”DokiDoki”Glamourous Life



意外と和やかに食事を終えて。
悟浄は満足そうに食後のコーヒーを堪能していた。
さすがに八戒お手製三段バースデーケーキは、ほんの少し食べただけで勘弁して貰う。
甘い物が苦手な悟浄がそれでも口を付けてくれたので、八戒は概ね満足したようだ。
後片付けを済ませた八戒は、何やら寝室でゴソゴソしている。

さて。
この後何をしでかすつもりなのか。

段々と悟浄の緊張も高まってくる。
誕生日には付きもののアレがまだだった。

プレゼント。

悟浄を溺愛している八戒が、何も用意していないはずがない。
プレゼントが貰えるのは嬉しいが、出来るなら悟浄のことを考えたモノを贈って欲しかった。
八戒の趣味だけは幾ら妻(笑)でも受け容れがたい。
ドキドキと期待とは違う何かで鼓動を高ぶらせていると、寝室の扉からひょっこり八戒が顔を覗かせた。
「じゃじゃーんっ!お待たせしましたっ!悟浄のお誕生日プレゼント抽選会ですっ!!」
「………はぁ???」

何で抽選会?

悟浄が目を白黒させていると、ニコニコ上機嫌で八戒が現れた。
その手には抽選箱らしい物を持っている。
悟浄が座っているソファまでやってきて、八戒が目の前で座り込んだ。
そうして悟浄に向かって箱を差し出す。
「この箱の中にクジが入ってます。悟浄に引いて頂いて、ソコに書いてあるモノをプレゼントしようと思って。面白いでしょう?」

…面白いのか?

何とも言えない表情で目の前の箱をじっと見下ろした。
「はいっ!1つクジを引いて下さいね」
ズイッと箱を突き付けられた悟浄は、仕方なしに開いている穴へ手を差し込んだ。
中には結構沢山のクジが入っている。
悟浄は適当に掻き混ぜると、1枚を引いて取り出した。
「はいっ!発表でーっす♪」
八戒は一緒に持ってきたCDラジカセのボタンを押す。
雰囲気を盛り立てるドラムロールまで流す周到さ。
ゆっくりとした仕草で、八戒が悟浄の引いたクジを開けていく。
開けたクジを見つめて八戒が頷いた。

「プレゼントの発表ですっ!悟浄へのプレゼントは、天国に一番近い島、ニューカレドニアに別荘をプレゼント〜vvv」
「何だとおおおおぉぉっっ!?」

悟浄が絶叫しながら八戒からクジをむしり取る。
確かに『ニューカレドニアに別荘プレゼント』書いてあった。
「バカッ!そんな別荘なんか金掛けてどーすんだよっ!却下っ!!」
「ええぇぇ〜?何でですかぁ?」
「何でもっ!」
「だって…この前悟浄、テレビの旅行番組見てて、いいなーって言ってたじゃないですか」
「そりゃっ…言ったかもしんねーけどっ!別荘なんかいらねーよっ!のんびり遊びに行くのはいいけど」
「それぐらいじゃプレゼントになんないでしょうぉ?」

…コイツの金銭感覚はどうなってるんだ?

悟浄は顔を顰めながら、クジをグシャグシャ丸めてゴミ箱へ放り投げる。
「とにかくっ!別荘はいらねーからっ!」
「…分かりました。じゃぁ、もう1回クジ引いて下さい」
何となく厭な予感はしたが、言われたとおり悟浄はクジを引いた。
またしてもドラムロール。

「あっ!今度はAS350B3ですよっ!勿論フル装備のっ! 」
「…チョット待て」
「ん?そんなムズカシイ顔をして…はっ!ヤダなぁ〜ラジコンなんかじゃないですよ?当然」
「もっと質悪いわっ!誰が誕生日にヘリなんか欲しがったーっっ!!」

悟浄が引いたのは最新型のヘリコプターだった。
八戒は小さく首を傾げる。
「前に悟浄とヘリの空中遊泳行ったじゃないですか?その時『こんなのたまにはいーなぁ』って言うから、たまにはじゃなくって好きな時に飛べるようにしようかな〜って?」
「いーらーねーっ!!第一保管するのだって金掛かるんだぞっ!」
「あぁ、そんなの。観音に頼んで屋上にヘリポート作れば大丈夫ですよ」
「…頼むから勘弁して」
箱を抱えて項垂れる悟浄を、八戒は不思議そうに見つめた。
悟浄の庶民感覚は八戒に通用しない。
「もー、何でもいいけど普通のっ!もっと些細なモンは入ってねーのかよっ!」
「んー?いちおう悟浄が欲しいな〜って言っていたモノを厳選して入れてありますけど?」

俺が何時別荘やヘリを欲しいって言った?

悟浄はムキになって箱の中を掻き回すと、クジを八戒へ突き付ける。
「もうドラムロールはいらねーから、さっさと開けて」
「悟浄もせっかちさんですねぇ」
言い返したいのは山々だが、もう何でも良いからさっさと選びたかった。
そして悟浄が引き当てたのは。
「えーっと…ハーレーですよっ!今度はどうですか!?」
「も…それでいい」
今度はハーレーダビッドソンのバイクだった。
今までのモノに比べれば全然マシだ。
確かにハーレーは前から欲しいと思っていたから、素直に嬉しいと思える。
それでも金額的にプレゼントとして適当とは思えないが。
この後に突拍子もないモノを引き当てるよりは全然いい。
「じゃぁ、明日にでも一緒にバイクショップで注文しましょうね?」
「あぁ…さんきゅー」
「どういたしましてvvv」
悟浄から箱を取り戻すと、八戒は嬉しそうに微笑んだ。

さて、プレゼント抽選会も終わった。
というより、終わってしまった。

悟浄のこめかみがピクピクと引き攣る。
突っ込みたくは無かったが言わずにはいられない。
「あのさ…八戒?」
「何ですか?悟浄っvvv」
「その扮装は…何の意味で?」
「悟浄のために用意しましたっvvv」
「何でお前がフェロモン系お姉ちゃん御用達の総レース下着姿なの?」

そう。
寝室から現れた八戒は、純白の総レースボディースーツを着用していた。
勿論フリル付きガーターベルトに、レースシームレスの入ったストッキングまで穿いた念の入れよう。
頭にはウサギの毛で作られた正しくウサギの耳まで生えている。

何がどうなったら俺のためなのか?

肉感的なナイスボディーのお姉ちゃんが着ればそれこそイイカンジだろうが、男の八戒が着ても滑稽すぎる。
第一思いっきり腰まで切れ上がったハイレグカットのボディースーツなのに、膨らみまくった股間の辺りが厭だった。
悟浄が顔を引き攣らせていると、八戒が自分の姿を見回して小さく頷く。
「可愛いでしょvvv」
「何でっ!?」
やっぱり八戒の嗜好はどこか壊れてる。
何で嬉々としてそんな格好が出来るのか、悟浄は不思議でしょうがない。
「だって〜僕は悟浄の好みを忠実に再現しましたよ?」
「…どの辺が?」
「悟浄が愛読している雑誌の人気ナンバー1プレイメイトのコスプレにチャレンジしたんですからっ!」
「そんなチャレンジはすんなーっっ!!」
「はっ!まさか…悟浄は色気過多のお姉さんがお好きだとばかり思ってたんですが…体操着とブルマーの方が萌えますか?」
「俺はロリコンじゃねーよっ!バカッ!!」
悟浄がバンバンとソファを叩いて、涙ながらに抗議する。

もーヤダ…何だって誕生日にこんな目に遭わなきゃなんねーの?

エグエグと涙に咽ぶ悟浄に、八戒は本気で困惑した。
「そんな…でもそうしたら僕に残されるのは技しか…赤富士開脚吊り縛りなんかどうでしょう?」

そこで困ってSMなのかよっ!
もーっ!もおおおおぉぉぉっっ!!

「俺は知らねーっっ!!」
勢いよく悟浄が起き上がり、両手で思いっきりソファを殴りつけた。

ヒラリ〜。

八戒の目の前に何かの紙が落ちてきた。
悟浄が落としたモノらしいが。
拾ってソレを確認した八戒の表情が途端に輝き始める。
「悟浄おおぉぉっ!!」
「あ?んだよ…ってあああああぁぁっっ!?」
八戒が手にしているのは、爾燕から取り上げたSMラブホのご招待券。
悟浄の身体が瞬時に硬直した。
気まずい空気に脂汗がドッと身体中から噴き出してくる。

マズイ…マズイマズイマズイったらマーズーイーーーっっ!!

「悟浄ったら…そうだったんですねぇ」

何がっ!?

「もー。ちゃんと言って下されば…でも大丈夫っ!こんなホテルの設備にも負けない道具と僕の技で満足させて上げますからねっ!」

ガシッ☆

力一杯悟浄の肩を八戒が掴んだ。
そのまま勢いよく担ぎ上げられ、悟浄は顔面蒼白になって慌てる。
「ちょっ…違…っ…は…八戒ぃ〜っ!!」
「任せて下さいっ!悟浄は何も心配することはありませんよっ!目眩く官能の一夜を過ごしましょうvvv」
「いやああああぁぁぁっっ!!!」

パッタン☆

寝室へ強制連行された悟浄は。
自分の誕生日が終わってもなお、明け方まで八戒のおもてなしを受ける羽目になった。



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