The Future Attraction |
僕もベテランの域の保育士になりました。 お勤めしている『桃ヶ丘保育園』でも主任を任されています。 勿論僕自身はまだまだ学ぶべきコトが沢山ありますが。 ゆくゆくは自然豊かな場所で保育園を開きたい夢もあったり。 当然夢の実現にはそれなりに資金が必要ですけど…悟浄!鼻をかむならティッシュは1枚で充分です!! 2枚重ね2度かみ厳禁ですよっ! ふぅ…困ったヒトです。 こういう節約は日頃からの生活で身に付けていかないといけません。 あ、そうそう。 悟浄ですが、説明するまでもなくラブラブ同棲中ですvvv 夫婦と言っても過言じゃありませんがっ! そんな悟浄は、大学を卒業できましたよ!まさにミラクルです! やっぱり要領がいいんでしょうかねぇ。 まぁ、捲簾さんに蹴ったり殴ったり(?)懇々と説き伏せられ、単に遊びたいだけで大学院へ進むのは反対されました。 悟浄もこの先僕との愛満ち溢れる将来があることですから、取りあえず真剣に考えたようです。 こう言ったら悟浄凹んじゃうので言いませんけど、悟浄は企業から引く手数多の理系の学部の中でも余り…というか使い回しの利かない学科を専攻してたんですよ。 それこそその道を進んでいけば、将来は大学で教鞭を執るか学者になるしかない…ような。 あの悟浄が先生とか研究者ってガラじゃないでしょう?あっはっはっ! 本人もその辺一番承知していますから、とりあえず方向性だけ類似している職業に就いた訳です。 なんと、悟浄ってば気象予報士なんですよ! でも、テレビに出ているようなお天気お兄さんじゃありません。 気象データーを収集・解析して官公庁や企業へ情報提供している会社へお勤めしています。 色々大変みたいですけどね。 それこそ新人の頃は台風が発生する度に日本全国どころか世界中飛ばされてましたから。 まぁ、じっとしてるのが苦手な人なので、案外性に合ってるらしく楽しそうでした。 その間悟浄と逢えないのは寂しかったですけど、毎日お互いパソコンでカメラ通信していましたよ。 インターネットが普及していて良かったです。 今は前ほど出張はないようですが、たまに海外へ出かける程度ですね…。 ちょっと悟浄!紅茶はティーポットで煎れるんですっ!カップで煎れたら1杯しか飲めないけど、ポットだと2〜3杯は飲めるでしょうっ!! ………何か言いましたかぁ? あ、すみません。 話が逸れましたね。 そうそう、僕の従兄弟である天ちゃんと捲簾さんも、相変わらずラブラブです。 ただ…ラブラブ過ぎて最近ちょっと色々大変なんですよ。 あれから10年…捲簾さんの息子さん簾クンも立派に成長して中学生です。 悟浄曰く、本っ当に昔の捲簾さんそのままソックリ男前になりました。 捲簾さんと並ぶとやはり多少未成熟な身体の柔らかさなんかはありますけどね。 簾クンが子供の頃に悟浄が言っていた戯言の『将来は捲簾さんに似てモテモテ』も、まさに予言通りになってます。 悟浄なんかは確信犯の捲簾さんと違って簾クンの方が天然だから、質が悪い…そうですよ。 そんな簾クンですが。 まぁ、所謂思春期真っ直中でして。 天ちゃんとお父さんの関係は当然理解している訳です。 昔から天ちゃんも捲簾さんも隠す気は更々ありませんでしたね。 自分の置かれている環境について世間様とは違うことは分かっていますが、そのことを卑下するとか嫌悪を抱くことは無いらしくって。 ある意味達観しちゃってるんでしょうか。 そうせざるを得ないでしょうけど…あの二人相手にして生活していれば。 でもっ! 無邪気な笑顔であんなこと訊かれたら…困るんですよ。 どう旨く答えたらいいのか。 本当のことを教えればいいんでしょうか? でも悟浄が真っ赤な顔で怒りますし…。 「…あれ?れーん?コレ何だよ〜vvv」 「え?首が何?何かついてんの??」 学校帰りに悟浄の部屋で八戒特製ロールケーキを頬張っていた簾は、指差された首筋に手を当てた。 フォークを咥えたままきょとんと目を丸くする。 そんな甥っ子を悟浄は含み笑いを浮かべながらツンツン突っついた。 「キ・ス・マ・ー・ク!じゃねーの?」 「ええっ!?」 お茶を入れていた八戒は驚いて、簾の首筋を注視する。 確かに、簾の肌には鬱血したような跡が残っていた。 楽しげにからかう叔父に慌てるその恋人。 しかし当の簾は取り乱すこともなく、平然とした態度でケーキにフォークを入れた。 「あー…何か噛みついてるなーって思ったんだけど気付かなかった。ま、もう会わないから別にいーけど」 ケロッと返事する簾に、八戒と悟浄は顔を見合わせる。 テーブルの下で八戒に脚を蹴られた悟浄は、仕方なさそうに肩を竦めてから、確信はあるけどいちおう問い質した。 「えーっと。彼女じゃねーんだ?」 「違うよ〜。俺彼女なんていねーもん」 「ふーん…じゃぁ、セフレ?」 「ん?そんな感じ。フレンドってゆーほどヤラねーけど」 「簾クンッ!そんなことダメですっっ!!」 八戒は憤慨して簾へ詰め寄るが、当の本人はちょこんと首を傾げる。 「何で?父さんも天ちゃんもごじょちゃんも『経験は大事だっ!今のウチにヤレるだけヤッて、真実の愛を見つけろ!!』って言ってるし」 「悟浄おおおぉぉおおおっっ!!!」 「ぐえええぇぇ〜っっ!!」 真っ赤な顔で激怒した八戒がとんでもないことを教え込んだ悟浄の胸倉を掴んでギリギリ締め上げた。 騒がしく揉め出す二人を簾は不思議そうに眺める。 八戒の怒る理由が全く分かっていないらしい。 「貴方たちは…貴方たちは青少年にとんでもないことを吹き込んでっ!」 「俺は…っ!八戒との運命の出逢いまでを…そこまでの経験を話した…だけ…だってばっ!」 「尚更悪いですーっっ!!」 力一杯悟浄の頭をガクガク揺さ振ると、八戒は真剣な眼差しで簾を振り返った。 「いいですか?そういうことは…その…お付き合いをする方とだけすることです!経験値だけ積んでも何の意味もありませんよ?これからは簾クンが本当に心から愛する方と結ばれる為に…その…しましょうねっ!?」 「ふーん…父さんはヘタクソッ!て言われないようにテクを磨いて頑張れ♪って言ってたんだけど」 「………今度お父さんには僕からよおおおぉーっくお話ししておきますから」 「う〜ん…」 必死に八戒が説得すると、簾はとりあえず頷いた。 こんな話はこれまで。と言わんばかりに、八戒は気を取り直してカップに煎れたお茶を簾へ差し出す。 酸欠から持ち直した悟浄はグッタリとテーブルに懐きながら、無邪気にケーキを食べる甥っ子を見つめた。 「んでさー…セフレはともかく。簾は好きなコいねーの?」 「んん?今は…いないなぁ」 「そんなに急ぐことないでしょう?簾クンにだって僕にとっての悟浄みたいに、そのうち運命のヒトが現れますよ」 「だと…いいなぁ」 フォークを銜えた簾は、切なげに溜息を零す。 「簾はさ、どーいうコがいいんだ?どんなタイプが好きよ?」 とりあえず素朴な疑問を甥っ子に向けてみた。 考えてみれば、そう言う話を改めてしたことがない。 「俺?そうだなぁ…スッゴイ美人で〜何て言うか『コイツは俺がいないとダメだっ!』て感じに構いたくなるような感じで〜いっつもハラハラドキドキさせられて。でも俺のこと滅茶苦茶愛してくれるコ…かな?」 「………そっか」 「………居るといいですね」 八戒と悟浄はバツ悪そうに視線を逸らした。 簾の好みのタイプは、まんま誰かを連想させる。 因果応報。というか、三つ子の魂百までというか。 「この世に天蓬みたいなヤツなんか二人もいねーよな?」 「居たらヤですよ」 八戒と悟浄は思いっきり脱力した。 そんな二人の危惧に簾は気付かない。 しかし、二人の心配を余所に、無邪気な青少年はとんでもない爆弾発言をした。 「でもさ。父さんもごじょちゃんもそうみたいだから、俺もケツは一番好きな人の為にまだ誰にも触らせてねーからっ♪」 「ーーーーーっっ!?」 「……………………。」 頬を染めて恥ずかしそうに告白する甥っ子の認識に打ちのめされ、悟浄の頭は羞恥で弾け飛ぶ。 八戒もどう返事をすればいいのか。 そうですよ。と言うのも変だし。 かと言って、それじゃ運命のヒトは男限定になっちゃいますよっ!と自分が諭すのもどうかと。 悟浄に助けを求めようと視線を向ければ、すっかり放心状態で硬直してるし。 えーっと…えーっと。 ココはひとまず。 「大切で大好きな運命のヒトが現れるまで、絶対お尻は死守しましょうっ!」 「うんっ!」 ニコニコと頷く簾に、八戒は引き攣った笑みを返した。 とりあえず簾の好みから言えば、お尻を犯されちゃってもいい理想の恋人はまず出逢いそうもないから。 万が一、天変地異で天蓬2号が簾の前に現れたとしても。 「簾クンがそれで幸せなら…仕方ないです」 八戒は諦めの溜息を漏らすと、少し温くなった紅茶をずずずと啜った。 |
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