逃げろ、逃げろ−!

 もうじき連休というのに、寒いですね。風邪などひいてはいませんか?3月末、クリーニング店のダウンジャケット&コート3割引という日に、迷ったのですが、やめておいて正解でした。真冬用のコートから初夏の薄物まで、服をたくさん出していて、うまく収納できません。早く暖かくなりますように。そんなわけで、4月のライブは2回とも雨で寒い日でした。なのに冷たい雨の中を来てくださった方々、ほんとうにありがとうございました。例年4月は、新年度で忙しいこともあって、お客様は少なめなのですが、寒くて足元が悪かったのに、よくこれだけの方が来てくださったなあ、と思います。それに、静岡や札幌からもお客様が尋ねてくださって、これまた感激。「景気は底を打った」と言われていますが、私は18年間歌ってきて、集客や営業は今が一番苦しいです。でもお天気と同じでもう少し頑張れば、暖かな日差しが射す日もくるでしょう。そう信じて、淡々と続けることにします。

 さて、私は最近、自分のことで重大な発見をしました。私は「逃げる話」が大好きみたいなんです。動物が脱走して捜索中、というニュースはときどき見ますよね。あれを見ると、必ず「頑張れ!早くもっと逃げろー」と、動物のほうに味方してしまうのです。最近では中国の道路でトラックに積まれた、たっくさんのひよこが逃げ出して、道路中がうじゃうじゃと、ひよこだらけになっているニュースに心奪われました。あと、これは日本ですが、どこかの動物園からカピバラが逃げ出して、何日も見つからなかった話もよかったなあ・・。あんな大きいものがどこに隠れるというのだろう?と不思議に思いながらも、心のどこかで「頑張って逃げて」と応援しているのです。(結局数日後、捕獲されたようです。残念・・)

 そして最近「八日目の蝉」というテレビドラマを観ているのですが、これがまた逃げる話。不倫相手の奥さんが生んだ赤ちゃんを誘拐して、女性が逃げるお話です。原作は角田光代さんの同名小説。ヒロインは自分も相手の子供を身ごもったことがあるのですが、堕ろすよう頼まれ、中絶。これがもとで妊娠できなくなってしまいます。なので、誘拐した赤ん坊を、自分の子供が生まれたらつけるはずだった名前で呼び、可愛がります。紆余曲折あって小豆島まで逃げるヒロイン。そこで擬似親子二人の、つつましくも静かで幸せな生活がはじまるのですが、、というお話。不実な男が悪い!でも誘拐は犯罪、と頭ではわかりながらも、仲むつまじい擬似親子をこのままにさせてあげたい、、、と願ってしまいます。どうかこのまま逃げおおせて!とハラハラしながらのテレビ観賞。耐えきれずに原作本も買ってきて、ひと晩で読んだのですが、こちらは誘拐された赤ちゃん(女の子)が成人、恋愛するまでの運命をも描いています。重苦しいお話ですが、ラストは瀬戸内海のきらきらした明るい海がみえるような、希望をのぞかせるものになっていて、泣きました。ドラマはどうなるのか、次回がいまから楽しみ。ヒロインは檀れいさんが演じていて、金麦のCMのかわいい感じとは違った、薄幸の女性がぴったりです。

 という話を友達にしたら、「じゃあ‘MOTHER‘も観れば?あれも誘拐して逃避行する話だよ」と教えられ、先日2回目を観てみました。初回を観なかったのですが、こちらは小学校の先生が虐待を受けている女の子を(ひどい親から守るため)誘拐して逃げる話のようです。でも、いざ逃げる、というときに駅のトイレで不注意から、財布やカードをすられてしまうという場面があってげんなり。これから逃げるんだから、もっと真面目にやれ〜っ(?)って。それで残金が千円ちょっとしかないはずなのに、バスに乗って遠くに行ったり、なんだか納得できませんでした。でも後半でてきた謎の女(多分ヒロインの実の母)役の田中裕子さんはよかったなあ・・・。ドラマを観つづけるかはちょっと?ですが、その謎解きだけは知りたいな。昔、私が劇団研究生だった頃、田中裕子さんはテレビでブレイクして、所属していた文学座は受験生が急増した記憶があります。で、業界の先輩のお話では、田中裕子さんは研究生の中で一番の出来で、演技のみならず、ダンス、歌etc.何をやらせてもずば抜けてうまい、ということでした。

 脱線しちゃいましたが、もうひとつ。だいぶ古いけれど、緒方謙さん主演のテレビドラマ『破獄』。今調べたら1985年の放映だそうですが、私は数年前に観て惹きつけられました。緒方拳さんの追悼ドラマとしても放送されたはず。原作は吉村昭の同名本。実在の人物をもとに書いているらしいですが、何度つかまっても、必ず刑務所から脱獄する主人公のパワーに圧倒されます。これもまた「逃げろーー!」と心の中で叫んでしまう・・・。犯罪者だとわかっているのに。

 どうしてこんなに逃げる話が好きなんだろう?おおむね好きなことをして暮らしているはずなのに、私も何かから逃げたいのかなあ。でもどこへ?誰と?私みたいに図体(態度も?)の大きい人はどこに逃げてもすぐにみつかってしまいそう。ちょっと違うけれど夢占いで調べてみました。逃げる夢を見る・・・精神的に不安定な状態であることが多い。現実でなんらかの問題を抱え、それから逃げたがっている。あるいは体のどこかに自分では気づいていない不調があることの知らせ、だそうです。でも健康診断は行ったばかりだし、何らかの問題を抱えていない大人なんていないでしょうし。いつか、いつかと先延ばしにしている譜面とCDの整理にいよいよとりかからなくちゃいけないってことかな?なので、連休は逃げずに、心とお部屋の整理整頓をします。

大越 康子