Snow powder

ふわふわと、粉雪が舞い降りてくる。
今年一番の雪に、すぐにでも駆け出して行きたいのに。
この間の戦闘で、すっかり足を怪我してしまったから行くが出来ない。
「初雪なのにぃーーーーーー」
窓の外を見ながら、ベッドの上から叫ぶ。
「煩せぇ!!」
すぐにハリセンが飛んできた。
「怪我人は黙って寝てろ」
はぅ。めちゃ機嫌悪い。
・・・そんなに似てたのかなぁ、その偽者。
悟浄が後で教えてくれた。
清一色の偽者の俺に三蔵がかなりご立腹だったって。
ご立腹って、怒ってくれたってコトだよね・・・??
自然と緩む頬に。
「・・・・なに笑ってる?」
更に不機嫌になる三蔵に、慌てて首を振った。
「何でもないよぅ」
「つくなら、もっとマシな嘘をつけ」
押し倒されるように、三蔵の顔が近くなって。
にやりと口元が歪む。
「なんなら、身体に聞くか?」
ぼんっと真っ赤になる俺に構うことなく、三蔵の唇が降りてくる・・・・前に、
遠慮もなくドアが叩かれた。
「おーい、子猿ちゃん」
「お邪魔しますねー」
返事を待つこともなく入ってくる悟浄と八戒に、三蔵が舌打ちした。
「もしかしなくても、僕たちお邪魔だったようですね」
にっこりと笑う八戒が、なんだか怖い・・・ような気がするのは気のせいかな?
「全然大丈夫!!」
真っ赤になりながら返した。
「そうですか? 良かった」
三蔵はいつの間にか、離れた所の椅子に座って新聞を広げてる。
・・・ホッとしてるって言ったら、ますます怒るかなぁ。
キスは大好きだけど。
その先は、その、やっぱりまだ、慣れないっていうか・・・・。
「・・・悟空?」
心配そうに覗き込んでくる翠の瞳で、はっと我に返る。
「あ、ごめん。せっかく来てくれたのに」
「いいですよ」
にこっと、さっきとは違う笑みで、なんだか嬉しくなる。
「で、何しに来たんだ?」
三蔵が機嫌の悪い事を隠そうともせずに言う。
そんな三蔵に苦笑しながら、八戒は言った。
「悟空の叫び声が聞こえましてね」
「どうせ鬼畜坊主は連れて行ってくれないんだろう、外」
「だから、僕達で連れて行ってあげようと思いまして」
八戒と悟浄の代わる代わるの言葉に、思わず喜びかけて、ちろりと三蔵を見る。
殺気立ちそうな三蔵を確認して、
「・・・・嬉しいけど、大人しく寝てる・・・・」
笑顔を作って答えた。
途端、ちっと小さな舌打ちと。
コートが頭から被せられた。
ほぇ?とコートを取りながら見上げると、
不機嫌なままの三蔵の顔がまた近くにあって。
「すぐに戻るからな」
それが、照れ隠しなのだと言うコトを、もぅ知ってる。
「うんvv」




三蔵に抱えられて宿を出る。
結局、八戒達はお邪魔だろうからと、部屋に戻っていった。
皆で見るのも楽しいのに、とも思うけど。
三蔵と二人きりなのは素直に嬉しい。
「きれーだね」
白く染まりゆく世界を見ながら呟く。
ふと、出てきた先の玄関の屋根を見上げて驚く。
「なんで十字架が立ってるの!?」
内装は、洋式どころか年代の入った家具が多かったのに。
「少し前まで、修道院だったそうだからな」
「・・・なんだか、教会みたい」
十字架を見上げて、ふと思った。
そして、自分達の今の姿を思い起こす。
それは、まるであの日見た光景と同じようで。
「・・・なんか、いつか見た結婚式みたいじゃない?」
そう言うと、三蔵は呆れたように笑った。
「桜吹雪じゃねぇけどな」



それは、八戒や悟浄と知り合う前の事で。
三蔵と出逢ってすぐの事だったかもしれない。
名も覚えていない小さな町で、初めて教会を見た時のこと。
小さな小さな教会の前で、薄紅の花びらの、柔らかなヴェールに包まれていた一組のカップル。
その笑顔が、とても幸せそうに輝いていた。
春に祝福されているようで、とても羨ましかったのを覚えてる。
けれど。
「雪も、負けないくらい大好きだからいいよ」
そう笑い返した。



降り積もる粉雪と同じ。
世界を真っ白に染め上げていくのと同じように。
三蔵への想いは、俺を三蔵の色へと染め上げていく。
「なんか、二人っきりってカンジしない?」
この、広い広い世界に、三蔵と二人だけしかいないような。
きぃんと、耳が痛いほどの静寂の中。
三蔵の腕の中で、三蔵の体温と鼓動に包まれて。
「あなたが居れば、他には何もいらない」
首筋に、顔を埋めるように囁いた。
「・・・顔上げろ」
三蔵の一言に、きょとんと顔を上げる。
なに?と思う間もなく、唇を塞がれて。
頬に当たっては溶けていく冷たい雪とは裏腹に。
絡めとられる舌は、とても熱かった。
「お前が居れば、他には何もいらない」
あんなのは二度とごめんだからな。
ぼやくように聞こえて、嬉しくて笑った。
そうして。
真直ぐに互いの目を見つめ合って。
もう一度、誓い合うように唇を重ねた。



「・・・ヴァージンロ−ドみたいだな」
三蔵が小さく笑った。
雪が作った白い、真っ白い道を。
二人で歩き始めた。



<END>
ふふふふ…。
ももさんのサイトの2万ヒッツ記念小説が配布されてたので頂いてきましたさ♪
だからね?どこが健全??(爆笑)
でもカワイイからなぁ〜♪園生には到底ムリな世界…ふ。(遠い目)
ももさんの言い訳が
大笑いだったんだけどね、後記まで載せるのはダメよね、おもしろいけど!ということで(笑)
掲載許可ありがとうございました…ていうかほとんど物々交換だけどvvv