第4章 租税原則と税体系

第1節 租税原則
(1)租税原則の変遷

アダム・スミスの4原則(1776)
→課税の根拠:利益説(公共サービスの対価)
   1.公平性の原則
   2.明確性の原則
   3.便宜性の原則
   4.最小徴税費の原則
    ↓
  比例所得税

アドルフ・ワーグナー(ドイツ歴史学派)の9原則(1890)
→課税の根拠:義務説(国家は社会的利益を追求する家父長的保護機関、国民は国家の存立と維持に必要な限り
租税その他の経済手段を提供しなければならない、共同体に対する倫理的義務) 
  1.財政政策上の諸原則
   課税の十分性 
   課税の可動性
  2.国民経済上の諸原則
   正しい税源の選択
   租税の作用を考慮して税種の選択
  3.公正の諸原則
   課税の普遍性
   課税の平等性
  4.税務行政の諸原則
   課税の明確性
   納税の便宜性
   最小徴税費の努力
(
現代の租税の3原則
  公平性
  効率性(中立性)
  簡素(徴税と納税協力費の最小化)
           

(2)課税の公平性
応益原則
各個人が享受する公共財の受益に応じて税負担を配分
問題点:フリーライダーの発生
受益と負担の関係が明確な道路目的財源のガソリン税など一部の税


応能原則
支払い能力に応じて税負担を配分
a.水平的公平(horizontal equity)
「等しい経済力を持つ人々の等しい取扱い」
所得・消費・効用
b.垂直的公平(vertical equity)
「異なる経済力を持つ人々の異なる取扱い」
累進課税の根拠
 →犠牲説(sacrifice theory)
 税負担から生じる犠牲(マイナスの効用)を個人間で均等にする

均等絶対犠牲
 税負担による犠牲の絶対量を均等にする
均等比例犠牲
 所得の総効用に対する犠牲の割合を均等にする
均等限界犠牲(最小犠牲説)
 限界的な犠牲を個人間で均等にすればよい、税負担による犠牲の最小化

能力説の前提
1.税制の中立性
 税制は所得に対して何等の影響を与えず中立的である
2.効用の所得依存性と所得の限界効用の逓減
 各家計の効用関数は所得にのみ依存し、所得の限界効用は正で逓減する
3.選好の同一性
 各家計の効用関数は同一である
4.功利主義的な社会的価値観
 すべての家計は社会的価値判断において同等に評価される

疑問点
*各家計の所得稼得意欲への影響(効用は所得にのみ依存、労働供給の問題)
→効率性の問題を無視

(3)課税の効率性

課税の超過負担(excess burden):死重損失(deadweight loss)

p.56
図4-1 超過負担の図解


財政学用語集「超過負担」参照

最適課税論
 「次善(セカンドベスト)」の最適課税論
   1927年 ラムゼー
逆弾力性命題 ラムゼールール
需要の価格弾力性の高い財(奢侈品)に軽課、
需要価格弾力性の低い財(必需品)に重課
          ↓
        超過負担の最小化


第2節 租税の分類と税体系
(1)租税の分類

図4-2貨幣循環と課税のインパクト


経済的分類
  i.所得課税
  ii.消費課税
  iii.資産課税

.直接税・間接税
  直接税 納税義務者と税負担者が同一 所得税・法人税
  間接税 納税義務者と税負担者が異なる 消費税
  問題点:本当に転嫁できるか否か 消費税・法人税


(2)税体系

p.60

表4−1 国税と地方税の税目
財務省ホームページ 国税と地方税の税目と内訳
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a01.htm

p.60

図4-3 国税と地方税の税収内訳   

2023年度当初予算

所得課税 51.8%
消費課税 34.8%
資産課税 13.3%


p.61
表4−2 税目別国税収入と構成比(2023年度当初予算)

直接税 55.3% 間接税 44.7%

最新資料
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a03.htm

財政金融統計月報(第854号)

p.62
図4-4 所得税、消費税、法人税の国税総額に占める比率の推移

所得税、法人税の構成比の低下、景気の変動による構成比の変化
消費税の税率引き上げによる構成比の上昇

 
p.63
表4−3 直間比率の国際比較

アメリカは直接税中心

ドイツフランスは間接税の比率が高い

日本はアメリカとヨーロッパの中間だが、直接税の比率が高い

最新資料
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/itn_comparison/j01.htm#a06


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