地方の空港対策費に充当。 |
昭和49年 |
電源開発促進税創設 →原子力発電施設、火力発電施設、水力発電施設等の設置促進などの電源立地対策を講じるための目的税として創設。昭和55年に、税収の使途に石炭、原子力、水力、地熱等の電源多様化対策を追加。 |
昭和53年 |
石油税創設 →石油一般の利用に共通する便益性に着目し、石油対策に係る財政需要に配意して、広く石油の消費に対して負担を求めるために創設。税収は、当初、石油対策に要する費用に充てることとされていた。昭和55年度以降は、石油代替エネルギー対策、平成5年度以降は省エネルギー対策などにも充当。 |
(2)特定財源等の現状
国 税 |
税 目 | 課税対象 |
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税 収 の 使 途 | 税
収 (12年度 予算額) |
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揮発油税 | 揮発油 |
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道路整備緊急措置法に基づき10年度から5年間は全額国の道路特定財源とされている。また、同法等に基づき同期間中、1/4は地方への交付金の財源に充てるため直接道路整備特別会計に組み入れることとされている。 | 億円 27,714 |
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地方道路税 | 揮発油 |
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都道府県及び市町村の道路特定財源として全額譲与されている。 | 2,965 | |||||||||||||||||||||||
石油ガス税 | 自動車用 石油ガス |
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1/2 は道路整備緊急措置法に基づき10年度から5年間国の道路特定財源とされ、1/2 は都道府県及び指定市の道路特定財源として譲与されている。 | 300 | |||||||||||||||||||||||
自動車重量税 | 車検を受ける自動車等 |
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3/4 は国の一般財源であるが、1/4
は市町村の道路特定財源として譲与されている。 (国分のうち8割相当額は道路整備に充てることとされている。) |
11,093 | |||||||||||||||||||||||
航空機燃料税 | 航空機燃料 |
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11/13 は空港整備特別会計法に基づき国の空港整備費に充てられ、2/13は空港関係市町村及び空港関係都道府県の空港対策費として譲与されている。 | 1,028 | |||||||||||||||||||||||
石油税 | 原油、輸入石油製品、ガス状炭化水素 |
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石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法に基づき石油及びエネルギー需給構造高度化対策に充てられている。 | 4,820 | |||||||||||||||||||||||
電源開発 促進税 |
一般電気事業者の販売電気 |
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電源開発促進税法及び電源開発促進対策特別会計法に基づき全額電源立地対策及び電源多様化対策に充てられている。 | 3,699 | |||||||||||||||||||||||
計 | 51,619 |
地方税 |
税 目 | 課税 主体 |
課 税 対 象 | 税 率 | 税収の使途等 | 平成12年度 収入見込額 |
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自動車 取得税 |
都道 府県 |
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億円 4,556 |
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軽油 引取税 |
都道 府県 |
軽油の引取り |
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12,989 | ||||||||||||||||||
入猟税 | 都道 府県 |
狩猟者の登録 |
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鳥獣の保護及び狩猟に関する行政の実施に要する費用 | 12 | ||||||||||||||||||
入湯税 | 市町村 | 鉱泉浴場における入湯行為 |
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環境衛生施設、鉱泉源の保護管理施設及び消防施設等の整備並びに観光の振興(観光施設の整備を含む)に要する費用 | 231 |
注.「平成12年度収入見込額」は、平成12年度地方財政計画額である。 |
ハ | .石油ガス税は、石油ガスを燃料とするLPG車と揮発油を燃料とするガソリン車との負担の権衡を図る観点から昭和41年に創設され、それ以来、揮発油税などとともに、「道路整備緊急措置法」などに基づき、国・地方の道路特定財源とされています。 |
ニ | .自動車重量税は、自動車の走行が多くの社会的費用をもたらしていること、道路その他の社会資本の充実の要請が強いことを考慮して、広く自動車の使用者に負担を求めるため、昭和46年に創設されました。 |
ホ | .航空機燃料税は、空港整備などのための財源を確保する等の観点から昭和47年に創設され、その税収は、国の空港整備費や地方の空港対策費に充てられています。 |
ヘ | .石油税は、石油一般の利用に共通する便益性に着目し、石油対策に係る財政需要に配意して、広く石油の消費に対して負担を求めるために、昭和53年に創設されました。その税収は、当初、石油対策に要する費用に充てることとされていましたが、昭和55年度以降は、石油代替エネルギー対策、平成5年度以降は省エネルギー対策などにも充てられることになりました。 |
ト | .電源開発促進税は、原子力発電施設、火力発電施設、水力発電施設等の設置促進などの電源立地対策を講じるための目的税として、昭和49年に創設されました。その後、第2次石油危機の発生に伴い、昭和55年には、税収の使途に石炭、原子力、水力、地熱等の電源多様化対策を追加するなどの改正が行われました。 |
チ | .自動車取得税は、一定の自動車の取得に対し、その取得者に課される税で、昭和43年、地方道路財源の充実強化を図り、都道府県及び市町村の道路に関する費用に充てるため、都道府県の目的税として創設されました。 自動車取得税は、自動車の取得に担税力を見出して課される税であるとともに、受益者負担的かつ原因者負担的な性格を持つものであり、消費税・地方消費税とは、その性格、課税の趣旨からして異なるものです。 |
リ | .軽油引取税は、昭和31年に地方道路整備の緊急性及び揮発油を燃料とするガソリン車と軽油を燃料とするディーゼル車との負担の均衡などを考慮し、都道府県及び指定市の道路に関する費用に充てるための都道府県の目的税として創設されました。 その後、平成元年に、軽油の流通実態等に鑑み消費地課税などの制度の抜本的な改正が行われましたが、軽油の流通実態の多様化等の状況変化などに伴い、今後とも脱税防止策を含め一層の課税の適正化を図っていく必要があります。 |
ヌ | .入猟税は、昭和38年、狩猟法の改正に関連して狩猟者税が廃止され、これに代わるものとして、狩猟者免許税と併せて都道府県の目的税として創設されたものです。この税収は、鳥獣の保護及び狩猟に関する行政の実施に要する費用に充てることとされています。 |
ル | .入湯税は、昭和25年の現行地方税法の制定により、市町村の普通税として創設されましたが、鉱泉浴場への入湯行為及びこれに付随する奢侈的行為に課税の根拠を求めるだけでなく、鉱泉浴場所在の市町村特有の財政需要に対処するため、昭和32年度の税制改正により目的税に変更されました。 |
・ 我が国の公共投資の対GDPは国際比較では突出して高い。
(対GDP比でみた一般政府固定資本形成:イギリス1.8%、フランス2.8%スウェーデン2.8%、日本6.0%)
・ 自動車関係諸税の適正水準
図 自動車関係諸税の年間税負担額の国際比較(試算)
(資料25)自動車関係諸税の年間税負担額の国際比較(試算)
出所:政府税制調査会「わが国税制の現状と課題−21世紀に向けた国民の参加と選択−」(平成12年7月14日)
・ 北欧での環境税→2重の配当