Neo Glamourous Life |
静まり返った夜更け。 ご近所の犬の遠吠えもやけに良く聞こえる。 時間は夜の9時。 夜更けと言うにはまだ早すぎる時間。 世間では夕食が終わってのんびりと一家団欒、もしくはくつろいでテレビでも見ている時間帯だろう。 そんな時間に。 暗闇の中コソコソと蠢く人影があった。 ギシッ…ギシッ… 抜き足差し足忍び足。 住居不法侵入したコソ泥のように、慎重に部屋の中を横切る足音が微かに聞こえてきた。 但し。 足音は室内ではなく、玄関に向かっている。 よぉーし!あともうちょい…。 漸く玄関に辿り着いて、靴を穿こうと身を屈めた途端。 「…どちらへお出かけですか?悟浄」 一斉に部屋中の電気が煌々と灯された。 あまりの眩しさに悟浄は顔を顰める。 光に眇めた瞳で視線を上げると。 悟浄の背後で全開笑顔で仁王立ちしている八戒が居た。 あまりの恐怖に悟浄はその場で金縛りに遭う。 「今日は張り込みのお仕事無かったはずですよねぇ?」 殊更優しい八戒の猫撫で声が、悟浄の恐怖心を煽った。 こっ…コ〜ワ〜イ〜ッ!! うっかり視線を合わせれば石にされてしまいそうだ。 いや、いっそのこと石になってしまえば、この底知れぬ恐怖から解放されるだけマシかもしれない。 それほど悟浄には八戒の笑顔が恐かった。 「僕が徹夜明けで早く就寝した時に限って、どこで!ナニを!しようと思ってたんですかぁ〜?」 「あ…いや…そのぉ…っ」 ストレートに悪巧みを見透かされて、悟浄の言葉が詰まる。 そう。 今日は半年に1回あるかどうかのラッキーチャンスディだった。 悟浄の夫(笑)八戒は、几帳面な性格だ。 何をするのも予定を立て、時間通りに動く。 八戒は表向き翻訳業をしているが、実際の職業は小説家。 しかも結構売れっ子の官能小説家だったりする。 日々仕事でお疲れのサラリーマン達に、一時のオアシスを提供する八戒は、絶大なる支持を受けていた。 連載も月に3本持っていて、それプラス新作の書き下ろしまでこなしている。 その仕事も毎月きっちりスケジュールを組んで、締め切りを遅らせたことは一度もなかった。 しかも大抵は締め切り日前に原稿を担当に渡している、出版社にとっては優良作家だ。 その八戒も。 ごく稀にスケジュールを狂わせることがあった。 突然舞い込む連載依頼や、表の翻訳業での仕事が増えた場合だ。 月々のスケジュールにそれらを組み込むことになるので、当然皺寄せが出てくる。 八戒の性格上、締め切りを遅らせることはプライドが許さない。 そうなると必然的に、どこかで無理をせざる終えなくなる。 結局対抗策で、何が何でも仕事を終わらせるために完徹しなければならなかった。 それが大体半年に1度あるかないか。 八戒がここまでスケジュールに拘るのには訳がある。 それは、愛する妻(笑)悟浄との時間が、仕事ごときで潰されるのが許せないらしい。 そんな八戒の妻(笑)悟浄の職業は、兄の経営する興信所で調査員をやっている。 仕事の内容は家出人の捜索や夫婦の浮気調査、はたまた迷子猫の捕獲まで多種多様。 当然、仕事の拘束時間も不規則になる。 出来るだけ愛する妻(笑)と一緒に過ごしたい八戒は、毎月頭に義兄から悟浄の1ヶ月のシフト表を貰って、自分の仕事のスケジュールを調整する徹底振りだった。 そして、今日。 八戒は久しぶりに徹夜明けで仕事を終えて、担当に原稿を渡すと早々に就寝した。 それが夕方。 悟浄が帰ってきてお腹を空かせてては可哀想だと、ちゃんと夕食の用意もしてからベッドに入った。 ところが、だ。 「ちゃ〜んと夕食も用意してあるにも係わらず、まさか今から食事に出る。なぁ〜んて言いませんよねぇ?」 優しげな猫撫で声で悟浄を詰問しつつ、八戒はゆっくりと悟浄へ近付いた。 あまりの恐怖に腰が抜け、玄関の低いたたきにしゃがんだままの悟浄は、涙目になって八戒を見上げる。 「ば…晩飯は全部食った!やー、すっげ〜旨かったなぁ〜」 「当然です。今日は悟浄の好物ばかり作っておいたんですから」 「…だから残さず食ったって」 バツ悪げにゴニョゴニョと言い淀む悟浄を、八戒はじっと見下ろした。 突き刺さるような視線を注がれ、悟浄はそわそわ落ち着かない。 「あれ?悟浄…何だか随分とお洒落してませんかぁ〜?」 ギクッ。 悟浄は落ち着かな気に視線を泳がせた。 普段の悟浄は動きやすさ重視で、簡単に羽織れるシャツやTシャツそれにストレートジーンズが定番。 TPOは弁えるが、大抵ラフな格好で過ごしていた。 ところが、今現在悟浄の服装と言えば。 何時だか八戒が悟浄のために購入してきた、少し細めの麻素材のストレートパンツにカッティングデザインがアシメントリーになっている身体にフィットした黒のカットブルゾン。 モデル張りの身長とスタイルの悟浄が着ると、髪の赤も映えて様になっていた。 そんなめかし込んだ格好で。 一体何処で何をしに出かけるつもりなのか。 八戒の双眸がスッと眇められる。 「飲みに行くだけなら、別に僕が寝静まったのを見計らってコソコソ出かけなくても良い訳ですし?しかもいつもならそんな身嗜みに気を遣ってわざわざ出かけたりなんかしませんよねぇ?僕とデートの時さえ平気で普段着のまま待ち合わせ場所に来る貴方ですからぁ?」 一旦言葉を切ると、八戒はうっすらと微笑みを浮かべた。 「こんな夜に…おめかしして何処に行くつもりだったんですか?」 ぎゃあああぁぁっっ!! こっ…こここここえぇーっっ!!! 瞳に凶悪な光を湛えた壮絶笑顔に、悟浄は悲鳴を喉で凍り付かせる。 恐怖に硬直している悟浄を楽しげに眺めながら、八戒が悟浄に近付いた。 気分は肉食獣に追い詰められる、か弱い小動物。 凄まじい恐怖ですっかり腰が抜けて、逃げたくても逃げられない。 心の中で大絶叫していると、八戒の手が悟浄に伸びた。 「ひっ!?」 無意識に悟浄はぎゅっと目を閉じ、大きな身体を縮こまらせる。 殴られるか蹴りをカマされるか踵落としを喰らうか。 身体に力を入れて衝撃に耐えようと待ち構えていたが。 危惧していた八戒からの攻撃は来ない。 気になって悟浄が薄めを開けて八戒の様子を伺うと。 「あっ!?何すんだよぉっ!!」 八戒の手には悟浄の携帯が。 いつの間にか胸ポケットから携帯が抜き取られていた。 取り返そうと手を伸ばすが、あっさり避けられてしまう。 「僕が見たら何か不都合でもあるんですか?」 「え?いやっ…だから…っ」 不都合なんかアリまくりに決まってる。 悟浄の全身からドッと嫌な汗が噴き出してきた。 さっさとこの場から逃走したいが、帰ってきてからの報復を考えると逃げるに逃げられない。 八戒の手酷い仕打ちを嫌って言う程身に滲みて分かっている悟浄は、ビクビクと怯えながら様子を窺った。 慣れた仕草で八戒が着信履歴やメールを確認している。 液晶画面を目で追っていた八戒の表情が徐々に無くなってきた。 能面のような無表情で視線だけ動かしている八戒を、悟浄は固唾を呑んで見守る。 はぁ…こんなコトなら履歴全部消去しておくんだった。 今更悔やんでも後の祭り。 証拠はシッカリと残されていた。 「悟浄ぉ〜?お義兄さんからのメール、コレ一体どういう意味なんですかねぇ?」 八戒の眩しすぎる全開笑顔が空恐ろしい。 しゃがみ込んだ八戒が、悟浄の襟首を掴んで強引に引き寄せた。 「ぐっ…ぐるし…いっ」 「何なんですか?『10時に集合。今日の相手は白衣の天使だぞ♪』って。看護士さんと合コンですか、ふぅ〜ん。しかもよりによって10時にセッティングなんて、この後何を期待してるんでしょうかねぇ〜?へええぇ〜」 うわーんっ!兄貴のバカぁっ!! 時間だけ知らせてくれればバレなかったのにーっ!! 仮に時間だけ知らせてきたとしても、悟浄がコソコソ家を抜け出そうとした段階で絶対八戒にはバレるに決まってる。 自分の挙動不審には全く気を遣っていない。 首を締め上げられた悟浄はジタバタと藻掻いていたが、ふいに八戒が手を離してポイッと突き放した。 「ぐ…う…ゲホゲホッ!」 大きく吸い込んだ空気に咽せて、悟浄は身体を丸めて咳き込んだ。 「悟浄…貴方ねぇ。人妻だって自覚あるんですか?貴方は正真正銘僕の奥さんっ!愛妻なんですよっ!!」 …ある訳ねーじゃん、そんなの。 思ってはいても悟浄は口にしない。 そんなこと言えば最期、この部屋の窓から外へ放り投げられる。 さすがに最上階の此処から転落すれば、生きては帰れないだろう。 悟浄が唸っていると、八戒は溜息交じりによろけて壁にへばり付いた。 額を押さえて瞳を伏せ、哀しげに苦悩する。 「僕はこぉ〜んなにも悟浄のことを愛しているのに…貴方には何一つこれっぽっちも僕の想いは伝わってはいなかったんですね」 掠れた声で小さく呟くと、綺麗な瞳からハラハラと大粒の涙を零し出す。 コレにはさすがの悟浄もギョッとした。 「はっ…八戒ぃっ!?何いきなり…泣いてんだよぉ〜!?」 悟浄はおろおろしながら、意味不明に手を振り回して困惑する。 とうとう八戒は悟浄の目の前で泣き崩れた。 悔しげに唇を噛みしめて涙を流す八戒の表情を、悟浄は呆然と眺める。 …何かミョーな気分に。 唯でさえ綺麗な八戒の顔が悲痛に歪むのに、つい悟浄は欲情してしまった。 着乱れたパジャマから覗く白い肌や鎖骨にムラッとくる。 しかも泣いている八戒はいつもと違って、儚げで清楚な色香を放っていた。 かれこれ八戒と結婚してから1年。 八戒を見てこんなに興奮したことはなかった。 しかし。 すっげぇ犯りてーんだけどぉ〜、なぁんて言ったら確実にキレて半殺しに遭うな。 どうしたものかと煩悶していると、悟浄を見つめる八戒に気付いた。 涙に濡れた瞳がキラキラ輝いて、どこぞの乙女真っ青可憐な美人っぷり。 正直に反応してしまった息子を内心で宥めつつ、物言いたげに見つめてくる八戒と視線を合わせた。 「な…何だよ?」 じっと八戒に見つめられて、心臓はドキドキと早鐘のように鼓動を打つ。 それが期待なのか恐怖なのか微妙な感じだが。 どうにも落ち着かなくて悟浄が身動ぐと、八戒が深々とこれ見よがしに溜息吐いた。 気怠げに携帯を持ち上げると、リダイヤルを押す。 何処にかけてるのかと悟浄が胡乱な視線を向けると、八戒は哀しそうに目を伏せグッスンと鼻を啜った。 悟浄の理性がグラグラと揺さ振られる。 おっ…怒るかな?やっぱ怒るよな?絶対ド突かれるよな? うわーっ!でも我慢出来ねーっ!! 疼く股間を押さえて、悟浄が上目遣いに八戒を見遣った。 あからさまに媚びを含んだ視線を向けてみるが、生憎視線を伏せている八戒は気付かない。 気付いてないのか、それともわざと避けているのか。 悟浄の理性が限界を超えようとした途端。 「あ、お義兄さぁ〜ん。八戒ですぅ〜♪」 コロッと態度が変わって、八戒が猫撫で声を出した。 しかも電話の相手は悟浄の兄。 一瞬冷水を浴びせられたように、悟浄の顔色が蒼白になる。 「今日はうちの悟浄を合コンに誘って頂いたようで♪あれ?違うんですかぁ〜?おっかしいなぁ〜だって今日のお相手は白衣の天使さん達なんですよね〜vvv」 妙に気合いの入った猫撫で声に、悟浄は恐怖で金縛りに遭った。 身体が震えてカチカチと歯が音を立てる。 電話の向こうでは、兄の爾燕が必死になって言い訳しているらしい。 八戒はいちいち頷き、にこやかに聞いている。 「まぁ、理由なんかどうだっていいんですけど。とにかく今日悟浄はそちらへ行けませんので。やっぱりねぇ〜悟浄は人妻ですからっ!あまりフラフラと夜に出歩くのは夫としては心配なんですよ。あ、でもお仕事なら別ですから。どんどん扱き使って下さって結構ですよvvv」 悟浄へ視線を向けながらニッコリ微笑む八戒の瞳があまりにも恐すぎる。 固唾を飲んで成り行きを見守っていた悟浄は、本気でチビりそうになった。 「え?あ、そうですかぁ〜?何だか気を遣わせちゃったみたいで。じゃぁ、明日悟浄はお休みさせますので♪あぁ、そうだ。今日いらっしゃる白衣の天使さん達には申し訳ありませんがお義兄さんの方でお断りしておいて下さいね?悟浄は僕の大切な奥さんですから…ふふふ」 最後の含み笑いが悟浄の運命を物語っていた。 しかも。 明日休みって何だよっ!? 兄貴も余計なことをーっっ!!! 明日が強制的に休み、ということは。 そうせざるを得ない状況にこれからなると。 先程の儚げな雰囲気の八戒相手ならともかく、今目前にいる妖しい笑顔を浮かべるオトコを相手にするのは勘弁して欲しかった。 八戒は携帯を切ると、悟浄を見下ろしながら楽しげに口端を上げる。 「さて。悟浄が合コンに行く必要は無くなりましたね」 「そ…そうだ…な…ははは」 力無く笑いを漏らすと、悟浄は床にガックリと突っ伏した。 もう逃げようもなかった。 魂まで抜けて逝きそうな溜息を漏らしている悟浄を眺め、八戒は小首を傾げて何やら考え込む。 「ふーん。そんなに合コンしたかったんですか?」 「合コンっつーか…たまにはこぉ〜違う方々と交流を暖めたいなぁ〜って?」 「交流ね…一体ドコを交流するつもりだったのか」 「いやんっ!ダーリンったら下品ヨ!」 「誤魔化されませんからねvvv」 「いや…だから…な…」 ダラダラと脂汗を滲ませて、悟浄は口籠もった。 突然床を這い蹲って上がると、八戒の足許にガバッと平伏す。 「ゴメンッ!俺が悪かったっ!!つい兄貴の言葉に釣られて…出来心っつーか気の迷いっつーか…マジでゴメンッッ!!!」 突然悟浄に土下座されて、八戒はまん丸く目を見開いた。 呪文のように謝り倒してくる悟浄を見下ろし、八戒はニンマリと質の悪そうな笑みを浮かべる。 八戒はその場に屈むと、悟浄の肩にそっと触れた。 「悟浄、分かりましたから。もう顔を上げて下さい」 「八戒…許してくれる?」 ウルッと瞳を潤ませて、悟浄が八戒の腰へと縋り付く。 「でも、悟浄は看護士さん達とあわよくばっ!とか期待してたんですよねぇ」 「いやっ!全然っ!そんなことこれっぽっちも考えてなかったしっ!」 悟浄が必死になって首を振った。 勿論大嘘だ。 期待に胸と股間を膨らませて、上着のポケットにはちゃっかりゴムまで持参していた。 しかしそんな見え透いた言い訳、八戒には全てお見通しだ。 怯えて見上げる悟浄に、八戒が双眸を和ませる。 「そうですか?悟浄がそぉ〜んなに看護士さんがお好きなら、その願い叶えて差し上げましょうねvvv」 「…………………………はい?」 「題しまして。白衣の天使、お仕置きプレイです〜vvv」 「はぁいぃぃ〜っ!?」 ウットリと妖しげな瞳で見つめられ、悟浄の顔を思いっきり引き攣った。 八戒はガッチリと悟浄を捕まえ、床をズルズル引きずりだす。 「ささ。お着替えしましょうね〜。いやぁ〜楽しみです…ふふふふ」 「着っ…着替えって…まさかっ!?」 力ずくで八戒に引きずられながら、悟浄の顔色がサーッと蒼くなった。 「こんな時のために用意しておいたナース服が役に立つとは。よかったよかった♪」 「何でそんなモンがうちにあるんだよおおおぉぉっ!!ヤダヤダッ!ぜぇ〜ったいイ〜ヤ〜だあぁぁっっ!!!」 悟浄の叫びなど八戒は全く聞き入れない。 八戒は上機嫌に暴れる悟浄を寝室まで引きずっていった。 「…どういうこと?」 ベッドに転がされた悟浄の笑顔が強張る。 「え?ですから白衣の天使でしょう?」 「いや…分かるけど…さ」 首しか動かせない悟浄は視線だけ逸らした。 悟浄の目の前には。 何故かナース服を身に纏った八戒が、ベッドに転がる悟浄の足許に座っている。 白衣の天使でお仕置きと聞いて、真っ先に自分が着せられると思っていたのに。 「似合ってませんか?コレ」 八戒はスカートの裾をスルリとたくし上げて見せた。 …これが似合っているから恐ろしい。 しかし、そんな長身の八戒にピッタリなナース服をどこで調達してきたのか。 何だって都合良く家にナース服があるのか。 色々と突っ込みたいが、返ってくる答えも分かっているので悟浄は押し黙った。 それに自分の状況もかなり情けない。 八戒の手によって、悟浄は全裸でギチギチに芸術的な亀甲縛りで括られていた。 全裸なのに何故だか靴下が穿かされたまま。 やっぱり八戒の趣味はよく分からない。 そして傍らには、ナース服にそれらしく体温計を嬉しそうに掲げる八戒。 どんな家庭だよ、と。ついついぼやきたくもなる。 こんな変態ナースに犯されるのかよ、俺。と我が身の不運を嘆いた。 「それじゃ、まずお熱を計りましょうね〜vvv」 嬉しそうに微笑むと、八戒は体温計を持って仰向けに転がる悟浄に躙り寄る。 プス。 「…何で体温計尻に挿すんだよ」 「え?だって動物ってお尻で熱を計るじゃないですか〜」 「俺は犬猫かっ!」 悟浄は真っ赤な顔で喚き散らした。 体温計自体大した太さもないので痛くもないが、咥え込まされた違和感は拭えない。 何となくむず痒くて、悟浄はもじもじと腰を捩らせた。 体温計を咥え込んだ秘口が、物足りなげにヒクヒクと蠢いてしまう。 「八戒ぃ〜」 「あ、そのまま動かないで下さいね」 分かっていながら八戒は腕時計で時間を見ている。 唇を尖らせて睨み付けると、八戒がニッコリと微笑んだ。 「はい、お熱見てみましょうね」 そう言うと八戒はスルスルと体温計を引き抜く。 「んっ…」 粘膜を擦る感触に、無意識に体温計をギュッと締め付けた。 体温計を抜こうとしていた八戒の指がピタリと止まる。 「もぉ〜ダメですよ?お熱計ってるだけなんですから」 八戒は指で抓んだ体温計を悟浄に半分埋め込んだ状態でグルッと回した。 「ん…ぁっ」 尖った先端が内壁を抉る感触に、悟浄が嬌声を零す。 「さてと。んー…お熱がちょっとありますね。それじゃ念のため触診してみましょうか」 「あ…え?」 首だけ上げた悟浄の目の前で、八戒が自分の掌にローションを垂らしていた。 何をしようとしているのかが分かり、悟浄は身体を強張らせる。 「そんなに力を入れないで下さい。奥までどうなっているか診ますので」 八戒は悟浄の太腿に手を掛けると、指で襞を緩く撫でた。 「ちょっ…あ…あっ」 ヒクヒクと開閉を繰り返す秘口に指先がローションを塗りつける。 指を咥え込もうと蠢くクチに、八戒は含み笑いを浮かべた。 「じゃぁ力を抜いてて下さいね〜?」 興奮で声を上擦らせながら、八戒は指を2本悟浄のナカへと埋め込んでいく。 「んっ!うぁ…っ」 ナカで卑猥に蠢く指に、悟浄は大きく背中を仰け反らせた。 途端に肌へ縄がキツく食い込んでくる。 「やっ…動か…あぁっ!?」 前立腺の突起を撫で擦られ、悟浄はビクビクと身体を跳ね上げた。 身体を捩らせると、その度に縄が感じやすい乳首や性器を擦って堪らない。 急激に昂まる快感に、悟浄は大きく胸を喘がせた。 クチュクチュと淫らな音を立てて秘口を指で弄ると、硬く勃起した悟浄の性器は先奔りを溢れさせる。 肉芯を遣って最奥まで届くと、更に秘口は淫音を零した。 「あ…はっか…いぃ…っ」 悟浄の口からはひっきりなしに嬌声が上がる。 強請るように絡みつく粘膜を指に感じて、八戒は満足そうに微笑んだ。 「あぁっ!?」 唐突に指を引き抜かれて、悟浄が不満げな声を漏らす。 思わず出してしまった自分の甘ったるい声音に、悟浄は羞恥で真っ赤になった。 素直な反応に八戒が嬉しそうに口元を緩める。 「やっぱりお熱があるようなので、お注射しましょうねvvv」 あ、やっぱりそう来たか。 悟浄は呼吸を乱しながら、霞む瞳で八戒を見上げた。 膝立ちになった八戒が、悟浄に見せつけるようにスカートの裾を捲り上げる。 何故だか八戒はガーターベルト付きのストッキングを穿いているクセにノーパンで。 その股間では先奔りに濡れた怒張が、ヒクヒクと頭を震わせていた。 「悟浄は可愛いから、特別なお注射ですよぉ?」 足を縄で開かされたまま固定されている太腿に手を突くと、八戒は滾った性器を悟浄の双丘へ擦り付ける。 「も…いっから…早く…っ」 八戒のモノでナカを滅茶苦茶に掻き回されたくて、悟浄の声が上擦った。 秘口に当たる硬い先端を飲み込もうと貪欲に蠢くのが分かる。 何時にない興奮で、身体中の血がざわめいた。 珍しく積極的な悟浄に、八戒もこれ以上は焦らさない。 「あっ…あ…ひぁ…っ!」 グッと秘口へ押し込む力が掛かると、襞をいっぱいに広げて硬い先端が挿入された。 ローションと指で慣らしたせいか、狭い器官はあっさり先端を飲み込んだ。 一気に最奥まで八戒の太い肉芯で突き上げられ、悟浄の意識が真っ白に弾けた。 ブルッと勃起した性器が震えて、熱い飛沫を自分の胸元まで飛び散らせる。 「あれ?悟浄ってば…挿れただけでイッちゃったんですかぁ?」 根元まで自身の雄を収めると、胸を喘がせる悟浄を上から覗き込んだ。 吐精の余韻で、悟浄の瞳は焦点がぼやけて頭が飛んだまま。 唯ひたすら荒い呼吸を繰り返している。 「触ってもいないのにお尻弄られただけでイッちゃうなんて…可愛いですねぇ」 辱められる言葉も、今は快感を増長させるだけで。 縄で擦られた性器は、直ぐに硬く頭を擡げてくる。 「なぁ〜んか全然お仕置きにならないなぁ。ま、悟浄は縛られるの好きだし仕方ないですね?」 「も…早く動け…て…なぁ?」 焦れったそうに腰を捩られ、ナカにいる八戒の雄をギュッと締め付けた。 突き抜ける快感に、八戒が息を飲む。 「いきなり…出そうになっちゃったでしょう」 「だったら早く動けよぉ…これだけじゃ足りねー」 「えー?僕のお注射だけじゃまだ足りないんですか?」 八戒は頬を膨らませながら、腰を激しく突き上げ始めた。 激しい注挿に、悟浄は恥ずかしげもなく甘い嬌声を吐き出す。 「ソレだけ…なくてっ…ソコの…ナカもぉ…っ」 「あぁ、ココのナカまで弄って欲しいの?」 八戒が悟浄の性器に指を伸ばして、爪の先で先端の割れ目を抉った。 「ひああっ…んっ…ソコッ…もぉ…っ」 首を激しく振って、ジワリと湧き上がる快感に涙を零す。 「じゃぁ、後でカテーテルも挿れて上げますね。とりあえずは」 悟浄の下肢を持ち上げると、大きく突き上げて腰をグラインドさせた。 「ナカに真っ白いお薬挿れましょうね〜」 「んんっ…っやく…出せ…よぉっ」 双丘が震えてキュウキュウと八戒の雄を締め上げた。 「く…ううっ!」 ブルブルと腰を震わせ、八戒が自身の性器を最奥まで突き挿れる。 「あ…あああぁぁっ!?」 一際大きく肉芯が脈動して弾け、八戒が悟浄のナカで遂情した。 多量の熱い白濁が最奥まで濡らしていく。 吐精の感触で、悟浄もまた精を迸らせた。 二人して呼吸を整えようと深呼吸を繰り返す。 先に八戒が大きく息を吐いて呼吸を戻し、悟浄の様子を覗き込んだ。 まだ満足していないのか、秘口は八戒の性器を咥え込んで離さない。 そう言えば、締め切りで忙しくて1週間ばかりご無沙汰でしたっけ。 貪欲な悟浄の身体に、八戒は小さく苦笑する。 「さて、僕の看護はまだまだですからね」 欲情を滾らせた悟浄の瞳を見つめると、八戒は蕩けるような笑みを浮かべた。 八戒って、怒ると激しいんだよな〜。 やっぱ、たまには強烈な刺激がねーとつまんねーしvvv 悟浄は八戒に責め立てられながら、ひそかにほくそ笑んだ。 |
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