マレー鉄道に憧れて - Cameron Highland from Malaya Railway-

-6日目:夜明けのマレー鉄道を超えて〜ジム・トンプソンのミステリーとTanah rataの高原-
夜明けのマレー鉄道を走りぬけて

朝、夜明けの頃にふと目が覚めた。
長い鉄道はまだ走りつづけている。

キャビンから出て、通路のデッキに立つと、むっとした空気が肌を包む。足音が列車の轟音にかき消される。
熱帯といえどもこの朝の夜明けの時間は肌寒い。どこまでも続くかのごとく長く連結された列車は轟音を響かせて、プランテーションのゴム園や錫鉱石のコンビナートの間を右に左にとカーブしつつ、縫うように走りつづける。
扉は開放されている。開放されたまま、列車はスピードをますます加速する。その間から容赦なく強い風が吹き付け、髪を乱す。
誰もいないタラップに腰をかけ、風を避けながら鞄から取り出した煙草に火をつける。
ちらほらと乗客が起きだしてくる。タラップでのんびり景色を眺めているような酔狂な人間は私くらいだろう。

マレー半島の大地に広がる見渡すかぎりのゴム園。それらは秩序を保って農作物として計画栽培がなされている。
時々止まる、小さな駅。乗客はまばらだ。
このKTMは非常に長い客車の連結であるため、小さい駅ではホームに届かない。
この一等客車は、当然のように、駅のホームをはるか離れた場所で停車し、発車を待つ。
昨日とは違い、まじめそうな若い精悍な車掌が声をかけてきた。

「あなたは日本人か?」
「ええ、私は日本から来た。日本人よ」
「東京から?」「違う、名古屋。日本の真中の街」
「アキハバラを知ってるか?」「知ってるよ。でも秋葉原は東京。名古屋は大須。大阪は日本橋。電脳街」
少ない日本の知識、彼は秋葉原と東京しか知らないらしい・・・。
「名古屋はどんな街か?」
「名古屋は車の街。工業都市。トヨタ、アイシン、デンソーなど、たくさんの車と部品の工場がある」
大きくうなずいた彼はまもなく、停車のためにタラップから飛び降り、確認をしたあとに、首から下げたホイッスルをピピー!と勢いよく鳴らし、敬礼して発車準備をしている。

「あなたはどこへ行くんだ?」
私の煙草を一本くれとせびりながら、小太りの一人の車掌が目の前に立ちはだかった。
「私はクアラルンプールに向かう。クアラルンプールに到着したら、バスでキャメロンハイランドへ行くわ」
「クアラルンプールには滞在しないのか?」
「キャメロンハイランドから戻ったらKLに滞在する」

そして、彼らはたくさんのマレーシアのスポットを私に教えてくれた。

遠くに朝日が昇っている。
プランテーションの農園ごしに望む朝日は神々しく神秘的だ。ゴムの木やさまざまな熱帯植物は、まるで爬虫類のような不思議なぬめりをたたえた色も鮮やかに、じっとりと朝露に湿っている。
丘を越えて、遠くまで見晴らすごとに、自分の中にマレーシアへの郷愁が胸にふつふつと湧き上がってくることを感じる。私は、やっぱりマレーシアが好きなのだと再確認する。
「あれがゴム園だ!」
小太りの車掌が指差す先には見事なゴム園が広がっている。
「あれはマングローブの森だ!」
「駅についたぞ!」
「あれを見ろ、コンビナートだ!」
彼は私を手招きして、興味深い景色を次々と説明してくれる。
そのたびに感心しながらシャッターを切りつづける。
しかし、さすがに
「マレーシアの家が覗けるぞ!」
という言葉には参った。停車した駅の、これまたはずれの場所。その前に建てられているとあるムスリムの集落の家の中が、電車から丸見えになっていた。私はシャッターを切るのを辞退した。
「これは趣味が悪い」と、まじめな顔で苦笑する私に、車掌は吹き出した。

すでに東の空は明るくなっている。電車はまた加速して、次の駅を目指す。
深夜、あれほど停車時間が長かったこのスロ−リーな鉄道も、朝日が昇った後は、非常に手際よく発車する。
時刻表を眺めつつ駅を数えたこの夜行列車の旅。ディレイはない。
走る列車のタラップに手をかけてふっと列車を振り返ると、冷たい水が頬にかかった。
小太りの車掌とそして私の手や髪にもかかる。びっくりして飛びのいた。

「何これ?」
「トイレの水ー!Ha!Ha!Ha!」

彼はまったく気にした風もなく、ポケットから分厚いちり紙を取り出して、拭け、と渡してくる。
軽いショックを隠せずに、頬をゴシゴシとこすった。この際、とウェットティッシュで、さらに顔をぬぐった。既に化粧は完全に剥げている。しょうがない。朝の洗顔だ。
彼は笑いながらたくさんのちり紙をさらに渡してくる。
ここでは、今までの非常識をさらりと流せてしまう自分がなぜか自然に感じられるから不思議だ。Tidak apa apa。
マレー鉄道のトイレは垂れ流し式。
大きなブツが飛んでこなかったことだけが救いである。

私の隣には2名の車掌が、ずっと遠くの国から来た不思議な存在ともいえる、私をずっと見守っている。
一人は、パンコール島の南のはずれの、オランダ砲台の近くで生まれ育ったという若い車掌だった。
「あそこに男がいる。あなたの友達か?」
私と同じように隣のキャビンから行き交う光景を眺めている男性が目にとまった。
「私は知らない。私は一人で来ている。彼はチャイニーズでは?」
「一人!?そりゃ酔狂だ。いや、彼はチャイニーズではない。日本人だぞ」
「日本人?」
「日本人だ。そう言っていた」
めがねをかけた、年のころ私と同じくらいのバックパッカー。
服装がきれい目で、気弱な感じ。バックパッカービギナーといった風貌。彼も、きっと日本ではフツーのまじめな会社員なんだろうな。
「おはようございま〜す」
私の日本語を耳にした彼は、ビックリした顔で振り向く。
少しの間、話をした。彼も私と同じキャビンで同じく漆黒の夜を明かした。
やっぱ彼も沢木耕太郎に憧れたクチなのかしら。

そういえば私の当初のマレー鉄道の目的である、「長距離特急での駅弁売りに囲まれ、まくしたてられてとうもろこしとナシゴレンを購入し、手づかみで食べる」という図式は、ついに実現することがなかった。
そうだろうよ、こんな深夜特急では・・・。
現在、バタワースからイポーの間を複線化するために昼間の便を運休中で、復活は2004年頃の予定だという。
「世界の車窓より」で、ちょっと憧れていたファンクションだったんだけど・・・。少し残念。

さらに列車は加速する。廃墟のような退廃的な外観をもったたくさんのコンビナートをこえて、次第に都市部へ近づいていく。
通り過ぎる駅の乗車客も、目に見えて増えてきた。
「アレを見ろ!高速道路だ!」
たくさんの車が高架から下車し、トールゲートに群がっている。
マレーシアの道路事情はかなり良い。南北に走るハイウェイは、マレーシアの都市と都市を効率的に結び、非常に快適なアクセスを提供している。
丘を見上げ、トンネルを抜ると高層ビルがいきなり目に飛び込んだ。
「ここがクアラ・ルンプールだ!もうすぐ到着するぞ!」

深夜、全力疾走しながらたくさんの駅をすぎ、ジャングルを抜け、街を越え、飛び込んだ高層ビル街。
それがはじめて目にするマレー半島の首都、クアラ・ルンプールと確信する。夜が明けて首都に入ったことを。
「ツインタワーが見えるぞ、写真を撮れ!」
彼は私のカメラワークをずっと指図している。
木々に視界をさえぎられ、疾走する列車の開放された扉からは、一瞬のカメラワークもままならない。
クアラルンプールは視界がひらけており、所々に超高層ビルが見える。
「もうすぐ到着する。荷物の準備をしろ」

言われるまま、私はキャビンに戻った。同室の女性は、「あなたの分のケーキを残したから持っていきなさい」と声をかけてくれる。私はそのケーキを鞄にしまい、そしてありがとうとお礼をいって、ここで別れた。
クアラルンプールのKTM駅は地下にもぐって、そして停車した。
私の乗ってきたこの客車は、これからシンガポールに向けてまた発車する。
マレー鉄道を疾走する深夜特急の旅と、ここで別れを告げた。
ピギーをおろして振り返ると、2人の車掌が私を見つめ、大きく手を振っていた。
「ありがとう!Sampai Jumparagi!バイバイ!」
満面の笑顔、そして少し心配そうな顔をした彼らは、私が振り返るたびに手を振って送り出してくれた。

たまらなくエキゾチックだった鉄道の旅。そして私の後に、また、旅人は続くのだろう。
マレー鉄道に思いをはせた人々のノスタルジーを乗せ、轟くような叫びをあげて疾走する深夜特急。

ゴム園の向こうに昇る朝陽
ジャングルを越えて眺める朝陽は不思議な郷愁を誘う
1本の木がそびえる丘
湖、というか沼地もあるし
この車掌に煙草を3本ばかり巻き上げられた
少しずつ生活のにおいが・・・
ホームもないけれど、駅に停車してる
コンビナートを結ぶ貨物列車
KLに近づくにつれ、近代的な複線の駅が見えてくる
モスクも見えます
長い長い、セナンドゥ・ランカウイ
どこまでも伸びる線路
工業地帯の近くには貨物列車が多くある
コンビナートもたくさん見えます
と思ったら、不思議な丘の間を抜けて・・・
ジャングルを横目に疾走する
KLにかなり近づいてきました
マングローブの森
高速道路のIC。
ということはもうすぐKL?
都市部に近づくにつれ近代的になっていくのが面白い
パンコール生まれの車掌
このジャングルを抜けるとKLです!
遠くにタワーが見えてきた〜
これは、KLのシンボルのツインタワー・・・朝もやの中で
バスターミナルは遠いな〜

KLセントラル駅はとても近代的な駅だった。
そこから、名前ちっと忘れたけど(なんたってこれを書いてるのが2003.4なもんで・・・)
KLで一番でかい バスターミナルにいった。ガイドブックには必ず名前のある大きなターミナルです。

どうもモノレールの路線がわけわからんので、なんとなく適当な駅におりて、
それからずーっとキャリーをひきずって歩き回った・・・。
暑さで倒れそうでした。涙

KLセントラル駅到着。
これからこの電車はシンガにいくそうです〜
KLセントラル駅の中は国旗がはためいている
近代的なドームですね!
KLセントラルのタクシー乗り場
というわけで、モノレールで移動
切符です〜
おされですね
駅の構内は近代的!
ホームもとてもキレイでした!
遠くに見えるモスク
・・・バスターミナルから見えた高層ビル?だと思う・・・
華僑のお茶やさんです〜
天気はそこそこ良い
キャメロン・ハイランドへの長距離バスの旅

屋台がたくさんありました。バスのチケット売り場もたくさん!
キャメロンハイランドに行きたいんだけど?と、あっちこっちで聞いたんだけど、100以上もあるっぽいバス会社カウンターのうち、キャメロンハイランド行きは2社くらいしかなかったような・・・?

キレイなお姉さんがいるところでチケットを買おうとしたんだけど、
このバスターミナルからは発車しないと言われ、着いて来いといわれた・・・。
Why??

お姉さんの後を延々ついていくと、歩道橋をわたって下に下りて、
すたすたと旅行代理店っぽいところに入っていきました。
どうもこの代理店のチケットを販売しているカウンターだったみたい・・・?
キャメロンハイランド行きは、基本的にこの道路をまたぐ歩道橋(いけばすぐわかる)を渡って降りたとこから発着している様子・・・。

いちばん早い便をとって、しばらく荷物を代理店にあずけてウロウロした。
ダンキンドーナッツでドーナッツを数個買って、ネットカフェでしばしインターネットをつないでみる。

さ〜て、これから長距離バスの旅ですもの!水もおやつもゲットしたし!^^

バスターミナルの歩道橋
中は屋台と人でいっぱいでした!
本格的な屋台フードコートになってるよ!
ずらりと並んだバスカウンター。
マラッカ行きはめちゃくちゃ種類も便数も多い!値段もまちまち。
歩道橋をおりたら、代理店があったよ!
これがキャメロンハイランド行きのバス乗り場。というか店の前。
奥に進んでいくと代理店があります。金馬=キャメロン らしい
マレー鉄道でイタダイタシフォンケーキです。おいしかった〜
ネットカフェ・・・ウイルス感染したPCばっかじゃんか!爆
ダンキンドーナツといえば
やっぱりアジア!(笑)
バスの車内です〜
普通だね〜^^
と、おやつを食べてみました
バスの窓から眺める、素朴なマレーシアの横顔

さすがに列車の中では熟睡できなかったので、バスの中では熟睡。
なんたって5,6時間かかるんだもの。
気づいたら車が止まって、休憩だって言われてドライブインに入ったよ。

フードコートもあって、お土産、コンビニもあって、なかなか機能的でした。
トイレが汚くて有料だけど、ま、それは御愛嬌・・・(ボットンでした)

なんか飯食ってる客もいるし・・・。20分以上停車してた気がします〜。

到着したドライブイン
このバスに乗ってきました〜
中は広いフードコート。
でも値段が書いてないッス・・・
通りがかった山の中の小学校です
なぜかバスが停車した。
素朴な学生さんたち
外人がめずらしいようで
さかんにポーズを・・・
女の子もはにかみながら手を振ってくれました
みんなでバイバイと送り出してくれたよ!^^
のどかな田園風景
ジャングルの中に高床式の住居がたくさんありました!
うっそうと茂るジャングル
公園みたいなところ
キャメロンハイランドへの入り口
なだらかな丘陵は
お茶、お茶、お茶!!
お茶畑の谷間に家や製茶工場があるようです〜
眺めのよさそうなスポットもあちこち点在してます。ドライブできたいねぇ〜
キャメロンハイランドへ到着!

 

昼下がりのティータイム

 

夜はひとり中華です〜