After Valentine Attraction



「…う…ん…っ?」
肌寒さに捲簾は心地よい眠りから浮上する。
傍らに温もりを見つけて、迷わず擦り寄った。
暖かい温度が捲簾の背中に回され、引き寄せられる。
背中をあやすように撫でる掌の感触の気持ち悦さに、思わず溜息を零した。
耳元で小さな笑い声が聞こえる。
くすぐったさに身を捩ると、逃げられないように抱き竦められた。
「捲簾…捲簾?まだおねむですか?」
穏やかな声が耳朶を撫でる。
宥める唇が捲簾の耳元から首筋を何度も触れて往復した。
「ん…ヤダ…ぁ」
捲簾は愚図ると、無意識に緩く首を振る。
甘えるように額を押しつけると、そのまま再度眠りに落ちようとしていた。
「困っちゃいましたねぇ…寝かせてあげたいんですけど。でも、もうそろそろ簾クン起きてくるんじゃないですか?」
耳朶を擽るからかう口調に、捲簾は唐突に覚醒する。
それでもパッチリと瞼を開けるが、ぼんやりして動かない。
寝起きで自分の状況が良く分かってないようだった。
「おはようございます〜捲簾vvv」
「…ん?はよぉー…」
捲簾は大あくびをしながら、覗き込んでいる天蓬の首を引き寄せる。
ムギュッと抱き締めると、天蓬の暖かさにまた眠くなってしまう。
ウトウトしてまた瞼が降りてくると、天蓬は苦笑しながら捲簾に口付けた。

落ちそうになっている瞼に、頬。
スッと高い鼻筋を通って、唇へと降りてくる。

閉じた唇を啄んでいると、次第に綻んでうっすらと開いた。
強請るように覗いた舌先を舐めると、応えて絡みついてくる。
「んっ…う…」
歯列を割って侵入してきた舌に口腔をネットリと舐られ、捲簾はゾクゾクと背筋を震わせた。
絡み合う舌先が吸い上げられるたびに、小さく身体が跳ね上がる。
口蓋から口腔の奥まで余すことなく舌で舐められると、次第に湧き上がる熱が下肢にズンッと落ちてきた。
「んぁ…っ…てんぽっ…ダメッ…て…ぁ」
苦しい呼吸の中で捲簾は声を上げるが、それさえもすぐに口中でくぐもって消える。
溢れる互いの唾液を何度も喉を鳴らして飲み下しても、息苦しさは変わらない。
どんどん熱が上がって頭が蕩けてしまう。
足掻いていた脚が天蓬の腰へと絡みつき、無遠慮に腰が蠢いた。
捲簾は熱を帯びた卑猥な部位を擦りつけて、痺れるような快感に溜息を零す。

クチュッ…
チュプッ…

口腔から漏れる濡れた淫音に、聴覚からさえ感じてしまう。
火照った身体を撫でていた掌が、胸元まで降りてきた。
「あっ…やぁっ!」
しなやかな指先が、プクッと膨らんだ乳首を捻り上げる。
揉み込むように擦りたてて引っ張ると、捲簾の身体がビクビクと波打った。
「やっ…め…天蓬ぉ…っ」
甘い嬌声に、天蓬は薄く微笑みを浮かべる。
解かれた口付けから、天蓬の唇が舌が。
零れた唾液を辿って、捲簾の身体を伝って行く。
頤から首筋。
粟立つ肌を濡れた舌と唇が舐めて吸い上げ。
じんわりと燻る熱を更に煽った。
「あっ…んぅ…っ…てんぽ…っ…天蓬ぉっ」
胸元で蠢く天蓬の頭に指を差し込み、柔らかな髪を掻き回す。
快楽しか考えられなくなった捲簾は、ひっきりなしに嬌声を上げた。
乳首を舐っていた唇が離され、次第に下腹へと動き出す。
滑らかな肌に噛みついたり、キツク吸い上げたり。
赤く浮き上がる所有の証をあちこちに散らせて、天蓬は満足げに微笑んだ。
視線を落とせば、欲望の象徴が濡れながら勃ち上がっている。
肌に歯を立てる度に、ビクビクと震えて先走りが溢れた。
捲簾は切ない溜息を漏らして、ぎこちなく腰を捩らせる。
「触れてもいないのに、こんなにお漏らしして…ダメですよ」
笑い声が空気を震わせる刺激にさえ感じてしまう。
嫌がって首を振ると、目尻から涙がポロポロと零れた。
「捲簾…凄く可愛い」
陶酔しきった天蓬の声に、ますます身体の熱が昂ぶっていく。
天蓬の指先が下肢へと降りて、緩急つけて袋をもみしだいた。
「うっ…あ…ぁ…」
次第に捲簾の脚が大きく開いて、刺激を強請って腰が揺れる。
中のグリグリと擦り上げて揉み込まれると、ひっきりなしに掠れた喘ぎ声が上がった。
性器の先端が、灼け付くように熱い。
開きっ放しの蜜口からは、どんどんと粘液が溢れ出した。
肉芯を伝ってその下の袋を伝い、双丘までもグチャグチャに濡らしていく。

もう何でもよかった。
いきり勃った自身を激しく擦りたてられ。
何でもいいから、早く燻り続ける熱を吐き出したくって堪らない。

「も…てん…っ…っやく…ぅ」
しゃくりあげて捲簾が更なる刺激を催促した。
羞恥心も飛んでしまったのか、天蓬に差し出すように自分から脚を大きく広げて抱えると何度も腰を振って見せつける。
天蓬の目の前で、秘孔が強請るようにクチを開いた。
あまりの淫猥さに、天蓬がゴクリと喉を鳴らす。
「はや…くっ…お前の…欲し…っ」
捲簾の痴態で鍛えるまでもなく、天蓬の雄は硬く勃ち上がっていた。
性器の先端をヌルリと双丘へ擦りつけると、捲簾が期待で息を飲む。
「コレが欲しいの?」
捲簾は大きく頷いた。
欲情の孕んだ瞳で、瞬きもせずに天蓬をじっと見つめる。
「欲しいならちゃんと言ってくれないと、ね?」
「な…に…っ?」
「イヤラしいお尻の穴に、早く挿れてグチャグチャにして下さい、でしょ?」
「そんな…ぁ…っ」
捲簾の身体が羞恥で真っ赤に染まった。
唇を噛みしめ、天蓬を睨み付ける。
強い拒絶の眼差しも天蓬の性器で秘孔をヌルリと擦られると、トロリと蕩けてしまう。
全ての神経が、最奥へと集中した。
そこから与えられる快楽を身体が忘れてはいない。
昨夜あんなに貪り尽くしたはずなのに。
天蓬と抱き合う事に、捲簾の身体は快楽に貪欲になっていった。
「てん…ぽっ…も…我慢でき…ねぇ…欲しっ…ぃ」
「…言って?どれだけ僕が欲しいか」
「あ…っ」
天蓬が淫靡な笑みを浮かべて、愛おしそうに甘く囁いた。
欲望を隠そうともしない真摯な視線に、捲簾の鼓動がどんどん昂まる。

その声に、触れる身体に。
伝わる熱に、匂いに。
捲簾の脳は侵蝕される。

もう、何も考えられない。

「俺…のっ…ソコに…欲しいっ」
辿々しく漏らされる声に、天蓬は口端を上げた。
捲簾の肉芯をゆっくり握り締め、小さく上下に揺らす。
「んぁっ…イッ…イー…」
腰を捩って催促すると、すぐに指先の動きが止まってしまった。
「なん…で…ぇっ」
焦らされて癇癪を起こした捲簾が、激しく首を振って啼く。
天蓬は硬く腫れた先端をグッとヒクつく秘口に押しつけた。
「あ…っ」
「…捲簾、言って?」
熱の籠もった甘い囁きに、捲簾はゾクリと肌を粟立てる。
これ以上我慢を強いられたら狂いそうだ。
「ソコ…イヤらしい…尻…ん中に…早くいっぱい挿れて…グチャグチャに…突いてくれ…っ」
「…良くできました。捲簾の望む通り、最奥までグチャグチャに掻き回して上げますね」
天蓬が微笑みながら言うのと同時に、ズズッと一気にもの凄い質量が捲簾のナカを犯していく。
「ひぁっ!あっ…あぁっ!!」
ビクビクと身体を痙攣させ、捲簾の雄が一気に弾けた。
ドロリとした白濁が自身の胸まで汚していく。
射精の余韻でナカの天蓬自身も締め上げられ、艶めかしい吐息を零した。
その声と表情にさえ感じてしまって、すぐに捲簾の雄は勃起する。
「熱烈歓迎ですね…捲簾のナカ。僕のモノに絡みついて『もっともっと』てお強請りしてますよ」
「ん…天蓬ぉ…動け…よっ」
捲簾の秘孔がギュッと肉芯を締め付け催促した。
最奥まで天蓬の熱に犯されたくって堪らない。
「もっといっぱい気持ち悦くシテあげますね」
天蓬は捲簾の腰を抱え上げると、叩き付けるように注挿し始めた。






「捲簾…起きあがれますか?」
「んー?多分…」
捲簾はベッドの上で仰向けになって胸を喘がせていた。
行為の後処理も、文句も言わず為すがままに天蓬に全てさせる。
「あ〜起き抜けの一発はキッツー」
「捲簾は3発でしょ」
「回数の話じゃねーっつーのっ!」
真っ赤な顔をして、捲簾が天蓬の腹をポスッと殴りつけた。
クスクスと笑いを漏らして天蓬が全裸のまま立ち上がる。
床に落ちていたパジャマを拾い上げると、下だけさっさと穿いてしまう。
残りの上着を捲簾の方へ差し出した。
「まだエアコン暖まりませんから、着ていないと寒いでしょう?」
「ん…っ」
肘を突いて身体を起こすと、捲簾は渡されたパジャマを羽織る。
「あれ?下は??」
キョロキョロと首を巡らせて床下を確認すると、天蓬がベッドの上に乗り上げた。
その下肢には。
「あーっ!何でお前が穿いてんだよっ!返せ!!」
「ヤ、ですぅ〜。僕だって寒いんですもん」
「だったらっ!クロゼットからいつも着てるパジャマ出せばいーだろっ!」
捲簾はムキになって天蓬の穿いてるズボンを引っ張った。
天蓬も負けずと体重を掛け、脱がされないよう必死に抵抗する。
「だーっ!もうっ!!スカスカして寒いじゃねーかっ!」
「すぐにエアコンで暖まりますよ」
「…誰だよ、さっき時間掛かるって言ったヤツは」
「さてと。僕コーヒー飲みたいので、お湯を沸かしてきますね〜」
捲簾の指をパジャマから引き剥がして立ち上がると、さっさと部屋を出て行こうとした。
ドアの前で天蓬はクルリと振り返る。
「…返せ。お前がくれたんだから、俺のモンだろぉっ!」
「捲簾…凄く扇情的で色っぽいですよvvv」
天蓬の蕩けそうな笑顔に、捲簾はカッと頬に朱を散らせた。
舐めるような視線に、捲簾は慌ててパジャマのボタンを留め始める。
天蓬はクスリと笑いを漏らした。
「コーヒーいれて持ってきますね」
「あ…その前に、リビングのアレ…全部こっちに持ってこいよ」
「リビングのアレ?」
ドアの前で天蓬が首を傾げる。
何だろうと考えていると、捲簾の顔が見る見る赤く染まっていった。
「昨日お前が持ってきた枷とかっ!あんなモン簾に見せらんねーだろっ!!」
「あぁ…そう言えば置きっぱなしでしたっけ」
「簾が起きて見つける前に、さっさと片付けろよ」
子供に見つけられた所で、アレが何だか分かるはずもないが。
好奇心旺盛な子供は何でもかんでも知りたがる。
簾にアレが何に使う物か訊かれでもしたら。
考えるだけで卒倒しそうだ。
「でも、あれは僕と捲簾だけが遊べる難しいおもちゃだって言えば、簾クンも気にしないんじゃないですか?」
のほほんとした天蓬の言い分に、捲簾の意識が真っ白に霞んで一瞬遠のいた。
どこかで理性が引き千切れる音が響く。
「…天蓬?」
「何ですか?」
「アイツに余計な知識をつけさせるんじゃねーーーっっ!!!」
捲簾の絶叫と同時に、天蓬の顔へ枕がヒットした。



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