日々感謝
White by ハクナオヤ様 as 微温湯



 それからもチョコチョコ買い食いして、目に付いたモノをチマチマと買って。
 天蓬が大好きなお菓子も買ってくれて、本も買った。
 最後にお米を買って、二人は並んで家路へと向かう。
「やっぱ久しぶりに町行くと、新鮮で楽しいな」
「捲簾と二人だとなんでも楽しいです〜v」
 うふふv と華も綻ぶ笑顔を見せるウサギさんは、片手に10キロの米を一つずつ、計20キロを持っている。
 なんせ日々捲簾を上に下にと抱えているだけに、20キロぐらいどーってことないのだ。
 なんならもう一つぐらい持っても・・・と告げたぐらいだ。
 当然、町の真ん中からこの格好のウサギさんは、周りの人から視線を集めていた。
 どう見てもウサギさんの格好じゃないし。
 人々の心のウサギさん像を、思いっきり砕いた天蓬は、とっても楽しかったデートに満足していたのだった。
 が。
 家に着いて、捲簾の発した言葉が、天蓬を呆然とさせた。

「んじゃ、コレ、紅茶と一緒に渡してやらねぇとな」

 捲簾が持っていたのは、天蓬が大好きなお菓子。
 ちっちゃな焼き菓子が詰め合わされて、まるで玩具箱のように見える。
 捲簾の気持ちをお土産から逸らしきっていたと思っていたので、てっきりソレは自分のおやつとして買ってくれていると、天蓬は信じていた。
 だけど、全然そうじゃなかったのだ。
 天蓬は捲簾の手からお菓子の箱を奪うと、その場で亀のように蹲り、腹の下にお菓子を隠した。
「天蓬っ、お前なにやってんだよ!」
「僕のっ・・・僕のお菓子だと思ってたのにっ・・・!」
「お前のは別に買ってあるだろ?」
「そうだけどっ、でもコレが一番好きなのにっ・・・!」
「お前が好きだから、好みが似てる悟浄も好きだろうって思って買ったんだよ」
 天蓬の腹の下に手を入れて、なんとかお菓子の箱を掴み引きずり出そうとするが、なかなか出てこない。
 天蓬は蹲ったまま耳を思いっきり項垂れさせた。
「捲簾がっ・・・僕の為に買ってくれたと思ってたのにっ・・・!」
「天蓬・・・」
「僕が好きだからっ、だからっ・・・!」
 今日の晩ご飯の後のデザートで、出してくれるとばっかり思ってたのに。
 一緒に大好きなお菓子を食べて、今日の事を話して、楽しい時間を反芻するつもりだったのに。
 天蓬の続けない言葉を、正確に受け止めた捲簾は、ようやく彼の心の真意に気づいてハッとすると、申し訳なさそうにガリガリと頭を掻いた。
 亀の状態で頭をイヤイヤと左右に振る天蓬を、しばし見つめる。
「ごめんな、天蓬」
 震える頭を、ソッと撫でた。
「あいつらの事、考えすぎてたな・・・。お前の気持ち、酌み取れなかった」
 ナデナデ、ナデナデ。
 労るように頭を撫で続ければ、天蓬がノソッと上体を起こし、その場でペタリと座り込む。
「このお菓子は、俺たちで食おうな?」
 優しい捲簾の言葉に、天蓬はまた頭を左右に振った。
「・・・ごめんなさい。捲簾を困らせたかったワケじゃないんです。ただ、久しぶりのデートだし、僕の事だけ考えて欲しくて・・・」
 天蓬は、お腹に密着させていたせいで、ちょっぴり温まった箱を捲簾に差し出す。
「八戒と悟浄に、あげてください。捲簾の言う通り、コレ、すっごく気に入ってくれると思うんです」
 ヘラッと笑ってみせるが、耳は今だに垂れたままで。
 ソレが、お菓子に執着しているからというのではなく、自分の子供のような行動を恥じている事ぐらい、容易に捲簾には想像がつく。
「捲簾?」
 いつまでも箱を受け取らない捲簾を訝しみ、顔を覗き込む。
 ソコにあったのは、なぜか捲簾の柔和な笑みで、天蓬はキョトリと首を傾げた。
「ワリ。なんか、さ、嬉しくなっちまって・・・」
「嬉しい・・・?」
「お前は、まだ菓子一つで大騒ぎしてくれるぐらい、俺の事が好きなんだなって、わかったらこう嬉しくて」
 つい微笑んでしまったのだ、捲簾は。
 天蓬の気持ちを疑ったのではない。
 けれど、長く一緒にいれば、自然に慣れや惰性が出てくる。
 もはや慣れや惰性、ソレすらも通り過ぎていておかしくない程一緒にいるのに、天蓬はまだお菓子一つに向けられる感情に、ジタバタしてくれるのだ。
 それが嬉しくて、天蓬が落ち込んでるのがわかっていたが、綻ぶ顔を押さえられなかった捲簾だ。
「僕は、捲簾の事がずーっと好きです。・・・大人げないですけど、時と場合によっては、八戒と悟浄が相手でも嫉妬しちゃうんです・・・」
「うん、サンキュな」
「お礼を言われる事じゃないです。捲簾、大好き。・・・すっごく愛してます」
「ん、俺も」
 持ち上がってきた耳を、捲簾が手で弄れば、くすぐったいと天蓬が肩を竦める。
「晩飯は、お前の好きなモノ沢山並べてやるから」
「ホントですかっ!?」
「食い切れねぇぐらい作ってやる」
「捲簾っ、大好きっ!!」
 お菓子の箱を横に置いて、捲簾にぎゅーっと抱きつくと、鼻先を身体にくっつけてグリグリとした。
 ピコピコピコピコし始めた尻尾に手を伸ばした捲簾は、そのままフワフワのソレを撫でる。
 本当はソロソロ晩ご飯の支度をしたいんだけど、捲簾は口にせず、ただ天蓬の好きにさせてやっていた。


 翌日。
 お土産を持ってやってきた天蓬と捲簾の話を、八戒と悟浄がフンフン聞いていたのだが。
 開封されたお菓子を、一番口にしているのは、誰であろう天蓬だった。
「天蓬っ、コレ俺たちの土産だろっ!?食い過ぎっ!!」
「らってっ、コレ好きなんですもん!」
「だからってなぁっ!」
 負けじと、悟浄も口に頬張る。
 そんなお子様みたいな言い合いを、チラリと見ていた八戒は、コクのある紅茶を口に入れながら、
「・・・天蓬が食べると思って、多めなの買ったんですね?」
「こうして食うのわかってたし。そうなったらコイツが一番食うだろうからな」
 二人の会話を聞いたウサギ耳が、ピクリと動いた。
「そう・・・だったんですか・・・」
「あぁ。紅茶とセットにして持ってきたら、八戒がこうして出すと思ってたし」
 だから、天蓬が好きなモノで、悟浄に合いそうなモノをチョイスしたのだ。
 まさかソレが原因で、天蓬にヤキモチを焼かせてしまうとは思わなかったけれど。
「ぼぼぼぼ僕っ、そんな事知らなくてっ・・・!」
 知ってたら、あそこまで子供みたいな行動に出なかったのに。
 天蓬は紅くした顔を、両手で掴んだ耳でバッと隠した。
「恥ずかしい〜っ、とってもとっても恥ずかしい〜っ!」
 身悶えている間にと、悟浄がお菓子に手を伸ばし、モグモグと口に運ぶ。
「恥ずかしがってる天蓬も可愛いなぁ」
「もうっ、そんな事言わないでくださいよっ!」
「え〜、可愛いモンは可愛いんだからいいじゃん」
「いくないですっ!」
「あははは」
 笑いながら、もうもうもうっ!と、憤慨する天蓬の頬を突っついたり頭を撫でたりする。
 ソレを横で見ていた八戒と悟浄は、
「・・・なんか、土産貰った立場でなんだけど、良いように利用されている気がする・・・」
「・・・僕も、そんな気分です」
 貰っておいてなんだけど、ソコまでいちゃつくなら、自分の家でやってもらえないだろうか?
 俯く八戒と悟浄に気づかず、二人はスキンシップを繰り返し続けていた。

終幕



ウフ…ウフフフフー。
ハクさんから頂いちゃいましたよっ!念願のウサ天っっ!!!
園生の誕生日に何か頂けるということで「ウサ天っ!ウサ天の御本でサラリと省略されていたウサ天のデートをっっ!」と鼻息荒くお強請り、そしたらこのラブリー小説ですよ〜ふはははっ!でかした自分、ありがとうハクさーんっ!!(ぎゅうぎゅう抱擁)
ホント…ハクさんちのウサ天は可愛すぎで卑怯だ。つーより、捲簾も八戒も悟浄も可愛い。
ひそかにウサ天と狐ごじょが一緒にお茶してほのぼの〜したり、お菓子取り合いするのが好きだったので、さらに身悶えました(笑)。
ほんとーに嬉しい〜ハクさんありがとうございましたvvv
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