*はじめに 恋愛… ああ、甘美な響き! このサンクチュアリに無粋な科学の光を当てたくない諸兄は、今からでも遅くありません。 引き返しましょう。 「赤ちゃんって、どこから来るの?」 『コウノトリさんが運んでくるのよ』 『キャベツから出てくるのよ』(キャベツ畑人形って、この考え方がベース) あの頃は、そう信じていて幸せだったではあませんか。 恋愛だってそうです。ときめきに胸キュンでいるほうが幸福かも。 *個体はジーン(遺伝子)のビークル(乗り物)でしかない。 セルフィッシュ・ジーン・セオリーの根幹をなす考え方は、 「個体はジーン(遺伝子)のビークル(乗り物)でしかない。」 ヒトは、2n=46のヒト遺伝子を次の世代に伝えるために存在しているのです。 ヒトの生物学的な成否は、次のように決まります。 「次の世代に遺伝子を伝えるのに成功したか、失敗したか?」 ここに二人の男がいます。ローフル君とカオティック君です。 ローフル君は修道僧として清く正しい生活を送り、女性の肌に触れたこともありません。 そして多くの人に惜しまれながら天に召され、昇天後は聖人として末永く褒め称えられました。 カオティック君は女性の敵として憎まれるような一生を送り、その機会さえあれば不適切な関係を強要しました。 そして警官に射殺され、死後その姿は警官の射撃用の的になりました。 さて、ローフル君とカオティック君のどちらが生物学的な成功者でしょう? もちろん、カオティック君はあちこちに母親の違う子供がいます… *そうしろとジーン(遺伝子)がささやくのよ… 「なぜ山に登るのか?」 『そこに山があるから』 なんてキザったらしい美しい言葉でしょう。 それでは、あらためて問います。 「なぜ生物は行動するのでしょう?」 『そうしろとジーン(遺伝子)がささやくのよ…』【本当】 ♪ミミズだって、オケラだって、アメンボだってぇ〜 ジーン(遺伝子)に突き動かされているのです。 そして、懸命に次の世代に遺伝子を伝えようとしているのです。 食べるのもHするのも全て次の世代に遺伝子を伝えるためです。 *なぜセルフィッシュ(利己的)と言われるの? 本当は利己的と言うより冷酷なと、言う方が的を射ているかも。 で、本題に入ります。 遺伝子は何に対して利己的なのか? 遺伝子を運んでいる個体に対して。 どのように利己的なのか? 「目的のために死を命ずることがあるから。」 わかんにゃい? それでは言葉を増やして… 「遺伝子を伝えるという目的の確実性のために、その遺伝子を運んでいる個体に死を命ずることもあるから。」 まだよくわからない? 例題はないのか? わっかりました。ある種の蜘蛛の場合を紹介しましょう。 ♂が♀に巡り会うと、♂は「さあ、どこからでも喰え!」と覚悟を固めます。 そして♀に食べられながらHをして自分の遺伝子を確実に残します。 なぜそんな事を!? 自然界で♂が♀に巡り会う確率は天文学的に低く、2回目の巡り会いは期待できないからです。 1回目の巡り会いで確実に遺伝子を伝えるために、ゆっくりと食べられながら確実なHをするのです。 ファーブルが昆虫記の中でカマキリの同様のHを書いている? ええそうです。でも、それは籠の中の話で、野外では♂が逃げ切る確率の方が高いのです。 以上、個体レベルで遺伝子を確実に伝えるため手法。 *鮭は死の遡上をする 鮭は死の遡上をする。ジーン(遺伝子)に命じられるままに。 鮭は生まれた川にかえる。これはみなさんもよくご存じだと思います。 初耳かもしれないこと。鮭の生息できる川には、温度条件がある。 年間の平均水温がある一定以下でないと生息できません。 (東京のアホな自然保護団体が、東京の川に鮭の稚魚を放流しましたが… 結果はもちろん(-人-)。:閑話休題) 鮭は生まれた川に帰りますが、全部がそうではありません。 数パーセントは生まれた川より南に、 数パーセントは生まれた川より北に、 新境地を求めます。 なぜか? セルフィッシュ(利己的)なジーン(遺伝子)が、 種に対する保険をかけるために、個体を犠牲にするからです。 南に新境地を求めたグループは、死滅します。 北に新境地を求めたグループは、新境地を開拓し種を拡散させます。 種の拡散=住んでいる所が広がること。 なぜ、このような保険が必要なのか? 長〜〜〜い目で見ると、地球の温度が変動するからです。 地球が暖かくなった場合: 南に新境地を求めたグループ=死滅 生まれた川に帰ったグループ=死滅 北に新境地を求めたグループ=種の拡散に成功 地球が寒くなった場合: 南に新境地を求めたグループ=種の拡散に成功 生まれた川に帰ったグループ=現状維持 北に新境地を求めたグループ=種の拡散に成功 以上、種レベルで遺伝子を確実に伝えるため手法。 *なぜ浮気と無縁な人と、そうでない人がいるのか おまたせいたしましたm(__)m。気になる核心に迫ります。 それはね、セルフィッシュ・ジーンに突き動かされるから♪ 石を投げない下さい。 これからちゃんと解説します。 浮気と無縁な人と、そうでない人、どちらが生物学的に正しいか? 答え:両者とも正しい。 なぜなら、それは確実性を求める手段の違いでしかないからです。 浮気と無縁な人は、特定の母子に集中的にエナジーを投入するという手法で、確実性を高めようとしています。 浮気をする人は、多数の母子に分散的にエナジーを投入するという手法で、確実性を高めようとしています。 そのどちらを選ぶかは… 現実には個人には選べません。 遺伝子に記されている通りに行動しているだけです。 それは、ヒトという種が滅亡しないようにジーン(遺伝子)が命令を出していることなのです。 ヒトは、どのような遺伝子を持って生まれるか、選ぶことができません。残念ながら。 どのような遺伝子を持った子を作るかは、デザイン可能になりつつありますが。 *集中型と分散型と どちらが有利か? 環境によって、どちらが有利かは入れ替わります。 それゆえに、両方の型が絶対に必要なのです。 あえて例はあげません。今までの生物史、人間史の中に見られる災害を思い出して下さい。 *浮気はイケナイこと? 日本国憲法ではイケナイことです。 しかし、イスラム世界では男は経済力の許す限り妻をもって良いことになっています。 そしてそれは、女性にとってとても大切な保険として機能しています。 男にとっても女にとっても(そしてジーンにとっても)とても有効なシステムとして一夫多妻制が機能しています。 イスラム世界の自然環境では、それが最も有効なシステムであったために、イスラム教がスタンダードなシステムとして採用したのです。 イスラム教が、強引に普及させたシステムで無いことを強調しておきます。 ヨーロッパで一夫一妻制がスタンダードなシステムになったのは… 半分は自然環境への対応で、半分はキリスト教の方針だったからです。 キリスト教が、この方針を採用し押し通すことができたのは、自然環境がイスラム世界ほど厳しくなかったからです。 以上、ちょっとだけ目を世界に向けてみました。 こんどは、歴史を遡ってみましょう。 紫式部や清少納言の時代は、妻問い婚(つまどいこん)の時代でした。 家を構える経済力のある女性が、男に訪れてもらえます。 男は、経済力のある女性の家を訪れます。それも蝶のように、今日はあの家、明日はあの家… まぁ、上流階級のはなしですが。 世界の歴史をひもとくと… ページが足りないのでやめます。(^_^;) ただ、これだけは書いておきます。一夫一妻制がスタンダードになったのは、この数百年かそこらの出来事です。 そしてジーンは、はるかに長い間生きてきて、これからも生き抜くために戦い続けます。 ジーンの目からみると、ビークルのほんの数百年の出来事など、無視しても全然差し支えないことなのです。 ジーンは、次の世代に確実に伝わるために、ビークルの命を容易に差し出させます。 ビークルのその時の法律が、一夫多妻制を… そのような些細な問題は、当然のごとく無視されます。 浮気された方から見ると、その意味でもセルフィッシュかも(^_^;) *浮気された方の感情の問題 理論では理解しても、浮気されれば腹が立つ! ハイ、おっしゃるとおりだと思います。 だって、ジーンがそのように囁きかけるんだもん。【本当】 浮気されて腹が立つメカニズムも、ジーンが中心にあるのですが… そろそろ筆を置きますね。 *あとがき シャーリィーちゃんの変身前の正体は、純文学作家の卵の筈なのに… 【本当】 なぜ、自然科学系な事を書けるの???? アルバイトで講演とか講義もするから(^_^)【本当】 それにしても、次からは執筆依頼にしてほしいな有料で♪ そしたらもっと完成度の高い物を書きますよ。 |