Glamourous Life ’

「はっ…八戒ぃ〜」
「何ですか、悟浄vvv」
「も…勘弁して…っ」
息も絶え絶えに、悟浄はグッタリと脱力する。
「そんなぁ〜、またまた遠慮なんかしちゃって♪」
「んなもんするかっ!ボケッ!!」
「あ、やっぱり元気じゃないですか〜」
ハンディカム片手に八戒はニッコリと微笑んだ。
「何だってハメ撮りなんかするんだよぉ〜」
さっきから散々文句を言っているが、やはり言わずにはいられない。
今の悟浄の現状は。
あちこちはだけられてはいるものの、スケスケピンクのベビードール姿のまま。
何故か両手首と足首は鎖付きの手枷と足枷で、大股開き状態でガッチリ拘束されていた。
しかも首輪まで付けられて、鎖でベッドヘッドに繋がれている状態。
無理矢理開かされた下肢を覗くと、ズップリ八戒の怒張がインサートしていた。
八戒は深く浅く腰を進めながら、グチュグチュと濡れた淫音を漏らす悟浄の秘孔をカメラのズームで撮影している。
「あ、悟浄ってばスゴイですよぉ〜。僕のモノに絡みついて…ナカの粘膜も真っ赤に充血してて、イヤラシイなぁ〜vvv」
「いちいち実況中継すんなっ!」
あまりの恥辱に、悟浄は全身を紅潮させた。
恥ずかしがる悟浄の姿を見下ろして、八戒は楽しげに口端を上げる。
「でも悟浄って恥ずかしいことされるの大好きでしょ?」
「誰がっ…お前が変態過ぎるんだっ!」
「…嘘つきさんですねぇ」
八戒は手にしたローターをペロリと舐めると、濡れて屹立する悟浄の雄に押しつけた。
「ひっ…やぁっ!!」
機械的な振動に感じやすい自身を弄られ、悟浄が甘い嬌声を上げて仰け反る。
根元から裏筋を撫で上げ、先端の割れ目を辿ると悟浄の腰が淫猥に跳ね上がった。
「や…っ…はっかいっ…んぁっ」
「いやじゃないでしょう?だって悟浄ってば自分からローターに擦りつけてるじゃないですかvvv」
「だ…って…とまんねっ…ああんっ」
悟浄は小刻みに腰を上下に振り立てる。
あまりの気持ち悦さに、腰が勝手に蠢いた。
「もぅ…悟浄のココってば、お漏らししすぎでヌルヌルですよぉ〜」
カメラはローターで弄られる先端をズームで撮している。
「ちっちゃなおクチは開けっぱなしで…すごい溢れてきますね」
ローターを強めに押しつけた途端、レンズに向かって白濁が飛び散った。
「………あれ?」
八戒がレンズから視界を外すと、ベッドには息を乱して悟浄が痙攣している。
「悟浄ってば…狡いですよぉ」
「うっせ…お前がネチネチ弄くるからだっ」
頬を興奮で紅潮させた悟浄が、瞳を潤ませ睨み付けた。
「…やっぱり、こういうの好きなんじゃないですか」
「…たまには、だ。エロ八」
「その僕にイヤラシイことされて悦んでるのは悟浄でしょ?」
「だーかーらーっ!その…久々だから…だろ?」
「そうですよ…ここんとこ悟浄ってば仕事忙しくて、僕のこと全然構ってくれないから」
八戒は一旦カメラを置くと、悟浄の拘束を外す。
「…ごめん」
少し痺れたままの腕を上げると、悟浄はぎゅっと八戒にしがみ付いた。
「それに…今日は僕たちの結婚記念日なのに、忘れてたでしょ?」
悟浄をしがみ付かせたまま、八戒はベッドへそっと倒れ込む。
「…ごめん」
バツ悪そうに謝りながら、悟浄は八戒の肩口に顔を伏せた。
八戒は悟浄の頭を優しく撫でる。
「本当のこと言うと、僕もちょっと前まで忘れてたんですよ。だから悟浄に前もってお休み取ってくれるようにお願い出来なくて」
「ん…でも、俺が覚えてれば先に休み取れたんだから、それはお互い様だろ?」
悟浄は顔を上げると、照れくさそうに微笑んだ。
同じように八戒も微笑み返して、悟浄の唇を何度も啄む。
「悟浄、今日は何時に出かけるんですか?それまでは僕とこうしていてくれます?」
「え?今日はもう出かけねーけど…」
「………はい?」
八戒が微笑みを貼り付かせたまま小首を傾げた。
「今朝で証拠はある程度押さえたから、後は兄貴がそれでクライアントに報告書作って渡すだけだし」
「と、言うことは?」
「今まで返上した休みもあるから、3日間休み」
ニヤッと口端を上げて悟浄が楽しげに笑う。
八戒は悟浄の意趣返しに、しばし呆気に取られて言葉を無くした。
頭がようやっと悟浄の言葉を吸収して理解した途端、思いっきり脱力して悟浄の上に突っ伏す。
「ごぉ〜じょ〜っっ!!」
「くくくっ…どーよ?ビックリした?」
「それならそうと、早く言って下さいよぉ〜」
悟浄の耳元でブツブツと八戒が愚痴を零した。
「早く言ったからってどーなんのよ?こうやって寝込み襲われて、SMイメクラ強要されなかった訳?」
「それは…」
さすがに八戒も言葉を詰まらせる。
「言ってたって、どうせお前は同じコトしてただろ?」
「それはっ…そうですけどっ!」
「…ちょっとは否定しやがれ!」
ゴツッと悟浄が八戒の頭を小突いた。
「イタッ…だってぇ、折角の結婚記念日だから、すっごいヤラしいことしたかったんですよぉ〜」
「てめぇは何時だってスケベだろ」
「悟浄は違うんですか?」
「…オトコはもれなく全員スケベに決まってるだろ」
ガシッと八戒の頬を掴むと、悟浄は思いっきりディープキスを仕掛ける。
「んっ…ふ…ぁっ」
互いに角度を変えながら、濃密に舌を絡ませて相手の口腔を舐った。
悟浄は溢れる二人分の唾液を、何度も喉を鳴らして飲み下していく。
触れる舌先を強く吸い上げられると、背筋をゾクゾクとした快感が駆け抜けた。
「ふ…っ…んぁっ…う…ぅ」
名残惜しげに唇を解くと、強請るような声を漏らしてしまう。
悟浄の瞳は欲情を孕んで淫らに濡れていた。
その表情だけで八戒の雄は簡単に煽られる。
「でも…僕は悟浄限定でスケベですから」
「ん…当然だろ」
悟浄は八戒の唇に触れると、甘噛みしながら舌を這わせた。
「ねぇ、悟浄は?」
唇を触れ合わせたまま、八戒が掠れた甘い声で囁く。
「俺?綺麗なお姉ちゃんにはもれなくスケベだけどぉ〜」
不機嫌そうに眉を顰めて、八戒が繋がっていた悟浄の秘孔を思いっきり突き上げた。
「あんっ…ばっか…いきな…あぁっ」
甘い嬌声を上げて、悟浄が腰を蠢かす。
「全く…浮気なんかしたら、承知しませんからねっ!」
「は…あっ…八戒ぃ…っ」
激しい突き上げに、悟浄は両脚を八戒の腰に絡ませて身悶えた。
「こんなイヤラシイ身体をして。僕しか貴方を満足させて上げられないでしょ?」
「んっ…んぅ…っ」
悟浄は全身を快感で紅潮させながら、何度も首を縦に振る。
ギシギシと激しくベッドを軋ませて、二人とも快感を追って腰を激しく振り立てた。
「悟浄、返事は?」
「あっ…あぁっ…はっ…」
すっかり意識を飛ばした悟浄は、恥ずかしげもなく嬌声を上げ続ける。
ふと、八戒が腰の動きを止めた。
「あんっ…やっ…八戒っ…もっとぉ…っ」
突然止まった律動に、悟浄が強請って腰を擦り付ける。
「ちゃんと答えたらいくらでもシテあげます」
「な…に…っ?」
「ぜーったいっ!浮気なんかしたらダメですよ?」
真剣な顔で八戒が悟浄を見下ろした。
呆気に取られ、悟浄は瞳をパチクリと瞬かせる。
「…多分」
「たぶんーーーっっ!?」
悟浄の腰を抱え上げ、怒りのままに八戒が悟浄を大きく突き上げた。
「ああんっ…だってぇ…やぁっ」
ビクビクと身体を震わせて、悟浄は八戒の肩口にしがみ付く。
「浮気しないって言いなさいっ!」
「んっ…し…ないっ…しないからぁ…っ」
「本当ですね?」
コクコクと悟浄は頷いた。
八戒が漸く満足そうに微笑むと、悟浄が身体中で縋り付く。
「なぁ…八戒ぃ…」
甘えた声音で囁くと、下肢で咥え込んだ八戒の雄をぎゅっと締め付けた。
「あっ…」
悟浄の粘膜に包まれた肉芯がドクンと大きく脈打つ。
「んぁっ…すっげ…おっきぃっ!」
腰をもぞもぞと身動いで、悟浄がウットリと呟いた。
「八戒…早くコレで…奥の方グチャグチャに突きまくってvvv」
悟浄が卑猥なお強請りをしつつ、腰を上下に蠢かす。
八戒のなけなしの理性がブチブチッと派手に焼き切れた。
「ごっ…ごじょおおおぉぉっっ!!!」
思いっきりキレた八戒が、悟浄の腰を抱え上げて激しい注挿を再開する。
「あっ…あんっ…はっかいっ…すっげ…あ…ソコッ!もっと〜vvv」
「ココですねっ!!」
ガクガクと身体を揺さ振られながら、悟浄はコッソリほくそ笑んむ。

『八戒って、嫉妬するとスッゲェ激しいんだよなぁ〜。今日はそんな気分だし、気持ち悦くてラッキー♪』

さすがに豊富な経験の持ち主である妻(笑)の方が一枚上手だった。






…えーっとぉ。とりあえず、二人でお祝いしようかなぁ〜、なんて食事も豪華に用意してあるんですけど――――――起きあがれます?」
愛想笑いを貼り付けて八戒が小首を傾げた。
ベッドに俯せで撃沈したまま、悟浄が首だけ横に向ける。
「…起きあがれると思うか?」
「無理…ですよねぇ…あははは」
煽った自覚もあるが、ここまで八戒が暴走するとは悟浄にも計算外だった。
下肢には全く感覚が無く、身体中の節々がギシギシと悲鳴を上げている。
「どうしましょうか?」
一応殊勝な態度で、八戒が悟浄へとお伺いを立てた。
自分でもヤリ過ぎたという自覚はあるらしい。
折角の結婚記念日に悟浄を下手に怒らせて、気まずくなりたくもなかった。
悟浄は髪を掻き上げながら、盛大に溜息を零す。
ハードな運動のせいで確かに空腹だった。
よく考えれば夜中に尾行している間、コンビニのおにぎりを1個食べたきりだ。
自覚すると余計に腹が減ってくる。
「…こっち持ってこいよ。折角作ったんだろ?」
「じゃぁ、直ぐに準備しますね」
嬉しそうに満面の笑顔で八戒がキッチンへ向かった。
程なくして寝室の中が美味しそうな匂いで一杯になる。
八戒は組み立て式のテーブルをベッドサイドへ置き、そこへ料理を次々と並べていった。
「…何時の間にこんなの用意したんだ?」
あまりの豪華さに、ベッドヘッドに凭れながら悟浄は唖然とする。
「昨夜から昼までずっと仕込みしてたんです。あとは暖め直したりするぐらいですから」
シャンパンを片手に八戒が何でもないことのように笑った。
「ふーん…」
照れくさそうに悟浄が視線を逸らす。
ポンッと軽快な音を立てて、シャンパンの栓が抜かれた。
グラスに注がれる淡い琥珀色に間接照明が反射して輝いている。
「はい、どうぞ」
八戒は悟浄へグラスを渡した。
「それじゃ、乾杯しましょうね」
「………。」
改めて言われると、何だか妙に恥ずかしくて落ち着かない。
ソワソワと視線を泳がせている悟浄に、八戒は小さく笑みを零した。
「悟浄、これからもずーっと誠心誠意尽くして、悟浄のこと幸せにしますからね」
「ヤダ」
あっさりと悟浄が即答する。
「悟浄…そんなっ!?」
ガーンとあからさまにショックを受けて、八戒が硬直した。
そんな様子を眺めて、悟浄はニヤッと口端に笑みを刻む。
「俺だけ幸せになったって意味無いだろ〜?お前もだ、お前も。この場合『一緒に幸せになりましょー』だろ?」
悟浄は八戒の襟元を引き寄せ、軽く唇を合わせた。
「ほい、かんぱ〜い♪」
カチリとグラスの重なる音に、漸く八戒は我に返る。
見る見る八戒の頬が紅潮ていく。
「…悟浄ってば、カッコよすぎで卑怯です」
「俺は昔っからカッコいいのよ」
不満そうに拗ねる八戒へ、悟浄は心底楽しげに笑った。
グラスに口を付けて、八戒も苦笑する。
「じゃぁ、せいぜい僕のこと幸せにして下さいね」
「…いきなり図々しいぞ、コラッ」
二人顔を見合わせると、弾かれたように大声で笑い合った。
「とりあえずは、食事が終わったら改めて幸せを確かめ合いましょうね…身体でvvv」
「うそっ!?」
ニッコリ。
俺ってばやっぱり人生早まったかも知れない、と八戒に出会ってから何万回思ったかも知れない後悔を、悟浄はしみじみと噛みしめた。






数日後の日曜日。

ピンポ〜ン♪

リビングで新聞を読んでいると、インターフォンが鳴った。
ちょうど悟空は買い物へ出ていていない。
面倒くさくて三蔵が居留守を決め込むと、これでもかという程玄関先の相手は呼び鈴を連射してきた。
「チッ…うるせぇ」
仕方なしにドアフォンを取って、来客の顔を確認する。
「…何の様だ」
不機嫌さを隠しもせず、忌々しげに三蔵は吐き捨てた。
玄関先の映像には、大きな箱を持った八戒がニコニコと微笑んでいる姿がある。
『開けて下さいよ〜。先日のお礼を持ってきたんです♪』
「お礼…だと?」
『もう忘れちゃったんですかぁ〜?先日頂いた結婚記念日お祝いのお返しですよvvv』
「…忘れてた」
観音に頼んだきり、もう自分には関係ないとすっかり忘れ去っていた。
それにしても。
妙に気味が悪いほど上機嫌の八戒が気になる。
『さんぞ〜?』
「…今開ける」
仕方なしに玄関へと行き、ドアを開けた。
「こんにちは〜、先日は大変結構なモノを頂いちゃいまして♪」
満面の笑みを浮かべて、八戒が深々と頭を下げる。
不気味なほどの機嫌の良さに、三蔵の眉が不審げに顰められた。

大変結構なモノ?
ババァのヤツ、一体ナニ贈ったんだ??

頼むだけ頼んで観音が何を贈ったかまでは、三蔵も確認していない。
これだけ喜んでいるのだから、何の問題も無いはず。
無いはずなのだが。
相手が八戒だけに、何となく嫌な予感がした。
「これ、お返しです♪」
ズイッと三蔵の目の前に綺麗にラッピングされた箱が差し出される。
つい勢いに飲まれて素直に受け取ってしまった。
持ってみると結構重さがある。
「…何だこれは?」
三蔵が中身を確認しようと八戒の方へ視線を向けた。
すると、後ろのドアが勢いよく開く。
「さんぞーっ!ただいまぁ〜!あれ?八戒来てたの?」
買い物袋をぶら下げて、悟空が元気良く帰ってきた。
「あ、お帰りなさい。買い物へ行ってたんですか?」
「うんっ!駅前のスーパーでお一人様2つ限りで卵の特売してたんだ〜♪」
悟空はすっかり主夫が板について、毎朝欠かさず広告のチェックをしているらしい。
「そうなんですか〜。じゃぁ僕も後で行ってみましょうかね」
ニッコリと八戒は微笑み返した。
「そんで、八戒どうしたの?悟浄は??」
「今日はこの前のお返しを持ってきたんですよ〜。悟浄はお昼寝中なんです♪」
楽しそうに悟空と八戒が会話しながら、部屋の中に入っていく。
「…おい」
すっかり取り残された三蔵は不機嫌のオーラを撒き散らした。
「三蔵何してるんですか〜」
三蔵はズカズカとリビングへ戻ると、ローテーブルにドンッと箱を置く。
「それ、なぁに?」
冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出しながら、悟空が小さく首を傾げた。
「この前僕と悟浄の結婚記念日祝いを頂いたので、コレはそのお返しなんですよ〜」
「ええ〜?そんな気ぃ使わなくていいのに〜」
コーヒーをグラスに注いで、悟空がリビングへ持ってくる。
「あ、すみませんね〜」
グラスを受け取り八戒がニッコリと微笑んだ。
三蔵も無言のまま受け取る。
「折角ですから、開けてみて下さいよ」
八戒がスイッと箱を寄せ、悟空へと即した。
「そう?それじゃぁ…」
悟空は箱を目の前へ置くと、リボンを外しラッピングをカサカサと取っていく。
「何かすごい大きい箱だなぁ〜」
ようやく包装を外して、蓋を開けた。
「あっ!浴衣!?」
箱の中には二人分の浴衣と帯、下駄までセットで入っている。
悟空が瞳を輝かせて三蔵を見上げた。
「さんぞっ!ほら、お揃いの浴衣だよっ!!」
喜んではしゃぐ悟空を、八戒は満足げに眺める。
「来週、すぐそこの神社でお祭りがあるんですよ。悟空はそういうの好きでしょ?それなら三蔵とお揃いの浴衣でお出かけするのもいいかなぁ〜って思いまして♪」
「うんっ!お祭りに行こうって話してたんだよ〜!すっげ嬉しい!八戒ありがとうっ!!」
悟空は嬉しそうに微笑むと、取り出した浴衣を大切そうに抱き締めた。
大喜びの悟空を見て、三蔵も満更ではない。
どのみち週末にでも、浴衣を見に出かけようと思っていた所だった。
丁度よかったと、三蔵がふと視線を箱へと戻すと。
「…この箱は何だ?」
浴衣とは別に、もう一つ箱が入っていた。
すると、突然八戒がガシッと三蔵の両手を握り締めてくる。
三蔵はギョッと驚愕のあまり身体が金縛りにあった。
手を握り締めたまま、八戒がずいっと顔を近づける。
不穏な空気を感じて、三蔵の腰が後ろへと引けた。
「三蔵…僕は今まで貴方のことを誤解していたようです」
「はぁ??」
何を言い出すのかと、三蔵は眼を見開く。
更に八戒は顔を近づけた。
「貴方があ〜んなに素晴らしい趣味の持ち主だったなんて、僕はぜ〜んぜん知りませんでしたよ…フフフフ。」
あまりの不気味さに、三蔵の口端がヒクリと引き攣る。

コイツは一体何が言いたいんだ?

全く訳が分からず、三蔵は返事も返せない。
すると、八戒がナゾの箱を手に取って、三蔵に耳打ちしてきた。
「コレは最新のモノで、僕イチオシのお薦め品です。商品化されてますけど、まだ発売前なんですよ。僕が業者に依頼されて、デザインや使い勝手を監修したんですけどね。きっと三蔵も気に入ると思いますよ〜♪」
ひそひそと小声で囁かれ、三蔵の眉間に皺が寄る。
「だから、一体コレは何なんだよ」
つい三蔵もつられて小声で詰問した。
「そ・れ・は〜、見てからのお楽しみで。きっと悟空にも似合いますよぉvvv」
「…悟空に、だと?」
更に問い質そうとすると、不思議そうに悟空がこちらを眺めている。
「さてと!僕はそろそろ悟浄のお昼を用意しないといけませんので。おいとましますね♪」
その場を誤魔化すように、八戒が立ち上がった。
「え?もう帰るの〜?」
「すみませんねぇ。またゆっくりとお邪魔しますから。あぁ、明日あたりまた料理教室しましょうか?」
「うんっ!分かった!!」
浴衣を抱えたまま、悟空がニッコリと微笑み返す。
「それじゃ三蔵、お邪魔しました………頑張って下さいね♪」
通りすがりにボソッと囁くと、八戒は玄関へと向かった。
その後を悟空も追いかける。
一人リビングに残された三蔵は、未だ訳が分からぬまま手渡されたナゾの箱を開けてみた。
八戒を見送り、悟空がキッチンへと戻ってくる。
「さんぞ〜、コーヒーのおかわりいる…っ!?」
突然、悟空の身体がビクッと跳ね上がった。
何やらリビングでこちらに背を向けたままの三蔵から、怪しいオーラが噴出しまくっているような気がする。
唯ならぬ気配を動物的直感で感じ取り、悟空は恐る恐るもう一度三蔵へと声を掛けた。
「さっ…さんぞ??」
「クッ…ククククッ」
いきなり三蔵が肩を震わせて笑い出す。
ますます悟空は怯えて、その場を後ずさった。
「どうした?悟空」
振り向いて返事をする三蔵の表情は、悟空の知っている平素と変わらない。
「あ…あれ?」
悟空はパチクリと瞳を瞬かせ、しきりに首を捻った。
先程までの禍々しい不気味な雰囲気は気のせいだったのか?
「あ、三蔵…コーヒーおかわりいる?」
「ホットにしてくれ」
「うん、分かった」
いつもと変わらない様子の三蔵に悟空は安堵して、いそいそとコーヒーを落とす準備を始めた。
悟空の様子を確認しつつ、三蔵の視線は箱へと戻る。
一体箱の中身は?
「…今夜にでも使ってみるか」
口端に意地悪げな笑みを浮かべて、三蔵は小さく呟いた。

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