陽の照りながら雨の降る



一息に最奥まで穿かれて、往壓は吐き出した嬌声と一緒に息を詰まらせる。
背筋から脳天まで駆け抜ける凄まじい悦楽に身体がヒクヒクと痙攣した。
往壓の粘膜は深く満たされた放三郎の雄へまるで生き物のようにネットリと絡み付いて締め付けてくる。
淫らに蠢く胎内の誘惑に、放三郎は眉を顰めて堪えた。
ほんの一瞬気を抜けば呆気なく遂情しそうなほど、往壓の中は蕩けるように熱い。
暫し繋がったまま息を喘がせていると、ふと往壓が我に返って僅かに顔を赤らめた。

「あ〜…情けねぇ。イイ歳して『心太』かよ」
「………は?」

訳が分からず放三郎が目を丸くすれば、往壓は羞恥を誤魔化すように顔を顰める。
「何を言っておる?いきなり…心太などと」
「っだから!あんたが一突きしたら出ちまったんだよ…」
「出た…?」
さすがに何が、とは言わない。
放三郎が視線を落とすと、交わっている下肢から腹が鵐に濡れていた。
滾った肉芯を咥え込んだだけで、往壓は堪えきれずに吐精してしまったらしい。
驚いて瞠目する放三郎を見上げていた往壓は、居たたまれずに両手を上げて顔を隠した。
年長の余裕で散々煽って翻弄する情人のいつになく初な表情に、放三郎は愛しさを感じて胸を昂ぶらせる。

「それだけ私を望んでいる、という事ではないのか?」
「え…?」
「堪えきれぬほどに私を待ち侘びていたのであろう?」

放三郎の真摯な声に、往壓は手を退けて双眸を瞬かせた。
からかうどころか愛おしげに見つめている放三郎の直向きな眼差しに、往壓の身体はじわりと喜悦の温度を上げる。
情欲の孕んだ濡れた瞳で放三郎を見据えると、両腕を差し出した。
「そうだ…小笠原さん、何時だってあんたが欲しくって欲しくって堪んねぇんだよ」
「竜導…」
「小笠原さんの腕に抱かれるだけで、勝手に身体が飢えて疼いちまう…どうしてくれる?」
「私無しでは…居れぬか?」
「今更、だろう?とっくのとうに俺の身体も…心も、あんたに囚われている」
放三郎は胸の内に溢れる惜愛のまま、往壓の身体を抱き締める。
それと同時に燻るのはどうしようもない昏くおぞましい優越感。
この情人を己に繋ぎ止めたい、縋り付かせたい、と。
その為には往壓が望むだけ、それ以上の享楽を与え続けて身も世もなく狂わせたい。

そうだ、いっそ己しか見えないようこの腕の中で狂ってしまえばいい。

詮無きことを。
自嘲の笑みを浮かべる放三郎を往壓はじっと見つめた。
両手で頬を捕らえると、その唇を辿るように舌を這わせる。
「俺から離れようとするなら…連れて行くから」

何処へ、などと聞くまでもない。

往壓の背後に見える深紅は幻影か。
「私は…狂っておるのか?」
「あんたは…まともだよ」

ただ、俺に出逢うなんて運が無かっただけだ。

往壓はそう呟くと、自ら放三郎の唇を割り開いた。
「ふ…んぅ…っあ…ぁっ!」
しがみ付いてくる身体を抱き上げれば、往壓が自ら放三郎の下肢へと乗り上げてくる。
自重で深々と熱芯に貫かれ、顔を愉悦で歪めながら甘い嬌声を零した。
背筋を大きく仰け反らせ、少しもじっとしない揺れる腰を下から突けば、熟れた粘膜は咥え込んだ男茎を悦んで締め付ける。
目の前に晒された胸元へ舌を這わせると、欲情した肌は淫猥に色付いた。
往壓の肌から発する脳髄を蕩かせるような甘い匂いに、放三郎の腹の奥でトロリとした熱が蠢く。
昂揚して色付く乳首を舌で舐りながら吸い上げると、往壓は小刻みに身体を震わせひっきりなしに喘いだ。
腰に絡まる脚が与えられる悦楽で小さく跳ねる。
往壓は全身で放三郎へしがみ付き、激しく腰を振って更に熱を煽った。
深々と交わる部位からは溢れる淫液がグチュグチュと音を立て、互いの下肢を濡らして畳を濡らす。
「竜導…っ…そのようにしがみ付かれては…動き辛いであろ…っ!」
「あ…悪ぃ」
夢中になって放三郎の頭を抱え込んで身悶えていた往壓は我に返ると、ばつ悪そうに笑みを浮かべてぎこちなく身体を離した。
身体から力を抜いた途端。

「うわっ!?あああぁぁーーー…っ!!」

往壓の身体は背中から畳の上へ押し倒され、放三郎の雄が秘孔の最奥まで割り開いた。
背筋から脳天まで駆け上がる悦楽に、往壓は顔を歪めて艶めかしい嬌声を上げる。
「やめっ…待っ…深ぁ…ああっ!?」
放三郎は往壓の膝裏へ手を掛けると胸元まで抱え上げ、昂ぶる屹立を激しく注挿し始めた。

激しく肉のぶつかる音と、甘やかな喘ぎ声、噎せ返るほど濃密な甘い体臭に酩酊する。

往壓から与えられる凄まじい愉悦に、放三郎の腰がビクビクと痙攣した。
欲情に濡れた双眸は真っ直ぐと快楽に打ち震える往壓へ注がれる。

「はっ…あ…小笠原さ…ん…も…もぉ…出ちまっ…達く…っ!」
「私もっ…堪えそうも…ないっ!」

極みまで一気に上り詰めるよう、放三郎も往壓も互いの身体を激しく貪り合った。
往壓の首筋が大きく反らされる。

「うっ…んんっ!は…あああぁぁああっっ!!」

ビクリと大きく腰が跳ね上がり、張り詰めた雄が弾けて白濁を撒き散らした。
一度で治まらない遂情は、往壓の顔から胸元腹部までネットリと汚していく。
淫らに痙攣する粘膜に引き絞られるよう、放三郎も後孔の奥深くへ多量に吐精した。
全ての残滓まで飲み込ませると、放三郎は大きく息を吐いて身体を離す。
「ん…う…っ」
ズルリと熱を帯びて敏感になっている粘膜を擦りながら、蹂躙していた肉芯が抜け落ちた。
絶頂の余韻に浸っている往壓はだらしなく四肢を投げ出して、忙しなく胸を喘がせている。
さすがに無理をさせすぎたかと放三郎は気遣い、覆い被さって顔を覗き込んだ。
「竜導…?」
放三郎が小さく声を掛けると、直ぐに腕が伸ばされる。
誘われるままに半身を倒せば、濡れた唇が口付けを強請った。
「ふぅ…ぁ…あっ」
角度を変えて舌を絡ませて舐り合うと、漸く往壓の息が落ち着きを取り戻す。
間近に見つめ合いながら放三郎が微かに眉根を寄せた。
「大事ないか?」
「大有りだ。背中が擦れて…ヒリヒリしやがる」
往壓は顔を顰めると俯せに転がる。
浮き出た肩胛骨辺りが赤くなり僅かに血を滲ませていた。
放三郎は顔を寄せると、舌先でペロリと血を舐め取る。
「いっ…てぇ…っ!」
「後で軟膏を塗ってやる」
「へーへー。お気遣い痛み入ります〜…っと」
両肘を着いて身体を浮き上がらせた往壓が、座している放三郎の腿へ頭を乗せた。
汗に濡れた鬢を掻き上げられ、往壓は気持ちよさ気に溜息を漏らす。
「なぁ…小笠原さん」
放三郎の腿へ乗り上がって懐く往壓が、庭先へ視線を向けた。
「どうした?」
「アレ…帰りに1本貰ってもいいかい?」

雨露に濡れて咲き誇る暈繝彩。

紫陽花を一折り欲しいと往壓が強請る。
「構わぬが…それだけで良いのか?」
放三郎が往壓を覗き込むと、意味深な笑みを返された。
上目遣いに放三郎を見上げ、楽しそうに口端を上げる。
「あんたの変わりが何本もあったって仕様がねぇだろ?」
「は?」
「まぁ、あんたが居ない夜には…アイツに手酌の相手にでもなって貰おうかと思って、な」
放三郎の代わりに花を手慰みにすると往壓が笑った。
何とも言えない複雑な面持ちで放三郎は黙り込む。

「…若いねぇ」
「ーーーーーっっ!?」

着乱れたままの放三郎を振り返って、往壓が苦笑を漏らした。
放三郎の雄は既に芯を保って勃ち上がっている。
往壓はゆっくりと身体を起こすと、俯せに臥して腰だけを上げた。
目前に差し出された双丘に、放三郎の喉が微かに鳴る。
「まだ背中が痛ぇから、今度はこっちから、な」
誘うように腰を揺らせば、すぐに放三郎が覆い被さった。
未だ濡れて蕩けている熟れた襞へ、怒張した鋒を押し当てる。
「んっ!あ…ぁ…っ」
悩ましい嬌声と共に、ズルズルと放三郎の雄が飲み込まれていった。
引き締まった双丘を左手で鷲掴み、右手は前へ回して往壓の男茎を掴み締める。
「あ…あ…っ…ソコッ…もっと…いっ…イィ!」
屹立を扱きながら鈴口を指の腹で回すよう擦り立てれば、濃い淫蜜がヌルヌルと溢れ出した。
後ろも前も悦いところばかりを執拗に責められて、往壓は身体を揺らして啜り啼く。
もっと欲しいと懇願する往壓に、放三郎が双眸を眇めた。
普段達観して掴み所のない年上の情人が腕の中で喘ぐ姿は、放三郎の征服欲を殊の外満たしていく。
ソレと同時に胸を焼く焦燥感。
こうして繋いでおかなければフラリと消えてしまいそうな往壓に、放三郎は縋るようにその身体を掻き抱いた。
往壓の腰へ腕を回すと、胡座の上へと抱え上げる。
「ひぃ…いぁっ!」
大きく脚を開かされて突き挿れられる熱芯に、往壓は放三郎へ背中を預けて身悶えた。
「このっ…ちっとは…加減…しろっ!」
「これ程度、お前なら造作も無かろう?それに…」
放三郎は往壓の下肢へと掌を滑らせる。
「…先程よりも溢れておるぞ?」
「あ…っ」
腹へ着くほど反り返る屹立を乱暴に扱かれて、往壓は腰を震わせ甘い声を上げた。
仰け反る首筋へ噛みつきながら大きく突き上げると、往壓の胎内が悦んで滾った肉芯を締め付けてくる。
湧き上がる愉悦に放三郎も堪えきれず、夢中になって往壓を揺さ振り、その淫猥な秘肉を貪った。
肩口へ後頭部を擦り付け、往壓が放三郎を見上げて唇から濡れた舌先を差し出す。
放三郎は顔を傾けると、その舌を吸い上げて深く口付けた。
それと同時に握っていた往壓の雄が大きく跳ねて、鈴口から情欲の証を吐き出す。
放三郎もまた胎内にキツク締め付けられ、燻っていた熱を全て迸らせた。

往壓は放心した身体を放三郎へ預けて頻りに胸を喘がせている。

背中から抱き締められて労るように首筋へ触れる唇の感触に、往壓は擽ったそうに肩を竦めた。
「…身体はもう寒くなかろう」
「あぁ…驟雨の温度が丁度良い」

雨は未だ止む気配すらなく、紫陽花の花弁を濡らしている。

「小笠原さん、暮れ六つ過ぎには上がると思うかい?」
「さぁ…どうであろうな」
「まぁ、上がらなかったら…あんたがアイツの代わりに相手してくれるんだろ?」
雨露に揺れる紫陽花に、放三郎は不本意そうに眉根を寄せた。
「どちらが代わりだと?」
「あんたは下戸じゃないか」
「お前や江戸元と違って嗜む程度には飲む」
憮然として言い返す放三郎に、往壓は喉で笑いを噛み殺す。
双眸を上げて放三郎を見遣ると、艶やかに微笑んだ。
「鬱陶しい長雨でも…あんたが居れば退屈しねぇな」
「人を退屈凌ぎ呼ばわりか。無礼な男だ」
厭そうに顔を顰める放三郎に、往壓が口端を上げる。
「あんたが側に居るだけで俺は満たされる…って言ったつもりなんだが?」
思いも寄らない甘い睦言に、放三郎は虚を突かれて顔を赤らめた。

しかもまだ身体は繋がったままで。

放三郎の反応に気付いた往壓は、可笑しそうに肩を震わせる。
「…もう一度ぐれぇなら付き合ってもいいぜ?」
「あっ!これは…だな…っ!」
「俺は小笠原さんが欲しがってくれて嬉しいんだがね?」
ほら、と往壓は放三郎の手を取って、己の下肢へと導いた。
指先に触れた熱さに放三郎は驚いて瞠目する。
「…あんたが欲しくて此処が濡れちまってる」
「………っ!!」
往壓の殺し文句に理性を飛ばした放三郎は、あっさり掌中に嵌って淫猥な肢体を押し倒した。



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