Birthday Parade



ちくしょぉー…何だっていつもいつもいつもいつも俺がこんな目に遭わなきゃなんねーの?
しかも誕生日だぞ?
まぁ、生まれてこの方ロクな想い出もねーけどさ…別にそれが寂しいとか思ったこと無かったし。
祝ってくれるヤツなんか誰も居なかったんだよなぁ。

八戒に逢うまでは。

八戒と出逢って初めての誕生日。
誕生日にはご馳走やらケーキ食うとか、年の分のローソク立てて一気に吹き消すと次の誕生日まで幸せになれるんだとか、ぜーんぶ八戒が教えてくれた。
『悟浄がこの世に生まれてくれたから僕は出逢えたんです。いっぱいいっぱい感謝しなくちゃいけませんね』って嬉しそうに笑って貰えて。
『何くっせぇコト言ってんだよ、ばぁか』とか『言ってて恥ずかしくねー?』なーんて照れ臭さから憎まれ口叩くことも出来なかった。

嬉しくて。
ただ本当に嬉しくて。
涙堪えて俯くのが精一杯だった。

俺が生まれてきてよかったって思ってくれるヤツが居る。
大袈裟かも知れねぇけど、俺が生きている意味が初めて分かった気がした。
八戒が俺を必要だって、大切だって思ってくれるからだって。

…そう思ってたのによぉ。

去年といい今年といい、この仕打ちは何なんだっ!?
八戒なりに俺を喜ばせようと思って色々画策してくれるのは構わねーけど、アイツの趣向は明らかに間違ってるっ!
一人ぽつーんと放置されて山ん中ぐるぐる歩き回されたり、イノシシ嗾けて囮にされたり。

い・い・か・げ・ん・に・し・ろーーーーーっっ!!

別にそんな体力と生死試されるようなビックリ企画なんかいらねーよ。
たださ…二人きりで静かに何もしないでボーッとしてるだけでもいいんだ。
そういう繊細な男心が何でアイツには分かんねーかなぁ。
DVD借りてきて、こ〜くっついて一緒に映画とか見たり…ウチにDVDプレイヤーねぇけど。
ビデオでいいビデオでっ!
俺はアクション物がいーけど、八戒は動物感動物とか純愛物とか好きなんだっけ。
どっかの国のドラマにもハマッてたしな。
粗筋八戒から聞いて『何か嘘臭せぇつーか偽善的?』って言ったら、アイツってば何つったと思う?

『自分じゃ到底無理だからいいんじゃないですかっ!』

キッパリハッキリ力説しちゃってんの。
それもどーなんだ?って感じ。
『でも一途にずっと愛することが純愛なら僕は悟浄に純愛してますね〜』とか、嬉しそうにこっ恥ずかしいこと言いやがるしっ!
ま…まぁ…俺もかな?えへv
はっ!そーじゃなくって!
だーかーらーっ!

たまには心穏やかに過ごせる誕生日で俺を祝ってくれよ〜〜〜っっ!!






「う…ぅっ…う〜ん…っ」
先程から悟浄は顔を顰めてずっと唸り続けて目覚める気配もなかった。
傍らに座り込んでいる八戒がそぉーっとそぉーっと魘されている悟浄の顔を覗き込む。
「悟浄…ごーじょー?」
大声で起こす訳でもなく、揺さ振る訳でもなく。
小さく遠慮がちに悟浄の耳元で名前を呼んだ。
当然目下真っ黒い走馬燈と夢の中で闘ってる悟浄が気付くはずはない。
「…よしっ!」
八戒は静かに拳を握ると、なにやらゴソゴソと悟浄を弄り始めた。

虚しい…寂しい…寒い…寒い寒い寒い寒い寒い…ん?すっげ寒ぃっ!?

「ぇっ…くしょっ!」
パッチン、と。
派手なクシャミと共に悟浄の瞼が開かれた。
「………チッ!」
視界から外れた所で、小さな舌打ちが聞こえてくる。
覚醒したての頭は上手く働いてないようで、悟浄は暫しそのまま呆けた。
しかし、下肢から這い上がってくる猛烈な寒さにじっとしていられなくなる。
「うわっ!何でこんな寒いんだよっ!?」
漸く意識がはっきりした悟浄は、身体を震わせ勢いよく半身を起こした。
その途端、視界に入った自分の姿に思わず瞠目して固まる。

寒いのは当たり前だった。
何せ自分は下半身丸出しになっている。
一体何がどうなってこんな状態に…考えるまでもなかった。

「お前かあああぁぁっっ!!!」

わざとらしくそっぽを向いている八戒の頭を、悟浄は真っ赤な顔でべしっ!と叩く。
「痛いですよっ!」
「痛くぶったんだから当たり前だっ!」
「何でいきなりぶつんですか〜酷いです〜」
「ぶたれるようなコトしたのは誰だよっ!」
「えー?誰ですかぁ〜ソレ?」
「っこの…ぉっ!」
平然と厚顔無恥にしらばっくれる八戒に、悟浄は怒りで拳を震わせた。
「何だって!俺が!こんな寒空の下でっ!
チン×丸出しでブッ倒れてなきゃなんねーんだよっつってんだっ!!」
八戒はきょとんと怒鳴りつける悟浄を見つめ、そして視線を股間へ落とす。

「ヤダ…悟浄ってばエッチvvv」
「てめぇがヤッたんだろーがっ!!」

悟浄の忍耐が限界を超え、音を立てて派手にブチ切れた。
癇癪を起こしてべしべし叩きまくる悟浄を避けて素早く離れる。
それが悟浄にはまた気に入らない。
闇雲に腕を振り回して八戒への罵詈雑言を喚き散らしていると、突然強い力で腕を掴まれた。
「何か悟浄勘違いしてるみたいなんですけど…」
「勘違い?何がぁ!?」
キリリと睨み付けてくる悟浄に、八戒は小さく肩を竦めた。
「別に『あ、悟浄気絶しちゃった。ラッキーvvv』なぁ〜んて不埒な考えがあった訳じゃありませんよ?」
「じゃぁ何で俺はズルッと下だけ脱がされてんの?」
「それは…何度呼んでも悟浄が目を覚まさないで苦しそうに魘されてたから、少しでも身体を楽にした方がいいと思って、ジーンズのフロントをちょっと緩めて」
「………ちょっと?」
「そうしたらまだ苦しそうだったから、下着のゴムも締め付けてて苦しいのかもと心配で、
ちょっとずらしてみて」
「………ちょっと?」
「だってほらっ!少し身体が楽になったから悟浄だってすぐ意識戻ったじゃないですか〜♪」
「脱がされて寒かったからだっ!バカーッッ!!」

そんな悟浄は未だズル脱げのままだった。

派手にクシャミを連発しながら、漸く脱がされかけていたジーンズと下着をずり上げる。
「ぅあ〜〜〜八戒がバカなことすっから、すっかり冷えちまったじゃねーかっ!」
「それはいけませんっ!じゃぁ、直ぐに
熱帯常夏気分になるほど悟浄の身体を温めて差し上げましょうかっ!」
「今ココで青姦なんかしやがったら、今日は三蔵トコに泊まるぞ?」
鼻息荒くのし掛かろうとしてくる八戒に、悟浄はヒタッと冷ややかな眼差しを向けた。
さすがの八戒もこれには固まった。
ぎこちなく悟浄から離れると、背中を向けて恨みがましく視線を向ける。
「悟浄酷いっ!僕は悟浄をただ暖めて差し上げようって思っただけなのに…寒い…僕の心の方が寒いですっ!」
「…お前の心は股間にあるのか?」
股間を握ってシクシク嘘泣きする八戒に、悟浄は呆れ返って溜息を零した。
八戒に求められるのは悪くないが、時と場所とを考えて欲しい。
こんな所でセックスなんかしたら、確実に二人共明日は寝込むに決まってる。
ダンゴムシの様に身体を丸めていじける八戒を、悟浄が後から抱え上げた。
「ほら、何時までも拗ねてんじゃねーの。寒いから早く帰ろうぜ?」
「だって…悟浄が…」
「早く帰って…二人っきりでお祝いしてくれんじゃねーの?」
「あ…っ!」
漸く本題を思い出して我に返る八戒を、悟浄は可笑しそうに喉で笑う。
ちょっと頬を赤らめ、八戒が苦笑した。
「ごめんなさい。そうですよね…早く帰っていーっぱいご馳走作って、二人っきりでお祝いしましょうね?」
「おうっ!何だかすっげ腹減ってきてさー…って、そういや」
悟浄はふいに閃いて周囲をキョロキョロ見回した。
「どうかしました?」
「え?いや…アレ、どーしたんだ?」
「アレって言いますと?」
「アレだよアレ!ご馳走の元っ!イノシシ!俺のこと囮にしやがって〜っ!当然仕留めたんだよな?」
「勿論です」
「でも居ねぇじゃん」
八戒は自信満々に胸を張るが、肝心のイノシシがドコにも見当たらない。
あれだけの巨体が消えて無くなるのは可笑しいだろう。
そう思って悟浄は首を傾げながら、視線でイノシシを探してみれば。

少し離れた木の側。
土が盛られて何やら長い木の板が突き刺さっていた。
何だか厭な予感がして、悟浄が近寄り確認してみると。

悟浄のご馳走のために亡くなったイノシシの首、ここに眠る。

「目覚めの悪いこと書いてんじゃねーよっ!!」

それは八戒によって手際よく解体されたイノシシのお墓だった。






「ったく…いちいち余計な真似しやがって」
仕留めたイノシシの肉を待ち構えていた悟空にお裾分けし、八戒と悟浄は漸く家へと戻ってきた。
すっかり疲れ切った悟浄は、炬燵に潜り込んで倒れている。
台所からは上機嫌な八戒が忙しなく夕食の準備をしていた。
相変わらず、きのこのこのこ〜♪などとエンドレスで調子っぱずれな鼻歌が聞こえてくる。
放っておかれて暇な悟浄はテレビでも見るかと、炬燵の上に置いてあったリモコンを手探りした。
掴んで電源を入れようとテレビに向けた途端、悟浄の瞳が真ん丸く見開かれる。
それはいつもと変わらないテレビだ。
しかしその下、テレビボードの中にはビデオデッキと共に見慣れない器械が置いてある。
いや、見慣れてないこともない。
だって、何度も電器屋へ足を運んで見ていたし、貰ってきたカタログを何度も眺めては諦めていたから。

「八戒っ!八戒八戒はぁーっかいぃぃっっ!!」
「どーしたんですか?大きな声上げて?」

用意が出来たらしい鍋を持って、八戒が驚きながら台所から出てくる。
「八戒っ!コレッ!コレっ!!」
「あー…なーんだ。もう見つけちゃいましたか」
「コレ俺が欲しかったヤツッ!DVDレコーダー!だよな?」
悟浄はテレビボードに置かれていたDVDレコーダーを嬉しそうに見つめた。

ずっとずっと悟浄はDVDレコーダーが欲しくて欲しくて、何度も八戒にお伺いを立てていた。
最近のレンタルショップは、新作がほとんどDVDでビデオを置いてあることが少なくなっている。
折角見逃していた映画も借りに行けば、ビデオではなくDVDの貸し出しのみなんてこともあり、悟浄はDVDが見れ、ついでに高画質で録画まで出来ちゃうレコーダーが欲しくて堪らなかった。
しかし。
「高いからダメです。それにまだビデオデッキも充分使えるでしょう?勿体ない」
八戒の有無を言わさぬダメ出しに、悟浄は諦めかけていた。
その憧れのDVDレコーダーがっ!
しかも買うならコレがいいなぁ〜とカタログを眺めていた機種のDVDレコーダーがっ!
「俺の家にあるうううぅぅ〜〜〜vvv」
悟浄はDVDレコーダーへ縋り付き、嬉しそうに頬擦りまでする。
「僕からのプレゼント…喜んで貰えて良かった」
「あ…っ」
炬燵の上にコンロをセットして熱々のボタン鍋を乗せながら、八戒が嬉しそうに笑った。
悟浄は照れ臭そうに頬を赤らめると、八戒の側へ躙り寄る。
「さんきゅー、な?すっげ嬉しい…」
「どういたしまして」
エプロンの裾を指先で握って俯いたままお礼を言う悟浄の頭を、八戒は優しくポンポン叩いた。
何だかプレゼントが嬉しいなんて子供みたいで恥ずかしいけど。
照れ臭いのを誤魔化すように、悟浄は握ったスケスケのエプロンを引っ張った。

ん?何でエプロン透けてんだ?

悟浄はじっと指先を疑視して、恐る恐る視線をずらす、が。
「何で八戒スケスケエプロンなんだっ!?うわっ!うわわっ!アソコが生々しいんだけどっ!?」
「悟浄の誕生日恒例サービスです」
「頼んでねぇっ!」
「またまた〜悟浄は遠慮ばっかしてvvv」
「してねーよっ!」
「だって、そういうサービスのお店もあるんでしょ?」
「今更ノーパンしゃぶしゃぶなんかあるかよっ!」
「はっ!床は鏡張りなんですよねっ!?」
「そんなことまでしなくていいっ!つーか何で知ってるんだっ!?」
「ま〜鏡越しで覗くよりは、
ナマの方がいいですよね〜vvv」
「ナマッ!?ナマって何っ!?」
「えいっ!」
顔面蒼白で怯えて後ずさる悟浄を、八戒が思いっきり突き飛ばした。
不意打ちを喰らって倒れ込んだ悟浄の上に、すかさず八戒が跨る。
「はーい、悟浄のだぁ〜い好きなナマ、ですvvv」
「むぅーっ!うううーーーっっ!?」
顎を掴んで無理矢理こじ開けた口腔に、八戒の性器がズボッと押し入った。
喉奥まで勃起した雄を捻り込まれ、悟浄はジタバタと苦しげに暴れる。
「あっ…悟浄ってばそんな吸い付かないで下さい。気持ち悦くって我慢できなくなっちゃいますよ〜」
「うむぅっ!?」
抗議しようにも口一杯に頬張った八戒の雄でみっちり塞がれていた。
涙目になって睨み付けると、頬を紅潮した八戒が陶然とした表情で見下ろしてくる。
その顔の何て艶っぽいこと。
「………む」
ついつい条件反射で悟浄の股間もじんわり熱くなってしまう。
仕方なさそうに濡れた舌を肉芯へ絡みつかせ喉奥で締め付けると、掠れた溜息が頭上から零れた。

非常識だとか、何でお前はいつも唐突なんだよとか。
どうでもよくなった。
八戒がいつでも自分を欲しがるのと同じだけ、悟浄も欲しがって貰いたいし欲しいと思ってるから。

…とにかく一発抜かねぇと晩飯食えそうもないしな。

悟浄がキツく八戒の雄を吸い上げると、我慢しない腰が激しく振られて喉奥を犯される。
「ごじょっ…愛してます…っ」
興奮で上擦る八戒の睦言に、悟浄は視線だけで笑った。



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