高音部の調律シミュレーション (Tuning Simulation of Treble Part) v0.2


例えば 以下のようなピアノのインハーモニシティを設計してみます。
巻線部は 1(A)〜28(C)・傾き(曲線) 0.05 芯線部は 49(A)のインハーモニシティ値 0.55・傾き(直線) 0.087です。

inharmonicity

そして今回は 割り振り以後の高音部 45(F)キー以上での場合です。

これまでの調律のシミュレーションで オクターブで合わせた場合は 以下の様な音程での`うなり'とセント値 となりました。

beat octave

また 2オクターブで合わせた場合は 以下の様になります。

beat 2octave

インハーモニシティがあれば 平均律のように オクターブと2オクターブの`うなり'は 同時に 0にはなりません。

しかし いずれの場合でも実際のTuningとは合ってはいないと感じていました。
それは オクターブでも2オクターブでも 実際には`うなり'は 0 もしくは殆んど 0の近くで合わせていると思えるからです。

シミュレーションでは オクターブか2オクターブを 0にしなければいけない...
しかし 前回の 「巻線の調律シミュレーション (Tuning Simulation of Wound Wire)」では 必ずしも 0にする必要はないのでは? と思えるようになりました。

そこで もう少し`うなり'を少くする事は出来ないものかと 改めてシミュレーションを見直してみました。

例えば オクターブの倍音の`うなり'は以下の様になりますが

partial octave abs

プラスとマイナスを正確に表現すると 以下のようになります。

partial octave

その基音と2倍音をプラスとマイナスで同じ値にするとどうでしょう?

partial octave x2 beat octave x2

しかし オクターブと2オクターブの両方とも`うなり'は 大きくずれてしまいました。

では オクターブと2オクターブの`うなり'を プラスとマイナスで同じ値にするとどうでしょう?
(45(F)から最初のオクターブ(46(Fis)〜56(E))はオクターブのみで 以後はオクターブと2オクターブで合わせています)

beat octave2octave

`うなり'を絶対値でみてみます。

beat abs octave2octave

2キー間の`うなり'のグラフは 起点とするキーの位置で表示していますので 上記のグラフは下のキーから上のキーを見た場合ですが 上のキーから下のキーを見た場合で示してみます。

beat abs rev octave2octave

例えば 64(C)-88(C)の2オクターブと 76(C)-88(C)のオクターブで プラスとマイナスは逆ですが ほぼ同じ値になっています。
また オクターブの`うなり'は 最高音から12音(オクターブ)以下では 2つ以下になります。

そしてそれは 実際の Tuningの感覚と馴染みます。

始め オクターブを上げて行って `うなり'が 0になった所で 2オクターブの`うなり'を確かめて それが多ければ オクターブをほんの心持ち上げてから 2オクターブを見ると 殆んど`うなり'がなくなっているように感じます。

『オクターブには幅がある』と言われていますが それは この状態を表しているのではないでしょうか?


因みに 芯線部の傾き(直線)を 0.075に変えてみます。

inharmonicity 0.075 beat 0.075 abs rev octave2octave

高音部が下がるのは分かりますが それに加えて低音部でもセント値が下がって行きます。

芯線部の傾き(直線)を 0.095に変えてみます。

inharmonicity 0.095 beat 0.095 abs rev octave2octave

セント値は 高音部では上がりますが 同じく低音部でも上がります。


と言う事で高音部も 巻線の低音部と同じ様に 絶対 0に合わせるのではなく キーとキーが響き合う`うなり'を採るのでは と思われますがいかがでしょうか?

実際にはまだ 5度の`うなり'が上下していたりでイマイチですので もう少し調べてみようと思っていますが 取り合えず今回はここまで...

(※ β版への追加です)
シミュレーションを動かしていて もう少し明確になった点があります。

「45(F)から最初のオクターブ(46(Fis)〜56(E))はオクターブのみで」 合わせていましたが それでは 4thと 5thの`うなり'にどうしてもムラが出来てしまいます。
そこで オクターブではなく 4thで合わせると ある程度滑らかになりました。

それは実際の Tuningで オクターブのみで合わせるのではなく 4thや 5thを上下のキーでチェックして`うなり'のムラを 出来るだけ少くして行くかの様です。

セント値のグラフでは 今回(NonZero)の値と これまでの曲線(Curve)でシミュレーションした値との 2つを表示します。削除しました。

beat nonzero beat reverce nonzero

(※ v0.1)追記です。

「巻線の調律シミュレーション」(Tuning Simulation of Wound Wire) と同じくTuning動作時の`うなり'の差の変化を見てみます。
45(F)・50(B)・55(Es)・60(Gis)・65(Cis)・70(Fis)・75(H)・80(E)・ 85(A)のキーの場合です。

treble-beat

75(H)の場合 --- 63(H):75(H)(2:1)と51(H):75(H)(4:1) --- の`うなり'の変化を見てみます。 (合わせた値を中央の 0として そこから±20[cent]の範囲で変化させた場合です。)

treble-k2k-75

こちらは2つの`うなり'のみですので まっすぐに変化していて オクターブ(2:1)と2オクターブ(4:1)が±逆で合っています。

参照〉割振りの調律シミュレーション (Tuning Simulation of Laying)

変更履歴:
v0.2['16/09/18] セント値のグラフを削除しました。
v0.1['11/11/29] 追記
v0.0['11/04/13] β版
v0.0['11/04/06] 暫定版


Dobashi.M
Last modified: 1月 03日 火 15:08:18 2023 JST