The princess who dreams



それは。
正に運命としか言い様がなかった。






「あぁ〜メンドくせぇー…」

ラフな私服を着こなした背の高い美丈夫が、ブツクサ悪態吐きながら軍舎の回廊を闊歩していた。
この度、唐突に辞令が下され西方軍へ左遷…いやいや転任してきた捲簾大将だ。

時季外れの辞令には訳がある。

まぁ早い話、今まで所属していた東方軍でトラブルを起こしたからだ。
それも『上官の妻を寝取った』という、随分と艶のある事由で。

精悍な面差しに、鍛え抜かれた一縷の緩みもない抜群の肢体。
傍若無人な言動で規律を重んじる上層部には煙たがれてはいるが、周囲の者には分け隔て無く接して面倒見が良いので、男女問わずに慕われていた。
特に慕ってくる女性には、すこぶる優しい。
切ない恋慕を寄せる女性には事欠かなかった。
本気で『…今度整理券でも配ろうかなぁ』と思ったことも一度や二度ではない。
そんなことを考えることからも分かるように、捲簾は女性が大好きだった。
据え膳はもれなく美味しく頂く。
しかも不特定多数を渡り歩くからと、女性達から恨まれたり責められることもなかった。
これも捲簾自身の素質か才能か。
そんな調子で、ついつい熟れた人妻の色香に触発されて、いつもの如く『頂きますv』と手を出してしまう。
まさか、その人妻が上官の奥方とは、怒鳴り込まれるまで気が付かなかった。
だからと言って捲簾は全く反省しない。
『あれ?そうだったの?悪ぃ悪ぃ!でもアンタの奥さん、美人で色っぽくていーよなぁ〜。こんな美人の奥さん連れてりゃ自慢でしょ?どうやって口説き落としたのかあやかりたいモンだね〜アッハッハッ!』と、全く悪びれもせずに上官を賞賛する始末。
さすがにコレでは上官も怒りの矛先が萎えてしまう。

それでも規律は規律。

上層部は頭を抱えて相談した結果、西方軍への転属を決定したのだ。
それには上層部なりの思惑があった。

『…西方軍はどうかね?』
『西方軍ですか?』
『あそこの白竜王は、何よりも規律と品格を重んじる性格だからな』
『しかし、あの捲簾大将が白竜王の命令を素直に聞きますかね?さすがにあの捲簾大将相手では大分荷が重過ぎじゃないかと』
『大丈夫でしょう。あそこは白竜王より厄介で手厳しい者がおるではないか』
『あぁ…成る程』
『うってつけかもしれませんな』

円卓を囲んだ上層部面々は一同頷く。

『何と言っても西方軍は全軍切っての精鋭の猛者連中がおります故。その物騒な輩を有無を言わせぬ統率を布いている手腕。如何に捲簾大将といえども厳しく調教されて、少しは大人しくなるのではないかね?』
『調教ですか…それはそれは』
『似たようなものではないか。あんな猛獣のようなオトコを飼い慣らすなんざ、敏腕な調教師しか手に負えませんでしょうな』
『その点、正にあの者は天職かと』
『しかし、逆に捲簾大将に冒される危険性はありませんかね?』
『何と言っても彼の者の頭脳は、天界軍の至宝ですから』
『それは無いでしょうな。あの者の我の強さは、ある意味捲簾大将と対極でしょう』
『あぁ…噂には。何でも先日あった討伐遠征で、援軍に入った西方軍のが南方軍の…大分ヤラれたそうですな』
『無能呼ばわりされた挙げ句に邪魔者扱いで、無理矢理後方へ退けられたそうじゃないですか。しかもアレ程南方軍が総出で手こずっていた妖獣を、あっという間に全部捕縛して封印したらしいですな』
『しかも負傷者も出さずに…南方軍の方は面目丸つぶれでしたな』
『まぁ、戦歴は捲簾大将も似たようなモノでしょうが』
『似ているからこそ、相当潰しに入るでしょうなぁ』
『プライドが高いですからなぁ』
『…西方軍の天蓬元帥は』

上層部の連中は互いに顔を見合わせ、ニヤリと微笑む。

『それでは早速転属の旨を白竜王へ通達して辞令を。よろしいですかね?』
『うむ』
『迅速にな』

こうして捲簾の転属は、異例の早さで進められた。

騒動の3日後には辞令が下され。
その日中に荷物の移動が行われ、ついでに宿舎の引っ越しも滞りなく完了し。
真新しい西方軍の軍服を手渡され、さっさと追い出されてしまった。
新しく西方軍の大将として着任するまで5日間の休暇が言い渡され、その間に元部下達から送別会へ呼ばれて大騒ぎし、新しい宿舎の引っ越しと片付けを終わらせ、書面上の手続きを済ませることになっている。
どうやら自分の直属の上官は、天蓬元帥というらしい。

元帥と言うからには、相当歳のいった偏屈なジジィに決まってる。

生憎同じ軍籍にありながら、捲簾は天蓬元帥の情報を何一つ知らなかった。
西方軍の戦績は、東方軍にいた捲簾も噂では聞いている。

西方軍に精鋭を引き連れ常勝し続ける小隊がある、と。

噂話にありがちな誇張だと、捲簾は思っていた。
それほどの隊を率いるモノなら、ぜひお目にかかりたいもんだ。
どうせならこの目で実戦を拝見したい。
軍人としての闘争心がフツフツと湧き上がるが、それも杞憂に終わりそうだ。
1日西方軍内をざっと見た限り、それほど突出した武人は見当たらない。
事務手続きをしつつ、さり気なく探りも入れたが文官に言っても無駄だった。
鼓舞した好奇心が急速に萎えて力が抜けてるところに、事務官から書類が手渡される。

「これが正式な着任の書類なんですが、天蓬元帥の認印をココへ頂いてきて下さい」
「あー?天蓬元帥ぃ??」
「捲簾大将の配属される隊の責任者ですよ」
「ナニ?そぉ〜んなお偉い方が俺の隊を率いちゃう訳ぇ〜?」
「運が良いのか悪いのか…」
「は?」

何か、聞き捨てならないコト言われたような。

捲簾が怪訝な顔で疑視すると、文官は慌てて愛想笑いを浮かべた。
しかし頬が思いっきり引き攣って、誤魔化し切れていない。
「あっ!いえいえ。何でもありません。とにかくその書類に認印を頂いてから司令官閣下へ提出して受理され、初めて書面上捲簾大将が我が軍へ配属されるということになりますので」
「あぁ〜。お役人仕事は面倒だぁ〜ねぇ」
「決まりは決まりですから。今日中に元帥から認印貰って提出して下さい」
押し付けるように書類を手渡され、捲簾は大袈裟に溜息を零した。
面倒だけど仕方がない。
これから上官になる元帥とやらを、いち早く品定めできるのは良い機会だ。
幸い自分は休暇中。
多少の無礼はあっても大目に見て貰おう。
自分の命を預ける上官だ。
キッチリ見極めて、即断する必要があった。

泳がせるか、取り込むか。

一瞬瞳に閃く殺気を消し去ると、捲簾がニッコリ文官に顔を寄せる。
「ところで。天蓬元帥って今どこにいらっしゃるのかなー?」
「あぁ、元帥は大抵はご自分の私室…というか執務室にいらっしゃいますよ」
「ふーん。そんじゃ、南棟の絢爛豪華な上級士官の執務室?」
無駄に煌びらやかな一角を思いだし、わざと軽口を叩いた。
そういう捲簾も本来なら南棟へ移動なのだが、断固として懇切丁寧にお断りする。
捲簾には部屋を豪華な調度品で飾り立てる趣味も、権威をあからさまに誇示する趣味もない。
実務面と機能性、それに使い勝手を重視して、下士官用の部屋を申請した。
部屋が広ければ無駄に掃除も時間が掛かるし、そもそも広い部屋じゃなきゃ入りきらない程の荷物もない。
仕事を片付ける程度の机を置けて、尚かつ適当にくつろげる空間と仮眠を取れる部屋があれば充分だった。
そういうことを平然とやってのける捲簾を上層部のお偉方は奇異の目で見るが、そんなことは知ったコトじゃない。
しかも南棟の軍舎は、西方軍の詰め所も訓練場からも一番遠かった。
子供じゃないから寝坊して遅刻で駆け込むということはないが、緊急の招集が掛かった時、いち早く駆けつけるのには遠すぎる。
その点、下士官用の宿舎は西方軍の拠点から一番近かった。
カウンターにダラリと凭れて、捲簾は面倒そうに書類をパタパタと閃かせる。
南棟の重苦しい雰囲気もはっきり言って不快だ。
そこへ乗り込まなきゃならないかと思うと、溜息も零したくなる。
「あー…使いのヤツに渡してチャッチャと戻ってくっか」
「ダメですよ。キチンと元帥ご本人から印を頂いて貰わないと」
「そうだけどさぁ〜南棟ってヤなんだよな。エライたってたかが軍の上層階級ってだけじゃん?どうしてバカみてぇに見下して高慢になれんのかね?こぉ〜、あそこって使いのモンまで偉そうじゃん?主人共々勘違いしてんじゃねーよっての」
厭そうに顔を顰める捲簾に、事務官は目を丸くした。
そう毒づく捲簾自身も、大将職を預かる立派な上級士官なのだが。
横柄な態度で同意を求める捲簾をまじまじと眺め、事務官が小さく苦笑いする。

よりによってこんな大将が天蓬元帥の下に着任するなんて。

何だか騒がしくなりそうな予感が。いや確信をした。
捲簾が不思議そうに首を傾げるのに、コホンと咳払いをして居住まいを正す。
「どうやら大将は勘違いなされてるようですが。天蓬元帥の執務室は南棟ではありませんよ」
「は?だって元帥つったら…」
「まぁ、規定通りなら大将のお考え通り、南棟にお移り頂いた方がいいんですが」
「んじゃ、元帥はドコにいんの?」
「東棟1階の奥ですよ」
「東棟って…下士官用の部屋じゃねーかっ!?」
何でそんな場所に元帥が?と捲簾は驚愕でまん丸く目を見開いた。
外部から来た捲簾の驚きは至極当然だろう。
しかし。
西方軍の者から言わせれば珍しくもなく。
天蓬元帥を良く知っているからこそ、異を唱える者も西方軍内にはいなかった。

「天蓬元帥は…ちょっと変わってらっしゃるというか…」
「ちょっとっ!?」
「あ。えーっと…世間の固定概念に囚われないというか…規格外?というか」
「規格外ぃっ!??」

身を乗り出して詰め寄ってくる捲簾に、事務官も愛想笑いを強張らせる。
誤魔化すような怪しい雰囲気に、捲簾はじっとりと事務官へ胡乱な視線を向けた。
またしても咳払いをして、事務官は表情を引き締める。
「とにかくっ!百聞は一見にしかず、ですよ。お会いすれば一目で分かります」
「…一目で?」
ますます捲簾の双眸が不審を露わにした。
「はい。ただ…」
「ただ?ナニ??」
「………ご無事で戻ってきて下さい」
憐憫を含んだ視線を向けられ、捲簾の顔色がサーッと無くなる。
事務官もこれ見よがしに視線を逸らせて、溜息を吐いたりした。
「ちょっとちょっと!何だよソレッ!何?元帥に会うと何があるんだよっ!!」
「いえ…何も無ければいいんですが。元帥…ここ1週間程お姿を拝見していないので、あるいは…」
「何っ!ナニナニ!?部屋で腐乱死体の元帥発見とかじゃねーだろうなっ!?」
「ある意味近いモノが…あっ!何でもありませんっ!」
「嘘付けええぇぇっっ!!」
ガクガクと事務官の胸倉を掴んで揺さ振るが、肝心なことはそれ以上聞けない。
書類を押し付けられ待機所から追い出されると、捲簾はぽつんと回廊に佇んだ。

「いっ…行きたくねぇ」

それが本心だが、そう言う訳にもいかない。
この書類へ元帥の印を貰わなければ、自分が正式に西方軍へ配属される手続きが進まないのだ。
ガックリ項垂れながら、捲簾はトボトボ東棟へ向かって歩き始めた。






「東棟の奥…っつーとココだよな?」
簡素な扉の前で捲簾は立ち止まった。
キョロキョロと周囲を見渡し、腕を組んで首を捻る。

本当にこんな所に元帥がいんのかよ?

どこからどう見ても下士官用の部屋だ。
士官最高位の元帥が執務している部屋にしては、いくら何でも簡素すぎるだろう。
ここに居るらしい元帥が、自分と同じ理由で居座ってるとも思えない。
そんな傍若無人な変わり者ならいくら他軍とは言え、捲簾の耳にも噂ぐらい入ってきそうだ。
しかし、捲簾は天蓬元帥のことを全く知らなかった。
とりあえず、扉をノックしてみる、が。

「…つかしーなぁ。この部屋だって聞いたんだけど。留守か?」

それともやっぱり部屋を間違っているのだろうか。
もう一度ノックしてみるが、やはり返事はない。
捲簾は溜息を吐いて、ドアノブに手を掛けた。
元帥が留守でも部屋付きの誰かが居るだろう。
中で待たせて貰えばいいかと、捲簾は声を掛けてノブを回した。

「失礼しまー…」

言い終わる前に、捲簾は大量に襲ってきた本雪崩に飲み込まれる。
「どあっ!?」
ざざざざーっと回廊を越えて、庭まで本や謎のガラクタが雪崩れ込んで行った。
もうもうと立ちこめる埃が、周囲を真っ白に煙らせる。
どうにか這い出した捲簾が、呆然と自分を襲ったモノを眺めた。
「…何だぁ、こりゃ。物置かよ??」
要するに。
下士官用の執務室を、自分の物置代わりに使用しているということか。
身体中に付いた埃を払っていると、視界の隅に何かが入った。
書物の間から、ヒトらしき手が覗いている。
「何だよ?俺以外に生き埋めになったヤツがいたのか?」
慌てて手の周囲の本を退けていくと、漸く本体が現れた。
捲簾は暫しその顔を眺める、が。

トスッvvv

出逢いは唐突。
捲簾の心臓のど真ん中を、恋の矢が貫通する。
バクバクと鼓動が高鳴り、見る見る頬が紅潮してきた。
瞳までキラキラ輝いて、何故か双眸が潤んでいる。

「…綺麗ぇ。まるで王子様みたいvvv」

胸元で小さく手を組んで、本の中で昏倒しているオトコの顔に、穴が開く程熱い視線を向けた。
はっ!と我に返ると、捲簾は顔を赤らめたまま辺りに視線を巡らせる。
幸いこれだけの雪崩が起きても、誰一人として駆けつけてこない。
周囲にヒトの気配が無いと分かり、捲簾がゴクッと喉を鳴らして倒れているオトコの顔へ視線を戻した。
見れば見る程、捲簾の夢見ていた理想の王子様のようだ。
ほぅ…と切なげに溜息を零して、顔を近づける。

普段、傍若無人で自他共に認める男前な捲簾大将だが。
子供の頃から密かに夢見ていたことがある。

想像違わず、子供の頃から暴れん坊だった捲簾は、しょっちゅう怪我をしては安静を強いられることが多かった。
寝ていても大人しくしない息子を母親は叱りつけるが、全然言うことを聞かない。
それどころか骨が折れてようと部屋から脱走を企てる息子に、母親が一計を案じた。
ある日、息子の元へ大量の絵本を送り付ける。
それを大人しく読んで、どんな話だったか母親へ報告すること。
そうしないとおやつも食事もヌキにするという、非常に厳しい命令を息子に言いつけた。
寝ていて動けない捲簾の楽しみと言えば、日々の食事やおやつぐらいのものだ。
渋々頷いて、捲簾は渡された大量の絵本を読むことにした。
初めはイヤイヤ読んではいたが、次第に夢中になっていく。
捲簾は単純明快な勧善懲悪な話や、下界で有名な童話の絵本を興味津々で読んでいった。
絵本の中には捲簾の知らない未知の世界が繰り広げられている。
天界では考えられない騒動の話だったり、夢のある童話の世界に少年捲簾は魅せられていった。
その中でも特に好きな話があった。
それは可哀想な境遇のお姫様が色々な試練を乗り越え、最後には素敵な王子様と巡り会って幸せになる、というドラマチックなラブストーリーだ。

いいなぁ…。

少年捲簾は、瞳を輝かせてウットリと絵本に向かって呟いた。
綺麗で純真なお姫様に、見惚れる程素敵な王子様。

だが。
ここで、重大な間違いが起こる。

捲簾が心底羨ましく思い、夢見ていたのは。

俺にもいつかこんな素敵な王子様が現れるのかなぁ…。

ふっくらとした頬を薔薇色に染めて、ドキドキと未来の恋に期待で胸を高鳴らせる。
捲簾は何故か、自分をお姫様に投影してしまったのだ。
何度も何度もシンデレラや白雪姫、眠りの森の美女に親指姫などの童話を読み耽った。
怪我が回復すれば、また元通り外で暴れん坊なガキ大将に戻るのだが。

その『お姫様コンプレックス』が捲簾の深層心理に、すっかり根付いてしまった。

それ以来、とにかく何でも。
ヒトでもモノでも、綺麗で可愛いモノへと傾倒してしまう。
表面上は何でもない振りをするが、内心では『きゃーっvきゃーっvvv』とミーハー精神全開で悶えていた。
一旦ハマると、その拘り方もハンパじゃない。

例えば。
どこかの女官が、それはそれは可愛らしい衣装を着ていたとする。

その時捲簾はまず。
「へぇ…可愛いね」
と、その女官を舐め回すように、きっちり観察した。
思わず勘違いする女官も居るだろう。
まぁ、そう言う時は来るモノ拒まずで有り難く頂戴するが、捲簾の目的はソレではない。
休日に一人自室へ篭もると。
「さぁ〜って。頑張っちゃおっかな〜vvv」
ふふふふ、と嬉しそうに頬を染め、愛用の裁縫箱を取り出す。
一心不乱になって、布地と格闘すること数時間。
「で〜きたっ!うん、やっぱ可愛いよなvvv」
会心の笑みを浮かべて手にしたモノは、以前女官が来ていた衣装の縮小モデル。
その衣装を、捲簾はベッドに置いてあるウサギの縫いぐるみに着替えさせる。
「うわっ!やっぱすっげ似合うっ!」
衣装を着せ付けた愛用のウサちゃんをキュッと抱き締め、捲簾はジタバタと喜びに浸る。
「はぁ…ホントは俺が似合えば一番いいんだけどさ。俺ってばデカイし可愛くねーしなぁ」
ウサギに顔を埋めて、捲簾は寂しそうに呟いた。
しかし、捲簾はどこまでも自分に都合良くポジティブだ。
「でもっ!俺でも可愛いって言ってくれる王子様が、ぜぇ〜ったいいつかは現れるはずなんだよなっ!」
興奮で頬を赤らめると、捲簾は『まだかな〜?いつかな〜?』とベッドをころころ転がる。

…童話の世界と現実は同じだと信じて疑ってない、未だに夢見る捲簾だった。

そんな捲簾に。
ついに王子様が現れたっ!らしい…。

相変わらず本の中で行き倒れている王子様(?)を、捲簾は飽くことなくウットリ見惚れていた。



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