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設計

設計の基本的な考えを示します。


目次


LEDの選定

現在白色LEDを作っているのは、日亜化学工業だけです。どうやら、青色LEDに蛍光体を組み合わせているようです。日亜は、特許や発明者の中村氏への対応で、すっかり、いじきたない会社っていうイメージがついてしまいましたね。

いくつか品種があるのですが、結局 NSPW500BSにしました。スペックを表に示します。注意しなければならないのは、青色LEDなどもそうですが、GaN 系のLEDは順方向電圧降下VFが3.6Vと大きいことです。

サイズ
直径が3mmのものと、5mmのものがあります。電流あたりの明るさが5mmの方が大きいので、5mm にします。
指向角度
広角タイプと狭角タイプがありますが、ライトとして使用するので、狭角タイプにします。
色合い
白色度が強いものを選別して(b)というランクがありますが、高くなるので気にしません。無印は選別無しです。
メーカ 型番 標準輝度 指向角度 直流電圧降下VF 直流逆耐圧 標準電流 順方向最大電流 パルス順電流 直流逆電流 許容損失 動作温度 光出力 価格など
標準最大
日亜化学工業 NSPW500BS(b) 5600mcd 20° 3.6V 4.0V 5V 20mA 30mA 100mA 50μA 120mW -30〜85℃ 4mW @250円(共立)

電源の仕様

東芝の水中ミニライトを使うことで、単三×4本なのですが、利用率などを考えて NiMH電池を使うことにします。情報源は松下電池工業とか。

ただし、水中機器は、特別な対応をしていない限り、Ni-MHを使うことは出来ません。それは、Ni-MHは水没時に水素ガスを発生するので、防爆弁などで圧力を逃がしてやる必要があるからです。東芝ミニライトは、Ni-MHを用いないこと、と明記されていますが、あえて、Ni-MHを使います。試されるかたも、自己責任でお願いします。

私が高校生ごろの時分は、NiCd電池の高容量化(ウォークマンの影響ですね、モバイルのハシリというか)で700mAh のがやっと出はじめたばかりだったのですが、最近は 1600mAhですか。ずいぶんと、世の中進歩したものです。

簡単な計算

まずはじめに、簡単な見積もりを立ててみましょう。

消費電力

駆動側供給電力消費側電力
  • 1550mAh NiMH 単三電池(デジカメで使っているのと同様)×4本
  • 1時間の連続点灯を行う。高電流放電だと、取り出せる電気量は下がります。70%の電気量が取り出せるとして、1550mA×70%=1085mA。
  • セル起電力=1.1V、変換効率η=70%として、1085mA×1.1V×4本=4.774W。
  • 隣の消費電力を見ながら、駆動可能時間=4.774W/2.88W=1.65時間。
  • 目標は1 Night Dive の1時間持つことなので、ここまで持てば十分でしょう。1 Day Dive あたり15分つかうとすれば、7 Dive 使えます。(注2)
  • 後述の計算より、LED本数は40本とする。
  • 日亜 NSPW500BSを使うとすると、3.6V×20mA×40本=2.88W。(注1)
注1:
ワット数だけ見るとずいぶんと暗いライトだこと。
注2:
アルカリ乾電池駆動だとどれぐらい持つのかな。私はデータ調べるのが面倒でやってないけど、読者への課題としよう。1 Night Dive 持てばラッキー。

点灯回路

ようやく設計っぽい話になってきました。点灯方式をいくつか検討してみましょう。

直列定電流

LEDを全て直列にして、電流検出抵抗を1本だけカマ。電池からステップアップコンバータでLEDを駆動し、電流検出抵抗の電圧をフィードバックして定電流制御をかける。

特徴
定電流駆動で回路がすっきり。
欠点
LED1本あたり 3.6V×36本=130V のステップアップコンバータを作らなければならない。めっちゃ非現実的。D-Dコンバータを使う場合は、整流回路に30V耐圧のショットキバリアダイオードを使えるようにするのが得です。
トランス昇圧

次に回路を考えるがやっぱり高圧回路にも未練が。トランスで昇圧してみよう。たとえば、冷陰極線管の点灯キット(面発珍とか、ポータブル蛍光灯とか)で回路を楽して、あとは整流するのだ。

特徴
キット利用で楽々
欠点
トランスサイズが大きい。ブロッキング発振などの場合、コンバータの効率がそれほど高くない。
定電流ステップアップコンバータ + LED 直並列

Linear Tech のICで、最近広告してたので、LT1932というものがあります。昇圧型チョパで、定電流制御をする、白色LED点灯専用のICです。3V入力の時、8個の白色LEDを駆動出来ます。

特徴
効率が高い。小型(1回路時)。
欠点
出力電流の制限より、1回路で最大16本駆動。40本駆動には3回路以上必要(注1)。入手性が悪い(注2)。

注1:
スイッチングトランジスタの電流が 400mA なので、8倍昇圧すると、出力電流は 50mA MAX です。2回路並列→8×2=16本が、1ICで駆動できる限界でしょう。
注2:
Linear Tech は、あんまり出まわってませんね。メーカーに態度改善を希望します。
ステップアップコンバータ + LED 直並列

やっとまともな回路を考えようとした。3.6V×6本=21.6Vのステップアップコンバータに、6本直列のLEDを6本並列にするのだ。コンバータの出力は、電圧制御とし、LEDに流れる電流は抵抗で制御するようにする。

特徴
わりとまとも
欠点
LEDの特性変動やばらつきを考慮、電流制限抵抗での電力ロス

ステップアップコンバータ + LED 直並列

というわけで、ステップアップコンバータ + LED 直並列について、さらに詳細に検討します。

ステップアップコンバータの選定

ステップアップコンバータとしては、市販のモジュールで、ミニライトのケースに内蔵可能な大きさのものから選定します。たまたま店頭で、コーセルのDC-DC コンバータが売っていたので、その中から。

選定結果は、ZUW30515となりました。

LED直並列構造の設計

コンバータの出力が 30V ×100mA と決まったので、それに対して、LEDをどのように接続すれば最も効率が良いかを検討します。

直列本数
6本ぐらい〜最大8本まで。8本×VFmax(=4.0V)=32Vとなって、コンバータの出力をオーバーするのですが、そこはそれ。ばらつきはそう大きくないと仮定して、そのへんまで検討しましょう。
並列本数
1回路あたり15mA 〜定格 20mA までを検討範囲とします。もしかして、コンバータから 100mA 定格いっぱい引っ張り出すと、発熱とかできついかも。
合計本数
別途レイアウト上の検討から、35本〜43本ぐらいが入る限界かな。
持続時間
コンバータの効率をη=70%(typ.)として、電池容量(1.1V×4本×1550mAh×70%=4.774Wh)をコンバータ入力電力で割って計算します。1.11時間となるものもありますが、これは採用しない、ということに。
電流制限抵抗
だいたい、10V×20mA=0.2W < 1/4W 型で十分です。さらに小型化を狙うために、5V×15mA=0.075W < 1/8W型 を目標とします。
効率
(VF合計)/(コンバータ出力=30V)×(コンバータ効率=70%)で算出します。
直列本数並列数合計本数 LED電流総電流持続時間LED電圧電流制限抵抗電圧電流制限抵抗効率
typ.max.typ.min.typ.min.
6本6列36本 15mA90mA1.23h21.6V24.0V8.4V6.0V560Ω400Ω50.4%
7本6列42本 15mA90mA1.23h25.2V28.0V4.8V2.0V320Ω133Ω58.8%
8本6列48本 15mA90mA1.23h28.8V32.0V1.2V---80Ω---67.2%
7本5列35本 15mA75mA1.48h25.2V28.0V4.8V2.0V320Ω133Ω58.8%
7本5列35本 20mA100mA1.11h25.2V28.0V4.8V2.0V240Ω100Ω58.8%
8本5列40本 15mA75mA1.48h28.8V32.0V1.2V---80Ω---67.2%
8本5列40本 20mA100mA1.11h28.8V32.0V1.2V---60Ω---67.2%

その結果、8本直列×5回路並列、LED電流=15mAとしました。VFが4.0Vのものが8本並ぶと、VF合計が32Vとなってコンバータの出力電圧をオーバしたり、VF合計にくらべて、抵抗での電圧降下VRが小さいので、各電流制限抵抗は、実測の上決定する、ということにします。

回路図

最終の回路図としては、図のようなものになりました。

次は製作



近藤靖浩