快楽の憂鬱



往壓の視線の先には雲一つ無い明るい空が広がっている。

「なぁ…小笠原さん」
「………。」
「…聞いちゃいねぇか」

出窓の手摺りへ背中から寄り掛かり、往壓は可笑しそうに小さく喉を鳴らした。
トロリと下肢で燻り始める熱に潤んだ双眸を眇める。
往壓の着物は肩から落ちて、胸元を晒すようにはだけていた。
脚は大きく開かされ、その間に放三郎が蹲っている。
放三郎に捕らえられている片脚の爪先が時折ピクリと引き攣った。
「…っ痛」
思い切り柔らかな内腿を吸い上げられ、往壓は顔を顰める。
痛みの後にジワジワと疼く熱に、大きく顎を仰け反らせた。
放三郎の唇は執拗なほど内腿から脚の付け根を吸い付いて噛みつく。
敏感な肌から湧き上がる熱が次第に下肢で膨らみ、往壓が焦れて僅かに腰を揺らした。
触れて欲しい処ばかりをはぐらかして触れてくる放三郎に、往壓は堪らず半身を起こそうとする、が。

「ひっ…んあぁっ!?」

腰を大きく跳ね上げ、艶やかな嬌声が唇から零れる。
放三郎は往壓の男茎を掴むと、付け根から雁首までを辿るように舐め上げた。
緩やかに頭を擡げていた雄はビクリと震え、芯を保って屹立する。
驚いて瞠目する往壓と上目遣いに視線を合わせた放三郎は、淫猥な愛撫を見せつけるように肉芯を咥えながら舐り始めた。
唾液をたっぷり含んだ舌で脈動する筋を辿り、諾々と愉悦の密を溢れさせる鈴口を吸いしゃぶる。
「んんっ!小笠わ…さっ…待…っ」
黙っていろと言わんばかりにキツく密口を吸い上げられ、往壓の背筋が大きく反り返った。
ギシリ…と、重さで手摺りが軋む。
往壓は熱い溜息を吐き出すと手摺りへ肘を乗せ、腰を摺り落とした。
下肢を放三郎へと投げだし、与えられる喜悦に腰を捩る。
内腿の筋はピクピクと痙攣し、双袋は大きく張って揺れていた。
巧みな口淫に往壓は眉を顰めて、不機嫌そうに視線を落とす。

「小笠原さ…んっ…どこでそんな真似…っ」
「…貴様が散々やっておろうが」
「俺…?」

ズルズルと根元まで咥えられた陰茎を喉の粘膜で締め付けられ、往壓は腰を跳ね上げた。
どうやら放三郎はいつも往壓の手管を真似ているらしい。

「成る程…そいつぁー悦い訳…だっ」

艶然とした笑みを往壓は浮かべながら可笑しそうに喉を鳴らした。
下肢の奥底で燻る淫靡な熱が次第に大きく激しく膨張する。
夢中になって肉芯を貪っている放三郎へ催促するよう腰を押し付け、往壓が忙しなく胸を喘がせた。
迫り上がる愉悦に内腿の筋が引き攣る。
体内で渦巻く熱が開放を求めていた。

「っは…小笠原さっ…離せ…よ」

手摺りへ半身の自重を掛けて快楽に顔を歪める往壓が、捉えられたままの片脚で放三郎の肩を軽く蹴る、が。
チラリと上目遣いに往壓を見遣ると、放三郎は先奔りの溢れる鈴口をきつく吸い上げた。
「ぅあっ!馬鹿…っ…離せっ!も…達っちま…達くっ…て!」
慌てる往壓を無視して、放三郎の口淫はより深く濃密に追い立ててくる。
普段年長の余裕で何事も達観している往壓が、自分の愛撫に翻弄されて乱れる姿は、放三郎の征服欲を煽り立てた。
もっと自分を求めて狂うほど身悶えさせたいと、情欲を孕んだ双眸を眇める。
吐精を即して扱いていた陰茎から双丘の最奥へと指を滑らせた。
先奔りで濡れそぼる襞は更なる快楽を求めてヒクヒクと息づいている。
放三郎の指先が淫らな秘口へ触れると、往壓の腰が大きく痙攣した。
肉芯を伝って滴り落ちる精を指へタップリと絡ませ、物欲しげに震える秘口へ突き立てる。
慣らさずとも往壓の胎内はズズズと一息に指二本を根元まで飲み込んだ。

「ひっ…ぅあああっ!!」

往壓はビクリと大きく背筋を仰け反らせ、甘く濡れた嬌声を迸らせる。
それと同時に放三郎の口腔で雄が弾け、熱い飛沫が一気に注がれた。
想像以上に多量な熱精が気管を塞ぎ、放三郎は思わず噎せ返る。
口中から陰茎を零すと、口元を掌で押さえて咳き込んだ。
遂情の余韻で弛緩する身体を投げ出し、往壓は微かに笑みを浮かべて仕方なさそうに放三郎を見下ろす。
「だから…っ…離せって…言ったろ…が?」
「………。」
窘められた放三郎は往壓を睨むと、口中に残っている白濁に喉を鳴らした。
驚いて瞠目した往壓は半身を起こす。
「お…おいっ!?」
「………あまり旨くはないな」
眉根を寄せて放三郎が呟くと、往壓は深々と溜息を零した。
「んなの無茶して飲むたぁねーだろ」
「お前はいつも飲むではないか」
「俺は別にあんたのなら厭じゃねぇし。寧ろ…」
往壓の腕が放三郎の襟を捉えて引き寄せる。
欲情に濡れた瞳が間近で微笑んだ。

「あんたのは飲むだけで身体が熱くなって…堪らない」

淫猥な指先が袴の上から放三郎の雄を緩く握り締める。
往壓に誘われるままその扇情的な肢体を押し倒そうとすると、苦笑しながら肩を押し返された。
「袴が皺になるだろ?それに…汚れる。此処はあんたの屋敷じゃねぇんだから着替えなんて無いぞ」
性急な若さを揶揄されて、放三郎は僅かに頬を赤らめる。
憮然とした表情で羞恥を誤魔化し往壓から視線を逸らした。
今更どうしたものかと内心で逡巡していると、往壓が羽織の中へと手を差し入れる。
肩を撫でるように払われた布地が畳へと落とされた。
放三郎が驚いて瞠目すると、今度は手慣れた仕草で袴の結び目が解かれる。
袴の中から小袖を引っ張り出され、さすがに我に返った放三郎は自ら脱ぎ始めた。
部屋の隅へ着ていた物全てを放り投げると、出窓に腰掛けていた往壓の肩を突き飛ばす。
「おわっ!?危ねぇ…っ!」
咄嗟に手摺りへ右腕を掛けて半身を支えれば、今度は強引に腰を引きずり下ろされた。
後頭部を手摺りへ強か打ち付け、いつになく乱暴な放三郎へ往壓が文句を言おうと視線を向ければ。

ドクン、と鼓動が跳ね上がる。

往壓の最奥に熱が触れた。
下帯から取り出された放三郎の雄は反り返るほど屹立し、先奔りの淫蜜が滴っている。
ヌルヌルと秘口の襞を先端で撫でられて、往壓の胎内が期待で蠢いた。
両脚を捉えられている往壓の双眸が欲情で濡れる。

「小笠原さん…来いよ」

放三郎の目の前で大きく脚を開いて往壓が艶然と微笑んだ。
熱を帯びた往壓の身体から発する甘い匂いに蠱惑される。
ゾクリと背筋を駆け抜ける痺れに、放三郎は喉を鳴らした。
往壓の膝裏へ手を差し入れると、限界まで張り詰めた熱芯を熟れた後孔へ挿し入れる。

「んぁっ…あああ…っ!」

背中の後ろで手摺りが大きく軋んだ。
敏感な粘膜を掻き分けて胎内を満たす熱に、全身の肌が一気に粟立つ。
往壓の最奥まで貫いた放三郎は、大きく肩で息を吐いた。
ネットリと舐めるように絡み付く粘膜の快楽に腰が痙攣する。
湧き上がる愉悦に耐えて動かない放三郎に、往壓が顔を顰めて焦れた。
「ふ…どうした?動けよ、ほら」
「あ…っ!?竜導ま…待てっ!」
「待てねぇよ」
腰を揺すって肉芯をキュウキュウと締め付けられ、放三郎は声を上擦らせて喘いでしまう。
戸惑いの色を浮かべる瞳を覗き込み、往壓が愉しそうな笑みを浮かべた。
淫猥に蠢く往壓の下肢を抱え直すと、小さく舌打ちして放三郎が大きく突き上げる。
「あっ!あ…ああぁ…っ!あ…小笠原さ…っ!」
「こうして…欲しいのであろう?」
「ん…う…ぁ…イッ…悦い…ぜ…もっと…来い…っ!」
「竜導…」
欲情の孕んだ双眸に見据えられた放三郎の身体中に淫蕩な熱が駆け巡り、凄まじいほどの陶酔感に目眩がした。
腰が浮き上がるほどに抱え上げ、上から叩き付けるように激しく注挿しながら往壓の胎内を掻き回した。
執拗に絡み付く粘膜を引き離して雁首まで引き抜くと、今度は押し開いて捻り込む。
胎内から零れ落ちる淫液が溢れ、グチュグチュと濡れた音が繋がる部位から殊更大きく響いた。
往壓の唇から漏れる甘い嬌声と媚薬の様な体臭に、放三郎は我を忘れてひたすら淫らな肢体を掻き抱く。
出窓へ後ろ手に両肘を着き、腰を捉えられただけの不安定な体位のまま乱暴に注挿を繰り返されると、いつも以上に快楽が昂ぶって往壓は身悶えた。
放三郎が視線を落とせば往壓の雄は腹に付きそうな程反り返り、鈴口は愉悦の蜜を止めどなく溢れさせている。
肉芯を掌で握るとドクンと大きく脈打ち、往壓が嬌声を喉で詰まらせ顎を仰け反らせた。
「は…あっ…小笠原…さん…も…達く…っ!出ちま…あぁっ!」
「私も…もう保たぬ…っ!」
「んん…っ…あんたの…俺ん中…全部…寄越せ…よ」
「りゅうど…っ」
限界まで膨張した熱が解放を求めて放三郎の腹の奥で逆巻いている。
往壓の胎内も咥え込んだ男茎を引き絞るように締め付けてきた。
放三郎は焦らさずに深々と最奥を抉って往壓を絶頂まで追い上げる。

「んぁ…あああっ…ああぁぁー…っっ!!」
「く…うっ!!」

感極まった嬌声を吐き出すと、往壓の雄が弾けて飛沫を撒き散らした。
ソレと同時に遂情に引きずられた粘膜が胎内の肉芯を強烈に絞り上げてくる。
放三郎もまた深々と挿入した最奥へと白濁を注ぎ込んだ。

「きっ…つぅー…」

吐精の余韻で放三郎が激しく胸を喘がせていると、往壓はぼやきながら出窓へ背中から崩れ落ちる。
未だ腰は放三郎と繋がったまま、下肢はプラプラと浮いた状態。
「脚…下ろしてぇんだが?」
「あ、あぁ…」
気怠げな往壓が不平を言うと、放三郎は慌てて腰を離した。
ズルリ、と胎内から熱を保った陰茎が引き抜かれる。
「んっ…あ…」
今まで散々貪っていた秘孔から覗く熟れた粘膜を注視し、放三郎の喉が小さく鳴った。
自ら吐き出した精に濡れる襞は、物足りなさそうに蠢いて誘っている。
半身を起こした往壓は視線に気付いて、前髪を掻き上げ苦笑浮かべた。

「…いっぺんじゃ治まんねぇか」
「あっ!いや…その…っ!」

我に返った放三郎は羞恥で頬を赤らめ、しどろもどろに言葉を濁らせる。
誤魔化そうにも身体は正直で、放三郎の雄は一度の吐精で萎えることなく屹立していた。
往壓は腕を伸ばして放三郎を引き寄せると、唇へ舌を這わせて吸い上げる。
「まぁ…誘ったのは俺だしな。それに俺もまだ…足りねぇ」
「竜導…私はっ!」
「………厭か?」
「お前に望まれて…厭な訳なかろう」
放三郎の真摯な告白に往壓は一瞬瞠目するが、直ぐに破顔した。

「とりあえず。折角床が敷いてあるんだから、な?」
「あ…あぁ…あっ!?」

立ち上がった往壓が放三郎へ抱きつくと、そのまま後ろへ一緒に倒れ込む。
「竜導っ!危ないではないか…っ?」
背中を打ち付けて顔顰めた放三郎が文句を言う前に口を塞がれた。
強引に唇を割り開いて滑り込んだ舌先が、口腔をねっとり舐ってくる。
強請るように絡み付く舌に応えて吸い上げると、腕の中の往壓が身体を震わせた。
互いの口腔を貪って唾液を注いで舐め合って、どちらからともなく唇を解く。
触れている往壓の唇に愉しげな笑みが浮かんだ。
何だか厭な予感がする。

「さっきはあんたの好きにさせたからな。今度は俺がさせてもらう」
「りゅっ…竜導!?」

慌てる放三郎を押さえ込んで跨ると、往壓は濡れた屹立を握り締めて自らの双丘へ押し当てた。



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