vacation
神城頼 sama

夏休みも近くなったある夜のこと。
先に帰宅した大学生の高耶は、夕食を作りながら同居人(というか同棲相手)である直江の帰宅を待っていた。
休むことなく手を動かしながら、ちらりと視線を時計にやればもうすぐ、9時。

「―――― もうすぐ、帰ってくるな」

直江は兄の不動産会社の東京支店を任されているのだが、それがこんなに帰宅が遅い理由ではない。
今日は週末、金曜日である。
だからといって、仕事の付き合いで飲みに行っているわけでもなく―――週末の殆どの帰宅時間はこんななのである。
他の日ならば、直江の帰宅時間ももう少し早いのだが、今週中に終わらせてしまいたいことをやって来てしまうため、週末はいつもよりも帰宅が遅れるのだ。
それを知っているから、高耶はその帰宅時間に合わせて夕食を作る・・・・・勿論、9時まで何も食べないとお腹もすくので、直江が遅くなるときだけは、何かをつまみつつ、料理を作るのだが。

夕食も殆ど作り終え、後は盛り付けるだけとなった頃、タイミングを見計らったようにチャイムがなり、直江の帰宅を知る。
その音が聞こえると高耶は、パッと表情が変化させ、着けていたエプロンを近くの椅子に投げかけ、玄関へと走る。

「直江! おかえり!」

出迎えた高耶を、直江は思わず抱きしめ口付けたい衝撃にかられるが、ここでそんなことをしようものなら、照れた高耶から殴られるのは必至。
その衝動を隠し、微笑を浮かべる。

「ただいま、高耶さん」
「晩飯、ちょうど今出来たところなんだ。ちょっとまってな今、テーブルに運ぶから」

そう言って身を翻すとパタパタとキッチンの方へと、消えていく。
そして、高耶が夕食を盛り付け、その間に直江が楽な格好に着替えてきて、それから漸く少々遅めの夕食である。
金曜日の夜は遅くなることが解っているから先に済ませていいと、直江は高耶に言ってあるのだが、一人で食べる食事は美味しくないとの理由から、結局毎回直江を待ってしまう高耶なのである。
それから。
夕食も終え、シャワーも浴びた後の寛ぎの時間。
不意に直江がその話を切り出した。

「そう言えば高耶さん。夏の予定は決まっていますか?」
「予定?」
「もうすぐ、夏休みでしょう?」
「うーん、一日中家でごろごろしているのも何だから、何かバイト始めたいけど・・・・今年もお前のところでバイトしていい?」
「勿論です。私の方はそのつもりでいたんですけど? ―――― そうではなく、何もなかったらどこかいきませんか? 例えば、海とか山とか。夏といったら、やはり海ですかね」
「海?」

 直江の言葉に一瞬複雑そうな顔をした高耶を見逃す直江ではない。

「もしかして――――嫌いでした?」
「いや・・・、嫌いってことはないけど・・・・、景虎としての力が目覚めて以来、どうもヘンなモンばっか見えるから海はあまり相性良くないんだよな。まあ、山も似たようなもんだけど、山の方がマシかなあ・・・」
「では、山にキャンプにでも行ってみますか?」
「二人で?」
「勿論です」

くすくす笑いながら言い合う。
が、こういう話には耳聡い夜叉衆同僚の某2人に内緒にしておけるはずもなく、いつの間にかどこからか話は漏れ、気づいたときには当初の予定の倍以上のメンバーでキャンプへと繰り出すことになるのであるが、それはまだ今は知らないこと。
話も決まり、時間は既にもうすぐ日付も変わろうという頃。

「もうこんな時間ですね」
「え? あ、本当だ。いつの間に・・・・。そろそろ寝るか」

ふい・・・と直江から顔を逸らして足早に寝室へと消える高耶を、直江は抑えた笑みで見送り・・・・やや遅れて後を追う。
週末の夜は、暗黙の了解で『そういう日』になっているのだ。
一緒に暮らし始めてすぐの頃は、新婚さながらに、流石に毎日とまではいかないまでもそれに近い頻度で身体を重ねていた二人だが、そのうち、いつしか週末の夜は身体を重ねる日として二人の間に暗黙の了解が出来てしまったのだ。
といって、平日にそういうことを一切しないかというと、まあ、そういうことではないのだが。
そんなわけで、変に意識しているかのような高耶にクスクスと笑みを零しながら、直江は照明を落とした寝室へと入っていった。
そのまま、部屋の明かりは点けることなく、高耶の身体で半分だけこんもりと盛り上がっているベッドへと潜り込むと、背後から抱きしめ、そのまま項に口付ける。
落とした唇をずらしていくと、高耶の身体がピクンと震え、小さく吐息が漏れた。
腕の中でその身体を反転させると、耳元に低い囁きを浴びせ、口付ける。
同時に両の手は、邪魔な服を剥ぎつつ、高めるための愛撫を施していく。
身体を弄る手の動きに、体温が上昇し、触れるその手に伝える頃には、高耶の唇からは甘い悲鳴混じりの吐息が漏れ出しはじめ・・・・。
そして――――。
高耶の甘い喘ぎと、絡み合う二つの荒く熱い吐息に支配され、その夜は更けてゆくのであった。


いっつも九州方面でお世話になってます、神城さんのサイトで「むぎゅっ」とキリ番を踏んづけまして頂きました〜おお〜直高でパラレルだ〜♪
高耶さんってば可愛すぎっ!!そんなに直江を甘やかしちゃダメだってーっっ!!
直江は犬扱いされてこそ直江なのっ!(人でなし)
早く千秋と姉さん邪魔をして〜♪
夏コミ原稿で忙しい時にありがとうございましたっ!!
夏コミ新刊も読むの楽しみにしてます〜♪