温かな水滴が肌を濡らした。 その正体をカミューは知っていた。 マイクロトフが泣いているのだ。 彼の冬の夜空を思わせる眸は時折、温かな雨を降らす。 それは決まって情事の後。 未だ流れ落ちる涙を拭ってやりながら、カミューは答えを貰えない事を知りつつ尋ねる。 「・・・どうして泣いているの?」 寝起きで掠れた声で尋ねても、マイクロトフは首を横で振る事でしか答えてくれない。 こんな時のマイクロトフは何があっても答えてはくれないのをカミューは知っていた。 マイクロトフの腕が伸びてきたかと思うと、カミューの身体に腕を回して抱き締めてくれる。 カミューは自分を包んでくれている身体を離さないように、より強い力で抱き締め返した。 (・・・私はなんて卑怯なんだろう・・) カミューはマイクロトフの苦悩を知っていた。 以前、マイクロトフが情事の後に呟いていた言葉を聞いてしまったのだ。 ----お前はいつまで偽りの俺を愛してくれるんだろう・・・・?・・ その一言でカミューには全てが分かってしまった。 カミューがマイクロトフの事を純粋だと言う度に彼の表情が少し歪む訳を。 マイクロトフはカミューの想いを疑っているのだ。 偽りのマイクロトフなどいないのに。 カミューは見た目よりも柔らかいマイクロトフの黒髪を手で梳いた。 彼は今、どんな想いに駆られているのだろう。 ----自分の狡さを嘆いている? ----それとも来る筈もない別離の瞬間に恐怖している? それは杞憂だよ、と教えてやりたい。 けれど、カミューは知らない振りをしたまま今日もマイクロトフに言う。 ----マイクロトフは優しいから ----純粋だから心配なんだよ その言葉を言われた時の表情。 表情は平静を装っても、漆黒の眸に浮かぶ動揺までは隠しきれていない。 カミューの言葉で傷付けられた眸を見る度に言ってやりたくなる。 ---そんな一面をも・・・・・ 無意識に言ってしまいそうな言葉。 口からついて出そうな言葉をいつも寸前で押し留める。 言って安心させてやりたい。しかし、言いたくない。 相反する気持ちがカミューを苦しめる。 そして、最後に勝つのは。 カミューの腕の中で安心したのか、穏やかな寝息をたて始めたマイクロトフの眦に触れるだけのキスをする。 涙の痕は痛々しいけれど、それでもカミューはこの道を選ぶ。 (・・・言ってやらないよ、マイクロトフ・・・・) 自分の言葉でどれ程、マイクロトフが気付いているかを知っていても、カミューの選択肢はこれしか残されていない。 カミューが騙された振りを続けていればこそ、続いている関係なのだから。 この危うい関係を保つためには、少しの嘘が必要だという事をカミューもマイクロトフも知っていた。 だから、カミューは気付かぬ振りをして今日もマイクロトフと過ごす。 「それに・・・私がお前の気持ちに気付いているのを知ったら、お前は私の元から去るだう・・・?・・・」 カミューの声は微かに震えを帯びていた。 しかし、その声は誰にも気付かれる事無く深い闇の中へと消えていった。 *** +++申し訳ないです、前のが短かったし内容が・・・・てな感じなので、 少しでもと思ったのですが、恩仇にしか・・・・今回も短いし。 しかもリク、まるっきり無視してます(汗)。 ホントにすいませんでした〜!! |
望月要様から以前いただいたSS、
「哀シイ気持チ」の続編SSを再びいただいてしまいましたーv
赤はやはり騙されていませんでしたね〜(笑)
ちょっと青が可哀想なのですが、今しばらく耐えてくれマイク!
望月様、有難うございました!
(2001.02.19UP)